手袋


どうしてなのか、その手が気になった。


「ほらよ」
 ぽとぽと、と、ロビンに手袋を差し出した。差し出した、というより投げつけたというのが正しい。その胸に当たって、落ちかけた手袋は、にゅっと下から生えた両手が受け止める。ロビンは少しばかり両目を見開いただけで、どうという反応は返ってこなかった。
「あら……プレゼント?」
「……バレンタインだろ」
「その贈り物が手袋なんて、珍しいチョイスをするわね、あなた」
「いらねぇなら捨てろ」
 この女は、悪魔の実を食べた能力者だ。何でもどこからでも体の一部が「生える」ことが出来るらしく、特に手を使う。時々その手に触れる。びっくりするぐらい、いつも手が冷たい。女は冷え性になりやすいと聞くが、それにしたって冷たい。
「いえ。有り難いから貰っておくわ」
 するすると自分の手を下からのばし、ロビンは本体の両手で受け取った。藍色のそれをするりと填める。
「暖かいわね」
「当然だろ」
 船のはじっこでその応酬をしていたが、クソコックが気づいたらしい。茶々を入れてきた。うぜぇから無視したが。一通りヤツをぶちのめした時、ロビンがくすくすと笑っていることに気づいた。視線を投げればこう言う。
「でも、私の手は無数にあるから足りないわ」
「なら、来年もやる」
「……あら」
 この言葉には、手袋を投げつけた時以上の反応がきた。ちょっとびっくりした。
「……。イベント毎にやった方がいいか」
「そんな。無理にくれなくてもいいのよ」
「別に手袋ぐれぇ、大した金額じゃねぇ」
「……無数に増やせるのよ」
「ごちゃごちゃ五月蠅ぇな。いるのかいらねぇのか」
 言うと。
「いるわ」
 にっこりと笑ってロビンは言った。よし、俺はうなずき返した。そのまま腰を下ろし、体を横にして寝る。次はどんな色をやろうかと、ほんの少し頭の中で考える。
 いつのまに、この女の手など見ていたのか。
 綺麗な手、といえば簡単だ。
 だが、それを言うならクソコックの手も綺麗だろう。ヤツは料理が命だから、手は絶対に怪我させない。(だから足技だしな)男にしては、指先が細くてすんなりしてる。
 ウソップの手は無骨で。ナミの手は指だこが少しだけ出来てる。ルフィは存外だが。チョッパーは医者の仕事をしてる時は、見とれるくれぇ素早く動く。その時普段と違って見える。
 どいつの手も、俺はそれなりに嫌いじゃねぇ。
 だがロビンだけが、違っていた。時折戯れるように、どこにでも生やすその手が肌に触れた時。作り物のように冷たくてぞくりとした。
 何故、手袋など買おうと思ったのか。
 自分でも分からない。面倒なことになりそうだから、深く考えるのはやめにした。
「剣士さん」
 上から声が落ちてきた。
「んぁ?」
「有り難う。とても嬉しいわ」
「……そうか」
「この手は武器だから、誰かがこんな風に気遣ってくれるだなんて思いもよらなかった」
「それはてめぇの生きてきた、今までの常識だろ」
「そうね」
 くすくすくす。瞼を閉じた暗闇の中で、ロビンの笑う声がする。不思議と、釈には触らなかった。
「大切にするわ」
 とーぜんだ、と俺は言わなかった。もうやったものだ。ロビンの物だ。好きにして構わないのだから。


それで、お前がほんの少しでも温めればいい



バレンタインの作品が、ワンピースのノーマルもんだなんて、自分的にはびっくりです。
今矯正で歯が痛くて死にそうなんですが、せっかくなので。
ロビン大好き。ゾロも大好き。
原作でもいい感じに絡んでて、嬉しいです。
では。

02/02/13 真皓。



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