今回のお題はトロピコ。体調が今一つ悪くて悶々としている俺に、うちの社員が「これ面白いっすよ」と持ってきたこの一品、まさに俺の体調をより悪くするような素晴らしいゲームだったので、三回ぐらいに分けて紹介したい。
なんかの理由でプレイヤーが統治するカリブ海に浮かぶ島。そこに住む貧乏人たちを駆使し、ミッションをクリアしていくべく悪戦苦闘するというのがこのゲームの趣旨なのだが、いわゆる箱庭系ゲームにありがちなマンネリがあまりないのが良い。
さすがに俺様も最初は何をしていいのか今一つ良く分からず、とりあえず禁酒法を制定して島民に嫌われたり、街のど真ん中に発電所を建てて石炭ゴーゴー燃やして島民が全員病気になったりしたが、チュートリアルをやって何度かゲームをやっているうちにだんだん慣れてきて自分なりのプレイスタイルを確立できるようになった。
一応、島では統治者(プレジデンテ)を決める選挙を求める声が挙がったりするのだが、プレイヤーの気が向かなければ選挙をしなくても何とかなる。もちろん、そういった場合島のあちこちで暴動が起きるのだが、プレイヤーの気が向けば軍隊を差し向けて弾圧することができる。むろん、あんまり酷いことをすると軍隊がクーデターを起こしたりするのだが、兵器庫を作って忠実な将軍を作っておけば無事鎮圧することもできる。
そう、あんたは為政者であり、自分の都合にあわせて何をしても良いのだ。
こういうゲームをすると、慣れもあるのだろうが、追い詰められてしまった時手段さえ用意されていれば何でもしてしまう人間の悲しい性というものを満喫できる。
ゲームオーバーになる確率がもっとも高いのは選挙で負けて、その地位を追われて島から追い出されることだ。しかし、プレイヤーは現職であり、現職の権力を使って対抗候補に対してしうる手段がある以上、基本的には何でもやってよいのである。確かに一国民として生活する我々にとって、権力の腐敗というのは許しがたいことの一つに思えるのだが、一方でゲームの中とはいえ権力を握った時、そこで行える手段がたとえ倫理的にマズいものであったとしても地位を守るために何でもしてしまう自分に気づくのだ。
「プレジデンテ。島民の間で選挙を求める声が挙がっておりますぞ」
うーん、そうかそうか。まあ、島に建物も増えたし、それなりに経済も発展して島民も満足して俺はきっと再選できるだろう。それじゃあ、選挙のひとつもやってみるか。って気になると、もうプレイヤーは危険を冒している。立候補者が現れると支持状況が示され、自分のあまりの不人気ぶりに愕然とするだろう。
お前ら、俺の作った楽園のどこが気に入らないんだ。一回焦るとどんな手を使ってでも支持を受けようと、あらゆるオプションを活用する。
減税してみる。はっきりいって支持が足りん。
んー、島民に食わせる食料を倍にしてみよう。うおー、まだ支持が全然足りん。
うーん、じゃあ賃上げ。だめだ、まだまだ支持が足りない。
くそ、テレビ局全局で俺様番組を垂れ流してやる。毎日出演だ。うわ、支持があとちょっと。
こうなったら対立候補の支持者を逮捕してしまえ。よっしゃ、もう少しだ。
ヤバい、選挙当日じゃん。しょうがない、最終手段、投票改ざんじゃ!
わはは、ざまあみろ、二票差で逃げ切ったぞ。
こういうことを繰り返して、人は大事なものを失っていくのである。しかし、地位を守れなかったら元も子もない、心を鬼にして、愛する島民の票を改ざん・・・いや、島民をあるべき姿に教導していくのである。
プレジデンテが島民に対していかに良いサービスを提供していくかが治世の妙であり、間違ってもスラム街の中心に兵舎を建てたり、アパートの賃料を値上げして失業した貧乏人を追い出すような真似をしてはいけないのだ。
島の産業は農業、鉱業、漁業などの一次産業、工場による二次産業、ホテルなどの観光施設やテレビ局などによる三次産業に分かれていて、島の性質を見極めたうえで効率よく収益を稼いでいかなければ島民の信頼を得られない。
就くべき職によっては、高卒、大卒などの学歴が必要という点も現実とやや似ている。 まあ、大卒でも職がなくて農夫をやってたり、失業者になって汚ねぇバラックに一人暮らしをしている奴もいるが、こういう奴をほっておくと、なんか環境美化のデモを俺様の宮殿の前で繰り広げたり、反政府運動に加担して森にこもってみたりと、いちいち気に入らない動きをしやがるので、さっさと逮捕して再教育してやるのが一番だ。
こういうゲームは好き嫌いが分かれるところだが、いわゆる攻略法というものがあまり存在せず、自分のやりたいようにプレイしてもそこそこの結果が出るという点で万人向けだ。
次回は俺様が統治した島の様子をお届けするのだ。
文:切込隊長