リティアの夜に…後編

 

 

ガーネフとの戦いの後…
「ウェンデル司祭…カチュアの様子は…」
カチュアは意識がないまま、そのまま自室に運びこまれた…
今、彼女はベットに寝かされていた。
マルスやパオラもこの部屋にいた。二人とも、既に魔法で傷を治してもらっていた。
「まだ…意識をもどさないのだ…極度の精神的疲労だろうから、心配はないと思うが…」
ウェンデルが溜息をつく。
「そうですか…」
パオラが落胆する。
「ウェンデル司祭…この闇のオーブについてですが…本当に…」
マルスはガーネフの言葉が気になっていた…
『闇のオーブを彼女から引き剥がせば、彼女の心は死ぬのだぞ…』
あの言葉…本当なら…
「……恐らく…本当だろう…」
ウェンデルは戸惑いながらも言った…
「この闇のオーブが…カチュア殿の心を蝕んでいる事は確かです…これだけ侵食されていると…もう…闇のオーブはカチュア殿の心から引き剥がせる状態ではないですな…」
「そんな…それじゃ…無理に引き剥がしたら…やっぱり…」
パオラは…答えを聞きたくなかったが…質問をした…
「…おそらく…精神崩壊…最悪なら…脳が死んでしまうでしょう…」
「そんな…なんとかできないのか…」
マルスが司祭に聞く…
「…私達の力では…心を働きかける魔法は扱えませんから…」
「カチュアが、このまま闇のオーブを抑える事はできないのでしょうか?」
パオラは再び質問したが…
「危険じゃ…このままこのオーブを放置することは…また、いつ狂気に支配されるか分からぬぞ。先ほども、正気を取り戻したのが奇跡に近い事だろうな…これほどの魔力を秘めた物だと…よく抗ったものじゃ…今は、オーブ自身が、戦いで消耗した魔力を補充しているのか…収まってはいるが…」
ウェンデルの冷静に判断した答えは…着実にマルスとパオラを追い詰めていった…
「どうすれば…」
「方法は…悔しいですが…先ほど、ガーネフが言った2つしか無いでしょう…すなわちマルス王子をカチュア殿が殺すか…それとも、カチュア殿の心を壊してまで、オーブを引き剥がすか…その2つしか…もっとも前者は絶対に行えないことです。となると…後者しか…」
「そんな事ができるか!!」
マルスが叫ぶ。カチュアの心を壊す事なんて…
「…そうですな…確かに…選択できる問題ではないですな…」
そう言ったウェンデルは自分の無力を思い知っていた…
(一人の少女の心すら…救えないとはな…)

その後、ウェンデルは退室し、パオラとマルスが、部屋に残っていた。
「カチュア…」
マルスが…カチュアの顔を眺める…
(…どうして…どうしてこんな事になってしまったんだ…)
マルスは自分を責めた…自分がカチュアの気持ちに気づいてあげられれば…
自分が気づけば、カチュアを傷つけなかったかどうかは分からない…
でも…それでも…少なくとも、彼女の心をここまで追い詰める事はなかったのではないか…
「マルス王子…」
パオラがマルスを呼んだ…
「…?」
自分を責めていたマルスはパオラの声に少し反応が鈍かった。
「…妹は…カチュアは…貴方の事が好きです…純粋に…」
「……」
「ただ…貴方のことが好きだっただけなんです!!それなのに…それだけなのに…どうしてこんな事になってしまったんですか?この子は誰かを好きになってはいけなかったというのですか!…どうして…誰もが持つ感情を持っただけなのに…それが…いけなかったとでもいうのですか…」
パオラが…泣きながら訴えた…
マルスは何も言えなかった…言えるはずがなかった…

「……」
「パオラ…」
「…マルス王子…お願いが…あります…」
「…?」
重く…沈んだ声で喋るパオラ。
「…この子は…自分で…心を閉ざす事を選ぶでしょう…」
「!?」
「カチュアはそういう子です…妹は…貴方を守るために必死に戦った…その自分が、マルス王子に危害を加える危険性を秘めていることに…カチュアは耐えられないでしょう…だから…自分で、決着をつけようとするはずです…」
「…そんな…カチュア…」
「…マルス王子…その時まで…ほんの少しの時間ですが…カチュアの傍にいて欲しいのです。せめて…マルス王子を想う心が残っている内に…少しでも、マルス王子の傍にいさせてあげたいから…」
「…パオラ…」
「…ごめんなさい。でも、姉として…せめて妹の…心が失われるまでの一瞬を…大事にさせてあげたい…本当に一瞬でも…」
「…パオラ…分かったよ…」
「マルス王子…」
「僕に何ができるのかは分からないけど…できるだけの事をしてみる…こんな事言う資格…ないかもしれないけど…」
「…マルス王子…本当に…ありがとうございます…」
パオラは、本当にマルスに感謝した。



カチュアの事をマルスに頼んだパオラは、部屋を出ていった。
マルスは一人カチュアの部屋に残った。
(…僕は…カチュアの心を…救ってやれるのだろうか…)
自問するマルス…カチュアが自分から心を閉ざす…その事をカチュアが選択するというのは、マルスにも想像がついてしまう…彼女はそういう少女だから…
でも…自分は…そんなカチュアに何をしてやれるのだろう…
彼女の想いすら…気づかなかった自分が…
彼女が自分に想いを寄せてくれている間…何もできなかった自分が…
本当に何もしてあげていなかった…本当に最低な男…
「本当に…僕は、最低の男なんだな…」
マルスは口に出して、自分への侮蔑の言葉を出した。

