キャンディ革命。〜有栖川編〜




 英都大学の女学生、そして事務員…社会学部の助教授火村英生に心酔する人々は考えた。普通にチョコを渡したのでは、絶対に貰ってもらえない。だから考えた。チョコの形を、彼の愛しい恋人アリスの形にしたのだ。

「……わ〜……壮観………」

 火村の部屋に、ずらりと並んだ人形チョコ。
 アリスは思わず込み上げる笑いを押さえきれない。

「笑うなアリス、対応に困ってるんだ」
「捨てればええやないか、そんなに嫌なら?」
「お前が言ったんだろ!全部食べなかったら絶交だって!!」
「食べてないやん、絶交!」
「殺生な!!お前を食べれるか!?ああ!?」

 煙草をくわえたまま怒鳴る彼に、アリスは少し悪かったかな〜と苦笑した。

「大体なんなんだ…!!全員が全員お前の姿チョコ渡してくるって!?しかもみんなポーズ違うんだぞ!?」
「そりゃ…すごいなぁ…。それにアリスって聞いて、どうしてみんな童話の方じゃなくて…」
「そうだよ!!なんでお前の姿、顔、知ってるんだ!?……くそ、絶対あいつだ…松田だ!!」
「……ああ、あの…火村??」
「絶対許さねえ…」
「火村……とりあえず、ホワイトデーのお返しは??」

 かっ!と彼がアリスに振り向いた。相当このチョコに悩まされたらしい。様子が……イカレている。

「アリス……」
「な、なん…なんや?」
「俺はお前を食べたい」
「Σ!?」
「非常〜に食べたい…。が、どれもこれも精密過ぎてだな…」
「ああ…ああ、チョコな。あ・あはあはは…」
「別にお前でもいいぞ…じゃなくて。食べないと絶交って言ったよな」
「や…あれん時は…ちょっと原稿におわれてて…」
「言ったよな!?」
「は……はい……」

 ど、どうしよう…ホワイトデーのお返しはどうする?という相談でここに来たのに…。

「言ってくれ。食べてもいいって」
「チョコをか??………ええで?食っても」
「馬鹿…本気で辛いんだぞ?軽く言うなよ…」
「あ……はあ…そう、そうやなぁ…」

 じっとアリスは目の前に(テーブルに)並んだチョコを見た…。本当にすごく…精密だ。絶対これはプロの仕事だ…。
 チョコの数は全部で29個。そのどれもが違うポーズをしている。アル意味茶色のフィギアが並んでいるような感じだ。
 しゃがんでいるもの。遠くを見るような仕草をしているもの。両手を上げて万歳しているもの。服をぬぐのに苦労しているもの。……だっちゅ〜のしているもの……。

(なんや…本当にようこんなもの作ったわ〜…)

 これを食べるのが火村は辛いという。確かに…ちょっと恐いし…。
 でも食べなければ絶交という言葉と、彼は板挟みになっているのだ。
 とりあえず…これを食べなければホワイトデーの話など出来ないだろう…。
 仕方ないなあ…とアリスは火村に向かい合った。深呼吸して、言う。

「食べてええよ」

 にやり、と笑った火村を見て、はっとアリスは息を飲んだ。

「アリスを?」
「え…あ、うん」
「オ〜ケイ、頂きます」
「―――――!!」

 有無を言わせず押し倒され、そのまま美味しく頂かれてしまう。
 ……そういう意味じゃなかったのに……。
 純粋なアリスは見事騙されたんですね。気付けって、雰囲気で。


 この後アリスが怒ったとか怒らないとか。





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再録、すいません。真皓拝

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