「突然だけど夏と言うことで、怪談話なんてどうだい?」
雲がみんなに話しかけた。
「うわぁ、面白そう!!やろう!」
雲の言葉にいち早く反応したのはアイだった。
「お姉ちゃん楽しそうだね・・・」
ニコニコしているアイに、ユウがため息をつきながら言う。
「あったり前よ!夏は怪談話って決まってるんだからぁ!」
そんなユウの態度にお構いなしと、アイは元気よく答えた。
「そうですよね、夏と言えば怪談ですよね」
側で聞いていたシドも乗り気なようだ。
「で、風。風も大丈夫だよね?」
雲はこの場を離れようとしている風を見つけてにやりと笑う。
「ももも、もちろん・・・」
風はどもりながら雲に答えた。
「まさか風、怖い話が苦手とか言わないよね?」
雲が意地悪く聞く。
「・・・苦手なんかじゃない・・・」
風がみんなの方に戻って来る。
「じゃぁ、早速始めようか?」
雲がカーテンを閉めた。
昼間だと言うのに、カーテンを閉めると真っ暗になり、互いの顔が分からない状態になった。
「えっ?!こんなに暗くなるの?」
アイがびっくりした様に声を出す。
「これじゃぁ、何も見えないね・・・」
ユウが怖々言う。
「大丈夫」
その2人の言葉に雲は一本の蝋燭に火を灯した。
「蝋燭だなんて、感じが出ますね〜」
シドが感心したように雲を見る。
雲はにやりと笑って、みんなを座るように促す。
雲の隣に風、シド、アイ、ユウの順番に円になって座った。
雲はその円の中心に蝋燭を置く。
「すごい・・・何か本格的だね・・・」
ユウが息を呑む。
「じゃ、始めようか」
雲がみんなの顔を見回す。みんなは雲を見て1回頷いた。只1人を除いて・・・。
「風、大丈夫かい?始めるよ?」
雲は風を見る。
「さ、さっさと始めればいいだろ・・・」
ぶっきらぼうに風が答える。
そんな風の様子に、雲はクスリと笑うと、みんなの方へと視線を向けた。
「じゃぁ、始めるよ。今からする話は、異界で起こってる怖い話なんだ」
そう言って雲は話をし始めた。
「異界に、延々と続く『壁』があるんだ。何処にあるのか、何故延々と続いているのかは誰も知らない。そしてその『壁』は一箇所にとどまってないんだ。まるで何かを探すかの様にいろんな場所に現れるらしい」
「そ、その『壁』って普通の壁なの・・・?」
怖々ユウが雲に聞く。
「普通の壁なら誰も驚かないし、怖くないだろう?」
雲の言葉にユウが頷く。
「その『壁』は無数の人の手で出来ているんだ。そしてその手は、常に『おいで、おいで』をしている様に、生きてる人間を誘う。その手に誘われ『壁』に飲まれた人間は、新たに『壁』の一部となり、また他の人間を誘う。
こうして『壁』はその長さと大きさを変えながら、吸い込む人間を捜しているんだ」
「や、やだ・・・不気味・・・」
アイがユウの服を握る。
「そして、最近分かった事なんだけど、『壁』の出やすい場所があるらしい」
「うそ・・・そんな場所なんてあるの?」
ユウが信じられないと言うように雲に問いかける。
雲はユウの言葉に頷く。
「四つ角のある部屋とかがやばいらしい」
「よ、四つ角の部屋って・・・!!」
アイがユウにしがみつく。
「そう言えば、この部屋も四つ角・・・だよね?」
雲が辺りを見回しながら言う。
「!!」
「ちょ、ちょっと〜早くカーテンを開けようよ〜」
アイが目に涙を溜ながら雲に言う。
その雲は風に目を向けた。
風はと言うと、平気な感じで遠い所を見ていた。
しかし次の瞬間、風の後ろから二本の腕が伸びてきたのだった。
「っ!!」
風が驚き、隣にいる雲に体当たりをするようにぶつかって行った。
「わっ!」