「…貴方は…そんな人ではありません…」
「!?」
マルスは顔を上げた。
カチュアが目を開け、こちらを向いていた。
「カチュア!気がついたのか!」
カチュアは、上半身を起き上がらせながら答えた…
「…はい…もう大丈夫です…マルス王子…」
「…よかった…本当によかった…」
よかったと言いながらも、そんな言葉が出せるような状況ではない事を、マルスは知っていた。
その事を思い出し、何を喋っていいのか分からなくなるマルス…

その時、カチュアの口が開いた…
「…マルス王子…私は…このオーブを取り払う事にします…」
「!?」
いきなり…カチュアから、その事が告げられた…
「カチュア!ちょっと待ってくれ!…そのオーブを外すということは…」
「私の心が…死ぬということなのでしょう?」
「!!!」
黙ってしまうマルス…カチュアは言葉を続ける…
「…ガーネフが先ほど言っていた事は…覚えています…もう…私の心と同化したこのオーブを取り外す事は、私の心が死ぬときでもあるということを…」
「…それなのに…カチュア、そんな事をしたら…」
「でも…私は…このオーブを取り外します…このオーブがある限り…私は、またいつマルス王子に危害を加えてしまう事をしてしまうかもしれません…そんなの嫌だから…」
「カチュア…」
「それに…こんな弱くて…醜い心なんて…無くなったっていいです…」
「!?…何をバカなことを…」
「…だって…自分の好きな人を殺そうとしてしまう…弱い心なんて…最低ですよ。ふふっ…私…自分がこんな弱い心の持ち主だなんて…少しも知りませんでした。」
乾いた笑いをするカチュア…
「だから…こんな私の心なんて…なくなったって…」
「カチュア!!やめてくれ!そんな風に自分を貶めないでくれ!」
カチュアに向かってマルスは叫んだ。
「君は、闇のオーブの力を…あのガーネフの力を払いのけて、僕達を救ってくれたじゃないか!…そんな事…誰にでもできる事じゃない!君は強い心の持ち主だ…僕なんかよりも、ずっと強い…心の…」
「…マルス王子…ありがとうございます…でも…このままだと…また貴方を殺そうとしてしまう…さっきは、なんとか振り払う事ができましたが…何度も払い抜ける事はできません…それだけ、このオーブの力は強大ですから…また…私は貴方に殺意を抱くでしょう…私…そんな事はしたくない…だから…もう…」
「…でも…カチュア。」
「それとも…他に方法があるとでもいうのですか?」
「うっ…それは…」
マルスは返答に困る…あのウェンデルも見つけられなかった…他の方法…
マルスに他の方法など見つけられるはずがなかった。

「…マルス王子…ありがとうございます…貴方は本当におやさしい方です…」
カチュアが…マルスに向かって喋り出した…やさしい口調で…
「私の事を気遣って下さって…本当に嬉しいです…でも…私は、もう決めたんです…このオーブを外す事を…自分の心を捨てる事を…それしかマルス王子を助ける方法はないから…」
「カチュア…」
「…私…本当にマルス王子の事が…好きですから……好きだから…私…自分の心でも捨てられるのです…だって、貴方を危険に晒したくないから…それの為だったら…たかが私の心なんて…安いものです…」
「……」
「ふふっ…本当に…ダメですね、私…このような時になって…初めて、自分の気持ちを伝えられるなんて…」
マルスは、自分の想いを喋るカチュアが…とても痛々しかった…とても…見ていて辛かった…
(こんなに…僕の事を想っていてくれている…カチュアを…僕は救う事ができないのか…)
マルスは…これほど自分が無力だと思った事はなかった。
(何が…光の王子だ!!…僕は…たった一人の少女の心すら救えない愚か者だ…自分を想ってくれている少女の心を…助ける事ができないなんて…)

「マルス王子…どうか…どうか、この世界に再び平和を取り戻してください…そして…幸せになってください…」
カチュアが…マルスに別れを告げる…

(…なんなんだ…この押し潰されそうな気持ちは…)
マルスは…この時、目の前の少女に対して…自分のために、心を殺そうとしている少女に対して…特殊な感情を抱きつつあった…
(これほど…僕の事を愛してくれているカチュアに…僕は何もしてあげられないのか…
本当に…何も…)
…何かしてあげたい…心を捨ててまで、自分を助けようとしてくれるカチュアに…何かしてあげたい…


「マルス王子…見てください…月が綺麗ですよ…」
彼女は、窓の外に浮かぶ青白い月を眺める…
彼女の顔は、月明かりに照らされ、幻想的な美しさをたたえていた。

そのカチュアの顔に、マルスの動悸が早くなる…
(…僕は…カチュア…)
今…目の前の少女を…マルスは大切に思っていた…


「美しい月です…本当に…」
カチュアは…浮かぶ月を眺めていた…

「カチュア…」
マルスが呼びかける…


「…なんですか?…!?」
彼女は…窓からマルスに視線を変えるために、振り返った時だった。
…唇に…温かい感触を覚えたのだ…
頭が真っ白になるカチュア。
カチュアの目は…驚きのため、大きく開かれていた
目の前に…すぐ目の前にあるマルスの顔…
その目は、カチュアとは逆に閉ざされていた。
彼の右手は、カチュアの後ろ髪に添えられており…左手は、カチュアの背中を抱きしめていた…

今、カチュアは…マルスに抱きしめられて…キスをされていたのだった…

(…マルス王子?)

