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空想の書斎
この森の管理人の生み出した空想と妄想を詰め込んだ書斎。
泡沫の夢と消えるか、永久に残るかは管理人次第・・・。

■ P8 エピソード 不安
- 不安は不安を呼び、それは人の内において鬼へと育つもの。
- だから、育たぬよう。芽をちゃんと摘んでおくことだね。

柔らかな、声。
褪せた記憶の中で、彼女にそう諭してくれたモノはとても優しくしてくれた。

「しっかりしないと…私が、しっかりしていないと。」

芽を吹き、葉を伸ばす不安の種をねじふせるように、ラフィルは思いを言葉に乗せた。
しかし、その言葉は彼女の中に棲む不安の種を駆逐するにはいま少し、力が足りなかった。

ラフィル・クレメントの夜は、意外に遅い。
日の終わりに、近くの泉で身を清めるのが習慣になっているからだ。
寝静まった孤児院を抜け出し、頼りない月と星の光を頼りに泉の瀬まで歩き、ためらいも無く泉の中へと歩を進める。
既に季節は水浴びには適さない気温になっていたが、そのまま清水の中に身を沈める。
冷たい水の感触が、熱を持ち始めた心を静めてくれるようで、心地よかった。

ラフィルの心を占める不安の種とは、まず、己の事。
彼女が現在世話になっている孤児院は、教会が母体であり世界に神は一つと教えている。
だが、ラフィルが幼い頃より親しんできた「神」とは山に川に、田に泉に棲む「人ならざるモノ」の総称であり、教会の教える神よりはよほど、人に近しい。
孤児院や、教会の人はそんな風習の違いに戸惑いながらも理解をしめし、様々な事に目をつぶって居てくれていた。
祈りの対象へのこだわりさえなければ、多少肩身は狭くとも居心地のいい場所だと、ラフィルはそう思っていたのだ。

状況が変わったのは、つい先日。
孤児院の運営や、教会に所属する神官戦士団を束ねる立場のクレスという人間に思いを告げられてしまったのだ。
彼女としても、クレスの事は悪しからず思っており、この孤児院に誘ってくれた恩もあり…と。ささやかながら思慕の念はあるのだが…。

- 立場を、忘れないでね?

脳裏に、先程よりは耳慣れた、柔らかな声が響く。
言われなくとも、不釣合いであることは分かりきっている。
長く世話になっていいるうちに、良く使われる聖句や聖歌、そして経典の一説などは覚えたのだが、信者と言うわけでもなく、そこに居る「神」の声を聞くことも無い。
そんな自分が、大勢の人を束ねていく人物の隣に添うにはあまりにも不都合が多すぎる。

苛立ちまぎれにぱしゃりと水面を打てば、静かな水面は彼女の思考を写すかのように乱れ、ゆらりと揺れながら己の姿を映し出す。

濡れた髪は陰鬱な月明かりに白く浮かび、瞳は流れる血の色を写して赤い。

濃い髪色ばかりの地方で生まれた彼女は。生まれたときから異端であった。
集落の中では他の者と姿が違う「異端」として恐れ遠ざけられ。
集落の外では崇める神が違う「異端」として危うく命まで落としかけた事もあった。
こちらに近づいて来る時は厄介ごとか、下心がある場合が殆どだと。そう思っていた。

故に、そういった損得なく寄り添いたいと言う、生真面目な青年の想いにどう応えれば良いのか判断がつきかねている。

滾々と溢れる清水はぐるりと渦を巻き、彼女の身体から温もりを奪い、流れていく。

どのくらい悩みに浸かっていたのか。
我に返ったときには、もう随分と身体は冷え切り、月も星もやがて登る太陽の為に席を空けようとしていた。

「…帰らないと。」

清めのはずの泉で、悩みに浸かっていたのでは、清めの意味がないではないか。
慌てて泉から上がり、手早く身支度を整えていく。
首から下げていた十字架に、ふとラフィルの指が触れた。
何一つ身分を証明するモノの無い彼女に渡された「孤児院の者である」という証の十字架であるが、裏には「クレス・リークレット」と彫られている。
先日、遠出するというクレスの守りにと、置いていくラフィルの守りにと、交換したままになっていたのである。

責任者であるという立場の所為か、クレスのものは簡素なラフィルのそれより一回り大きく作られており、装飾も華美なものが施されている。
裏に彫られた名を確かめるように指でなぞり、着物の中へと収める。
確かめた名を唇に乗せる。

名を口にするたびに、泉の水に冷え切ってしまった身体が少しだけ温かくなるような気がした。
同時に、砂を噛んだ様なざらりとした感触が心をかすめる。

彼の言葉に諾と従えば、守られる。
教会の名と、彼の名前の下で。彼の存在の添え物として、あるいは弱みとして。
これまでと同じように、異端でありながらそれに目こぼしをされる形で存在を黙認される。

彼の言葉に否を唱えれば…
恐らく、ここには居られない。
異端として、領内より追い出されるか、あるいは狩られるか。
教会の令が発動すれば神官戦士団の、クレスの剣が己に向けられる可能性もあるのだ。


追われるのは慣れている。
逃げるのも慣れている。

だが、今のように暖かく迎え入れられるのは慣れていない。
上に立つクレスを始め、駐屯している神官騎士団や、修道女、子供達。
彼らの暖かい心に感謝する時、決まって形の無い不安が背筋を滑り降りていくのだった。

はたして、自分はここに居ても良いのだろうか。

問いの答えを探し、空を見上げる。
夜明け間近の空は星も薄く、月も低い。
星読の知識をもってしても、端から見えぬ星を読む術はない。たとえ星があったとしても、読む側が道に迷っていれば、示される道も迷い道でしかない。

諸々の想いを抱えたまま、ラフィルは「今、在るべき所」へと戻る。
じきに、夜は明ける。朝の支度の段取りを思い返しながら、もういちど空を見上げる。

東の空が白み始めていた。
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一度やってみたかった。ラフィル嬢メインのSS。
だが、キツかった。
このムスメ、思ってることを口に出さない、何が望みなのか分かってない。
端から見ると非常にイライラする娘です。
そんな設定したのは中の人なので自業自得と言うべきか…。
草食系女子と言うより霞食ってんじゃねーかって位欲望の薄い娘ですが、何とか幸せになって欲しいです。
がんばれ某操縦者さん(他人任せ)

2010/01/08

白狐: …入浴シーンなのに。色気描写ゼロとか酷い。
メフィア: いや、一応このサイトNOT18禁宣言してるからだろ…。
白狐: 求めてる人は一杯いるはずだよっ! 特にボクとかっ!(力説)
メフィア: 需要はそうかもしれんが、中の人的に色気担当はお前とかウサシンだから仕方ねぇだろうが。
白狐: 前半読んでぬか喜びした人の気持ちを考えろーっ!

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