その衝撃で蝋燭の火が消えてしまった。
「な、何っ〜!!」
「お、お姉ちゃんっ!!」
それからが大変だった。
真っ暗の中、アイとユウは怯えて騒ぐし、風は雲の側にいるし。
その様子を黙って聞いてたシドが仕方なく立ち上がり、カーテンを開ける。
眩しい光にみんなが静かになった。
「シ、シド!ありがとう」
ユウがホッと息を吐く。
「やっと明るくなった〜」
アイもまた息を吐く。
部屋が明るくなったところで、アイが風に気づく。
「風のおじさん・・・」
アイが風の名前を言ったことによって、みんなの視線が風に注目する。
「風・・・」
何と風は雲のマントをぎゅっと握りしめていたのであった。
「おじさん・・・怖かったの?」
アイが以外そうに言う。
オメガや、その他の敵に平然と立ち向かい魔銃を撃つ風がこんな話を怖がるなんて想像出来なかったからである。
「ち、違う!手が・・・手が出てきたんだ!!」
風の言葉にアイとユウは青ざめる。
「・・・嘘・・・でしょ?」
「き、気のせいだよ・・・きっと・・・」
お互いに言ってみるが、風は首を横に振るばかり。
「その手って・・・こういう感じですか?」
シドが風の背後にまわり、風の顔の横から両手を出す。
「っ〜!!」
風が驚く。
さっき見た手と全く一緒だったからである。
「な、何でシドが・・・?まさかシドも・・・?」
風の驚き方をみて、アイとユウはシドも風と同じ手を見たのではないかと思った。
「ふ〜む・・・やっぱりそうでしたか・・・」
「み、見たの?」
アイが聞く。
「見たと言うか何て言うか・・・だってあの手は・・・」
アイとユウ、そして風がシドの方を見る。
「あの手・・・僕なんです」
まいったなぁ〜と言った感じにシドは頭を掻く。
「・・・えっ?」
3人が同じ反応をした。
「だから、僕なんですよ。ああすれば風が僕の方に来てくれるかな?と思いまして」
照れた様にシドが言う。
「ま、確かにあんな話で手が出てくるわけないよね」
今まで黙っていた雲が口を開く。
「な、何?」
ユウが雲を見ながら聞く。
「だって、あの話は私が考えた嘘話だからね」
雲が平然と言い放つ。
「えぇぇぇぇっ?!」
再び3人が驚く。その中でシドは顔色一つ変わってなかった。
「やっぱりそうでしたか」
シドは雲に向かって言う。
「あの話で騙されるのは子供だけですよ」
笑いながらシドは言う。それを聞いていたアイは頬を膨らませて怒っていた。
「何よ〜、2人して感じ悪〜っ」
「まあまあ、いいじゃないですか。結局涼しくなったでしょ?」
「余計変な汗掻いちゃったよ・・・」
ユウが苦笑いをしながらシドに言う。
風は・・・と言うと・・・。
今まさに魔銃を解凍し、ソイルを詰めている所だった。
「光れ!召還獣!シヴァ!」
クリスタル状の召還獣が現れ、雲へと向かって行った。
「じゃ、寝る前にはちゃんとトイレに行くんだよ」
雲はそう言うと窓から飛び出して行った。その後をシヴァが追う。
「風のおじさん・・・よっぽど怖かったみたいね・・・」
風の大人気ない行動に、アイ達が呟いた。
END
ご挨拶(笑)
如何でしたか?アンリミ的納涼会は(笑)
書いてるうちに風のキャラが・・・(^∇^;)
いろんなサイトさんの、いろんな風様をみてたらキャラが変わってしまいました(苦笑)
ヘタレな風様でごめんなさい・・・(T_T)
そして、この話の雲氏が言ったように、あの怪談は作り話です(笑)
まさかホンモノの話を書くわけにいかず、作り話にしたのですが全然怖くなかったですよね(苦笑)
ちなみに、原案は相方の霜月氏です♪
少しでもお気に召して頂けたら光栄です〜♪