自分を抱きしめ、キスをしてくれているマルス王子…
一瞬、夢か何かかと思った…
でも…絶え間なく感じる唇の温かさが…これが夢ではないことを物語っていた…
(…どうして…どうして?…マルス王子…)
なぜ、マルス王子が自分にキスをしてくれているのか…
カチュアは、まったく分からなかった。
でも…初めて感じるキスの心地よさに、カチュアは安らかな気持ちになっていく…
目を閉じて…唇の感触と、その安らかな気持ちを感じていくカチュア…
しばらく…その時が続いた…


静かに…顔を離していくマルス…

解放されたカチュアは…静かに口を開く…
「…マルス王子…これは…」
当然の質問だった。
「…僕が…カチュアにキスをしたんだよ…」
妙な答えを返すマルス…
「そういう事ではありません…なんで…私に…」
「……分からない…僕も何でなのか…でも、カチュアの顔を見ていたら…僕の事を想っていてくれているカチュアの顔を見ていたら…自然にしてしまったんだ…」
マルスは…顔を赤くしていた…
「…カチュア…僕には…君を助ける力はない…君は僕のために心を閉じようとしている…それなのに、僕は今まで君を傷つけてばかりだった…本当に身勝手だよね…だから…せめて…今だけでも…君を愛させてくれないか…?」
マルスの言葉から…思いもよらない事を聞かされるカチュア…
「…何を言っているのです…私は…そんな…」
カチュアはマルスの言葉に、耳を赤くしていた。
「…でも…僕には…それぐらいしかできない。」
「…そんな……それは…同情ですか?マルス王子…」
「…そうかもしれない…薄っぺらい同情や哀れみなのかもしれない…でも…僕は今、君の事をとても大切にしたい…抱きしめたいと思っている…これは本当の気持ちだよ…それでは…ダメかな?」
「…マルス王子…」
今のカチュアは…何も考えられなかった…
今だけでも…自分を愛してくださると言ってくれるマルス王子…
夢にも見なかった言葉を…マルスは言ってくれたのだ。
…こんなに嬉しい事はなかった。

「こんなに都合のいい事…ダメ…かな?」
「…マルス…王子…本当に…私なんかで…」
カチュア頬を一筋の涙が流れた…
「…うん…カチュア…君が良ければ…」
今…マルスは、目の前の少女を本当に愛していた…
嘘偽りなく…
「…うれしいです…嬉しいです…マルス王子…」
大粒の涙が…止まらなくなる…
「カチュア…今は…王子と言わないで…なんか…他人行儀だから…」
「あっ…はいっ…その…マルス…様?」
「うん…それでいいよ…カチュア…」
再び…キスを交わそうと、顔を近づけていくマルス…
カチュアもそれに応じた…


…今だけは…この先の事を考えずにいたい…






月の光に照らされたベットの上で…二人の男女がキスを交わし合う…
マルスはカチュアの上に覆い被さっている。
お互いに、背中に両手を回し、しっかりと体を抱き合っていた…
「…うん…うっ…ん…」
お互いに舌を絡ませ合っている…
相手の舌を舐め、絡ませ、口内にお互いを進入させる…
そんな濃いキスに…時々噎せ返りそうになるカチュア。
「うっ…こほっ!…あっ!すいません…マルス様…」
「…謝ることはないよ…カチュア…」
…キスを再開する二人…
お互いの柔らかい舌…温かい口内を感じるたびに、頭の中がとろけるようになっていく…

マルスはカチュアの胸に手を伸ばした…
シャツの上から、彼女の胸に手を添える…
「…!?」
カチュアの体が、ビクンッ!とした…
初めて…彼女の胸に男の手が添えられたのだから…
少し、指先に力を入れてみるマルス…
服の上から…乳房に指が食い込んでいった…
「…うっ!…」
彼女は…胸から送られてきた刺激に反応した。
でも…口はマルスとキスをしているため、くぐもった声しかあげられなかった。
今度は、少し揉むような感じで手を動かしてみる…
彼女のシャツに浮かんだ丘が…少しづつ形を変える…
僅かな動きだったが、カチュアは今まで感じた事がない刺激に襲われる…

「…!?…いや…」
彼女は…キスを中断し、声を上げてしまう…
「カチュア…大丈夫?」
「マルス様…ごめんなさい…私…怖くて…」
カチュアは…もちろん、性行為は初めてだった…
胸に触られてしまっただけで…怖くなってしまう…
「大丈夫だよ、カチュア…体を楽にして…」
マルスに従うカチュア…

彼女のシャツをたくし上げていく…
それだけで、カチュアは顔から火が出てしまう恥ずかしかった…
(私の…胸が…マルス様に・・)
シャツは…双丘を越え、たくし上げられる…
彼女の胸が露になった…
「いや…恥ずかしい…」
顔が、真っ赤になるカチュア。
「…カチュアの胸…とても綺麗だ…」
彼女の胸は、決して大きいとは言えなかった…
しかし…小さくもなくっといった大きさで、むしろ形の良さに目を奪われる…
「本当…ですか…」
「本当だよ…カチュア…」
そして…左手を、彼女の右の丘に添え、ゆっくりと揉み始めた…
「!!…うっ…あっ…」
彼女は、胸から送られてくる刺激に素直に反応した…
少しずつ…揉む力と速さを強めていく…
「カチュアの胸…柔らかい…とても気持ちいい…」
「…うっ…そう…ですか?」
「うん…とっても気持ちいいよ…」
揉みまわしながら、カチュアに話しかけるマルス…
(とっても柔らかいし…それに張りもあって…触っていて気持ちいい…)
マルスは…カチュアの胸の虜になっていた…
そしてカチュアも…
「…そんな…ああっ…マルスさまぁ!…そんなに強く…しないで…」
自然と…カチュアの胸に入れる力を強くしてしまったマルス…
今度は、少し優しい感じで…胸を圧迫する…
「…んはあ…ううん…うはっ…」
カチュアは、この刺激が気持ちいいのかどうかは、まだ分かっていなかった…
ただ…その刺激が、カチュアの体を少しづつ、熱くさせていった…
彼女は目をつぶって、胸から送られてくる刺激に身を委ねていた…
いきなり…彼女の乳房の頂きに、ぬめった感触が襲った…
「何!?」
目を開けて、自分の胸を見るカチュア。
マルスが、彼女の右の乳房に舌を這わせていたのだ…
暖かなぬめりを帯びた舌が…揉まれて、少し敏感になった乳房に襲いかかった。
舌が這うたびに、彼女の胸が唾液により、妖しい照りを出していく…
そして…舌は…乳房の頂き…乳首に到達する…
僅かに隆起した突起を舐め上げた。
「…ああっ!…あん…」
一際高い声を上げて、反応をしたカチュア…
何度も何度も…乳首を舐め上げるマルスの舌…
今までにない激しい反応を見せるカチュア…
「マルス様!…私…あっ…変です…おかしくなっちゃいます…」
「おかしくなんてないよ…カチュア…感じてくれて嬉しいよ…」
「…えっ?…感じる?」
カチュアはまだ『感じる』という意味が分からなかった…
「カチュアが喜んでいてくれている…ってことだよ…」

そう言って…マルスは…彼女の下半身に右手を伸ばしていく…
そして…彼女の股間に触れる…
「あっ…えっ?…いや!」
突然…自分でも、あまり触らない場所を触れられて彼女は拒絶反応を示した。
「カチュア…大丈夫だから…僕に任せて…」
マルスは…優しい声で囁きかける…
「…マルス様…でも…」
カチュアにとって、やはり抵抗があるらしい…
「…僕を信じて…カチュア…」
笑顔で語りかけ、カチュアを安心させようとするマルス…
その笑顔に負けるカチュア…

恐る恐る…彼女は足を開いていった…
開かれた股間に、手を入れるマルス…
彼女の純白の下着に触れる…
「うっ…」
彼女は唇を噛んで、我慢する…
そして…ゆっくりと彼女の下着の上から、彼女の秘所を擦り始めた…
「ううっ…あっ…んっ…ああぁ…」
感じていると言うよりも、まだ羞恥の為に声を上げてしまっているカチュア…
マルスは空いていた左手を…再び、胸に当て、ゆっくりと揉み回す…
また、口に乳首を含み、口内で舌を使って転がし始めた。
「ああぁぁ!…あっ…はああぁっ…」
今の時点では、股間より胸の方が感じているらしい…
マルスは、右手に入れる力を強くした…
ちょっと激しく、下着の上から秘所を擦り上げるマルス…
「ああ!!うはっ!…やん…」
いきなり強い刺激を受けたカチュアは悶えた…
でも、マルスはカチュアにもっと感じて欲しいから…力を弱めない…
「マルス様…ぁはあ!…うっは…」
胸と股間を責められて…激しく悶えるカチュア…
しかし…カチュアは次第に…マルスの送ってくる刺激を、気持ちいいと感じていけるようになっていった…

マルスの右手に…僅かな湿り気が付着していた…
マルスは…乳首を解放し…股間を確認する…
僅かに…彼女の白い下着に…染みができていた…
「カチュア…濡れてきたんだね…」
「濡れるって…そっ…そんな…!!」
カチュアは本気でうろたえた。失禁をしてしまったと勘違いをしてしまったからだ。
彼女は、ほとんど行為に対する知識はないみたいだった…
「大丈夫だよカチュア…これはね…感じてくれているからこうなるんだよ…」
「えっ?…そうなんですか?」
「そうだよ…感じてくれて嬉しいよ…カチュア…」
「でも…やっぱり…恥ずかしいです」
「恥ずかしい事は悪い事じゃないよ…普通だよ…カチュアは…」
そう言って…マルスは再び、カチュアを愛し始めた…
今度は、下着の中に手を滑りこませる…
(…うっ…恥ずかしい…)
カチュアはとても恥ずかしかったが、なんとか我慢する事ができた…
誰も触れたことのないカチュアの秘所を、マルスの手が、初めて潜入した。
彼女の秘裂をなぞるマルス…
「…んんぅぅぅ!くっ…はああっ!!」
とても恥ずかしいにも関わらず…激しい刺激に翻弄されるカチュア…
マルスは…一通り秘裂の周りをなじると…人差し指を膣内へと進入させた…
「…いっ!…」
少し痛みを感じたらしい…
「カチュア!大丈夫?」
「大丈夫です…続けてください…」
カチュアは健気にも笑って答えた…
(とても…恥ずかしいはずなのに…痛みを感じているはずなのに…カチュア…)
それでも耐えてくれているカチュアが…とても愛らしく感じた…

もう一度、指を挿入させる…
今度は、すんなりと入った。
既に、中は…たっぷりと濡れていた…
すこし、掻き回すように動かす…
「ああぁぁぁ…くはっはああぁぁ…」
体の中から押し寄せる刺激に翻弄される…

さらに、親指は彼女の花芯を責めたてる…
転がすように…花芯を弄る親指。
「…はああっ…んっはああっ!そんな…」
愛液がさらに多く出てくる…彼女の下着の染みはどんどん大きくなっていった…

「…カチュア…君のここが見たい…」
マルスはカチュアの股間の下着に手をかける…
「…カチュア…いい?」
マルスが尋ねた…
カチュアは…目を閉じて…黙って頷いた…
カチュアの下着に手をかけ…ゆっくりと下ろしていくマルス…

そして…彼女のつま先から…下着を抜き去った…

マルスが、カチュアの秘所を見つめる…

(…恥ずかしい…見ないで…そんな汚いところ…)
カチュアの顔が…これまでになく真っ赤になる…
「カチュアのここ…とても綺麗だ…」
マルスが…カチュアのあそこを眺めながら言った…
「…嘘です…そんな…」
「本当だよ…カチュア…本当に綺麗だよ…」
そう言うと…マルスはいきなり、カチュアの股間に顔を埋め、秘所に舌を這わす…
「えっ!…いや…あああぁぁぁ!!」
いきなり自分を襲う強い刺激に…カチュアは叫んでしまう…
「あああっ…うははぁああ…ああっ!…あっ!」
カチュアは…もう声を押さえる事ができなかった…マルスは…花芯を舐め上げ、膣内に舌を挿し入れ…暴れさせる…
ピチャ…ヌチャ…と水音も立ち始めた…

「あうう…あんっ…ダメです…変な…声が…出てしまいます…」
「いいんだよ…カチュア…君の可愛い声をもっと聞かせて…」
マルスは…舌で今度は花芯を舐め上げ…秘所には指を挿し入れて…丹念に中を掻き回す…
その度に…カチュアの秘所から、愛液が流れ出してくる…

マルスは左手を伸ばし、カチュアの乳房を掴み…回転させるように揉み始めた。
これ以上ないほど先が突起した乳首に人差し指を当て、クニクニと弄り回してみる…
「ああぅぅ…ぅはっ!…くうぅぅ…あん!…」
カチュアは、初めて感じる性感に戸惑いながらも、それを受け入れていった…


彼女の全身を這っていたマルスの手が止まる…
「…カチュア…」
「…はあ…はあ…はい…?」
刺激に息を荒げていたカチュアが気づく。
「…もうそろそろ…いいかな?」
マルスは…顔を赤くさせながら、カチュアに尋ねた…
「えっ?…私…私…」
カチュアが少し暗い顔をした
「…怖い?」
「そうではないんです…」
カチュアは…マルスの目線から視線を逸らした。
「マルス様…本当に良いのですか?…私なんかと…」
カチュアは…まだ引け目を感じているらしかった…
この自分がマルス様と結ばれて…本当に良いのだろうか…
マルス様には…シーダ様がいる…それなのに…自分なんかが…

悩めるカチュアにマルスは…キスをした…
「!…うっ…うん…」
突然キスに驚いたものの、それを受け入れるカチュア…
重なる唇…縺れ合う舌…
マルスが唇を離した…
「…カチュア…今の僕にとって…とてもカチュアは大切な存在であって…とても愛しい存在でもあるんだ…この気持ちに嘘はない…だから…カチュア…君を愛させてくれ…」
マルスは…今…本当にカチュアの事を愛していた…
カチュアにとって…そんな気持ちが本当に嬉しかった…
例え…今この時だけだとしても…カチュアはそれでもよかった…
なぜなら…この一瞬は…本当にマルス様と愛し合う事ができたのだから…


今…二人は全裸でいた…
しかし…闇のオーブだけは、今だ彼女の首から下げられていた…
マルスがベットに横たわるカチュアの上に覆い被さっていた…
「カチュア…いくよ…」
「はい…マルス様…」
カチュアの秘所に当てられていたマルスの男の部分が…少しづつ進入を開始する…
押し分けて…挿入されていくマルスのペニス…
「うううっ…ああっ!!」
苦しそうな呻き声あげるカチュア…
ズイ、ズイと進入していくマルスのペニス…
それは…カチュアの処女の証の前まできた…
「カチュア…痛いだろうけど…我慢して…」
「マルス様…」
少し、引き抜かれたマルスのペニス…勢いをつけるために…
そして、マルスは一気に、腰を進めた…
何かが…破れた衝撃が走った…

「ひぐっ…あああああぁぁぁぁぁ!!」

カチュアは…今…処女をマルスに捧げたのだった…

彼女の秘所から一筋の赤い雫が垂れていた…

「…いた…い…痛いです…マルス様…」
「カチュア…大丈夫?」
カチュアの苦しそうな声に、心配になるマルス…
「大丈夫…です……マルス様…」
とても…大丈夫そうには見えなかった…
いくら愛液と唾液で、十分に湿らせていたとはいえ…カチュアの秘所はペニスの進入に悲鳴をあげているのだろう…
「カチュア…無理をする事はないよ…少し慣れるまで…このままでいるから…」
マルスは…動きたい気持ちを抑えて、カチュアに言った…
(カチュアのここ…とても気持ちいい…すごく締めつけるけど…とても柔らかい…)
マルスは…カチュアのあそこの感触に酔いしれそうになっていた…

「マルス様…私は大丈夫ですから…動いてください…」
カチュアは…健気に答えた…
「でも…カチュア…」
心配そうに眺めるマルスに、カチュアは精一杯の笑顔を作る…
「本当に…大丈夫ですから…それに…ここまで痛い思いをしているのに…マルス様が気持ち良くなってくださらないなんて…私…嫌です…」
自分の痛みよりも…マルスが気持ちよくなる事を優先させてくれるカチュア…
(どうして…カチュアはそんなに…健気なんだ…)
どんどんカチュアの魅力に引きこまれていくマルスだった…
「それじゃ…動くから…痛かったら無理をしないで言ってね…」
マルスも…そんなカチュアに少しでも優しくなろうとした…


「ううっ…くっ…あっ…」
マルスが…ゆっくりと挿入と後退を繰り返している…
カチュアは苦しそうに呻き声を上げていた…
「あう…うん…あっ…くうう…」
「カチュア…本当に…」
「大丈夫…大丈夫ですから…動いてください…」
痛みに耐えるカチュア…そんな姿を見せられたマルスは、カチュアへの思いを強めていった…
彼女の膣内は…十分な愛液が潤っていたが、それでもまだ…カチュアは痛みを感じていた…

挿入のたびに…行き場をなくしたカチュアの愛液が零れ落ちる…
少しずつだが…彼女の中の滑りが良くなっていった…
(カチュアの中…本当に気持ちいい…何も…考えられなくなる…)
彼女の中で感じる快感を求めて…自然とマルスの動きが速くなってしまう…
「ううぐっ…いい…うん…」
しかし…カチュアは、激しいなる動きに痛みを覚えてしまう。
それに気づくマルス…
「あっ…ごめん…いきなり速くしてしまって…」
(…カチュアに優しくできないのか…僕のバカ…)
マルスは自分の欲望を抑えられない自分を恥じた。
そんなマルスに…
「…マルス様…私は…マルス様に愛されたいのです…ですから…自分の思い通りにしてください…我慢などされてしまったら…私の方が…寂しいです…」
「カチュア…」
「私を…愛してください…力強く…お願いです…マルス様…」
「カチュア…分かったよ…」
マルスは…カチュアの想いに答える…

クチョ…ヌチャ…クチャ…
彼女との接合部から淫猥な音が聞こえてくる…
「くはああ…あっ…あはぁぁあ…」
カチュアは突かれる度に声をあげ、悶える…
しかし…それも変化していった。
滑りが良くなってきたのは…カチュアの秘所が受け入れ始めたからだった…
徐々にだが…彼女の声から苦痛の色は消えていく…
代わりに、激しいうねりのような感覚が次々と生まれてくる…
それは…胸や秘所を愛撫されていた時の感覚と似ていた…
でも…今のそれは…その時とは比べ物にならない激しさと…大きさで…彼女の体と心に浸透していった…
「ああぁぁぁ…あっ…あはああぁぁあ…はあ…」
カチュアの声が…甘い色の物に代わってくる…
(…私…嫌じゃない…嫌じゃないよ…マルス様を…感じる事ができる…)

カチュアの体が…燃え始めた事をマルスは感じていた…
今のカチュアは…痛みを感じる事が麻痺しており、代わりに性感を感じていた…
(もっと…カチュアを感じさせてあげたい…)
そう思ったマルスは…
「カチュア…もっと感じさせてあげるよ…」
「…マルス様?…えっ?」
いきなり挿入したまま、カチュアの体を抱きしめて抱えた。
そして…自分が後ろに倒れていく…
「マルス様…これは…」
カチュアは騎乗位の体勢をとらされていた…
「これなら…もっとカチュアを感じさせてあげられるんだ…」
マルスは…下からカチュアを突き上げた。
「…うあん!…ああっ!…あん…」
今までより、激しい挿入感がカチュアに襲う…
「ああん…ああっはああ…はあ!…」
カチュアは先ほどより、激しく悶えた…
カチュアは…あまりの刺激に自分の安定を保てなくなり、マルスの胸板に両手をおいて、自分を支えた…
カチュアの胸が、上下に弾む…カチュアの髪が、激しく靡く…
既に…彼女の秘所は…白くなった愛液が、挿入の度に外へ流れ出していた。
マルスのペニスは、彼女の子宮の奥を…ひたすら責める…
「…ああっ…マルス…うん…様が…奥にあたってる……ぅはっ…」

マルスは、自分を包みこむカチュアの中の温かを感じながら…ひたすら腰を動かす…
「カチュア…カチュア!!」
マルスはカチュアの名を叫ぶ…ただ…ひたすら…

「あああうう…あっ!…マルス…さ…ま…ううああぁ…!」
「カチュア…カチュア…」
カチュアも…マルスも…お互いの名を呼びつづける…
「ああっ!…私…ダメぇ!…おかしく…なる…」
騎乗位をとらされ、今までより激しく感じているカチュアは…もう…何が何やら分からなくなっていた…
いつのまにか…カチュアは自分で…腰を動かしていた…
「あうう…うはっ!…ああ!…い…い…いいっ!」
カチュアも…激しく求めていた。

いつまでも…続くかと思われた二人の行為…
それは…徐々に終幕へと近づいていた…

カチュアの中で…何かが弾けようとしていた…

「あああうぅ…マルス様…私…何か変です……」
「…うっ…カチュア…イクんだね…」
「うっ…イ…イク?」
「心配ないよ…カチュア…僕の事だけを感じて…」
マルスは…自分の挿入のスピードを早めた…
自分も…限界に近づいていたから…
「あうっ…あっ…うああぁぁあ…」
激しくなった挿入に…さらにカチュアは上り詰めていく…
「マルス…さま…ああ!!…私…怖い…怖いです…」
「カチュア…大丈夫だよ…うっ…怖くなんかない!…僕がついている…」
お互いを感じながら…お互いを想いながら…絶頂へ昇っていく二人…
「あは!…マルス様!…ああうううぅぅ…マルスさまぁっ!!」
「カチュア…カチュア!!」
ひたすら…突き上げるマルス…ひたすら…腰を躍らせるカチュア…

「…カチュア…イク…」
マルスが限界に達しようとしていた…
マルスは一番奥まで突き入れた。
「あうあはは…ああっ…あああぁぁあ!」
カチュアも達しようとしてる…

そして…

「カチュア!!」
ビシュゥゥゥゥゥ…!

カチュアの中で…マルスが果てた…

「熱い!!…中に…!」

ドクッ…ドクッ…

…自分の中に…注ぎこまれたマルスの性を感じながら…

「ああううううううぅぅぅぅっ…!!!」

…カチュアも果てたのだった…




「……マルスさま……好き……」

果ててから…その一言を発して…彼女は、マルスの胸板に落ちていった…








「ありがとうございました…マルス様…」
ことを終えた後…服を整えた二人…
その時にカチュアはマルスに礼を言った。
「これで…思うことなく、私は心を捨て去る事ができます…」
「カチュア…」
マルスとカチュアは愛し合った…でも…それではカチュアの心を救う事はできない…
自分にできた事は…今までのカチュアの想いに答える事だけだった…
(何も…できないのか…僕には…)
カチュアを愛した…この事にマルスは迷いはなかった…
でも…その愛した少女の心は…失われようとしている…
これほど…残酷な事があるだろうか…
「ありがとうございました、マルス様…私の想い…例え、この一時でも、叶えてくださって…」
「カチュア…僕は…」
(カチュア…僕は君の事を愛したんだ…決して君を哀れんだわけでは…)
「マルス様…ごめんなさい…私…もう行きます…」
カチュアは…自分の心を捨て去ろうとする。
「カチュア…僕は…君の事を…」
「…マルス様…もう…何も言わないで…」
マルスが想いを喋ろうとした時…カチュアが遮った…
「…もう…これ以上、優しくしないでください…本当に…私…貴方から離れる事ができなくなってしまう…」
カチュアの目から…涙が零れる…
「私は…この一時間違いなく貴方に愛されたのです…私は…今、本当に幸せなのです…好きな人に抱いてもらいました…好きな人と愛し合う事ができました…こんなに幸せな事はありません…私は…それだけで満足です…」
「カチュア…」
(僕は…この少女に…本当に幸せを与える事ができたのだろうか…)

「マルス様…もう…お別れです…」
カチュアは意を決して、マルスに向き合う…
「僕は…僕は…カチュア…」
マルスの目頭が熱くなっていく…
「マルス様…私…
「僕に…何ができることはないのか…カチュア…」
カチュアに何かしてあげたかった…この目の前の少女の為に…何か…
「私は…もう…」
「なんでもいいよ…僕はなんでもする…カチュアの為に…なんでも…」
少し、顔を俯かせたカチュア…
「…本当に…お優しいのですね…マルス様…では、お願いできますか?…」
「なんだい…カチュア…」
「…最後に…もう一回だけでいいですから…キスを…してください…」
カチュアは…もう一度だけ…あの感触を感じたかったのだ…
「…分かったよ…カチュア…」
マルスは…カチュアの肩に手を置き…顔を近づけていった…

「…マルス様…好きです…」
「…僕もだよ…カチュア…」
二人は…目を閉じて…唇を合わせた…

(…私…本当に幸せです…)







「うっ…うううっ…」
カチュアとの別れを済ませた後…
マルスはカチュアの部屋を出て…しばらく、歩いたところの廊下で泣いていた。
「僕は…僕は…」
そのマルスの後から…声をかける者がいた…
「マルス…様…」
マルスは振り向いた。

そこには…シーダが立っていた…悲しい顔で…
「シーダ…」
「…マルス様…」
お互いに無言の空間が発生した…

その無言の空間を、先に破ったのはマルスだった。
「…僕は…本当に、ダメな男だよ…」
マルスが…重たい声で言った…
「僕は…最低だ!…自分の事を愛してくれた少女の心を救うこともできない。その少女に…何もしてあげる事もできない。…そして…シーダ…君の心まで…踏みにじってしまうなんて…」
マルスは…自分が情けなかった…
カチュアの心を救えず…また…目の前の少女の想いすら…裏切ってしまった自分…
弁解の余地はなかった…シーダを裏切った自分の…

でも…マルスはシーダの事を嫌いになった訳ではなかった…
そして…カチュアの事を欺いたつもりも無かった…

マルスは、今でもシーダの事が好きだった…
そして、あの時…カチュアの事を愛した事も真実だった…

真に身勝手な事だったが…マルスは…今、二人の少女に想いを抱いていたのだ…

もちろん…それが許される事ではないことは承知していたが…

「シーダ…許してもらえるはずはないけど…ごめん…」
謝るマルス…彼は言い訳をするつもりは無かった…
彼は…自分の心を偽るつもりはなかった…

「マルス様…別に私は…貴方を責めるつもりはありません…」

シーダは…小さな声で喋った…
「マルス様は…お優しい方ですから…あれだけ、マルス様の事を想ってくれたカチュアをどうも思わないはずなんてないです…それに…」
シーダは…マルスに近づいていった…
「私…とても…カチュアを尊敬してしまいました…あの想いの強さ…マルス様を想う強さを…私…敵わないと思いましたから…」
「…カチュア…」
「でも…私も…マルス様が好きだから…愛しているから…カチュアの強さに少しでも近づきたい…カチュアの想いに負けたくないと思っているから…」
シーダは…少し声を震わせながら言った…
「シーダ…」
「…マルス様…カチュアを想っていても構わない…私のこと…嫌いにならないで…」
シーダの声は…徐々に嗚咽へと変わっていった…

そんなシーダを…マルスは黙って抱いた…
「…マルス様?」
「僕は…シーダの事を嫌いなるわけないよ…だって…身勝手かもしれないけど…シーダの事…好きだから…」
マルスの言葉に…
「マルス様…私も…好きです」
シーダも想いを口にする…

抱き合うマルスとシーダ…
でも…マルスの涙が止まらなかった…
「マルス様…?」
シーダがマルスを心配する…
「ごめん、シーダ…やっぱり…今は…カチュアの事が…」
マルスは…カチュアの事を思い…泣いた…
「ごめん…シーダ…今は…泣かせてくれ…」
シーダをしっかり抱きながら…カチュアの為に泣くマルス…
シーダも…そのマルスをしっかり抱いた…

今は…泣き崩れるマルス様の傍にずっといてあげたかった…







カチュアは…一人…自分の部屋に残っていた。
月の光しかささない部屋で、彼女はベットに腰掛けていた…

彼女は…闇のオーブを首から取り外そうとしている…
それは…彼女の心の死を意味するのに…

「…うっ…ううっ…」
カチュアは一人泣いていた…
「私…私…」
カチュアは…涙が流れてしまう…
(…私…本当は…心…なくしたくなんてないよ…)
それが…カチュアの本音だった…
(嫌だ…マルス様を想う心…失いたくない…消したくなんかない!)
カチュアは…マルスを想う心を消したくなかった…今まで自分が一番大切にしてきたものだから…
(…でも…)
そう…カチュアに闇のオーブがある限り…またいつカチュアは…闇に支配され、マルスに危害を加えるか、分からないのだ…
カチュアには、それが耐えられない…
自分の好きな人に手をかけるなんて…絶対にしたくない事だから…
だから…カチュアは…そんな思いをしたくないから…マルス様には無事で幸せになって欲しいから…
だから…カチュアは…自分の心を…閉ざしてまで…
自分を…ほんの一時でも愛してくれたマルスの為に…

「…マルス様…本当にありがとうございます…幸せな一時を…私に下さって…」

自分の愛するマルス様の為に…自分を愛して下さったマルス様の為に…



「…マルス様…さようなら…」


彼女は…首にかけられたオーブを取り払ったのだった…








この後…マルス率いる同盟軍は…アカネイアに進撃、暗黒皇帝ハーディンを激闘の末、破った…
また、全ての事を画策したガーネフ…そして復活を遂げたメディウスを倒したのだった…

ここに後に英雄戦争と呼ばれる戦いは集結した。









…ニ年後…





マケドニアの空を…背中に少女を乗せたペガサスが飛んでいる…
白いワンピースを着た、青いショートカットの少女…

カチュアだった…

しかし…彼女は目には…光は灯っていなかった…
周りの風景を見るわけでもなく、ただ…正面を凝視したままだった
また…ペガサスの手綱は持っているものの、彼女がペガサスを操っているわけではなく、むしろペガサスが、彼女を乗せてあげている…との表現が正しかった…

今の彼女は…まさに人形みたいだったのだ…




あの後…

カチュアの心は結局…救われなかったのだ…

彼女は…闇のオーブを取り外した代償として…心を失ったのだった…
廃人同様になり、言葉も…表情も…感情も…記憶も…全て失ってしまったのだ。

その後…彼女はマケドニアに送還される事になった。
当然だった…もう…戦う事ができなかったのだから…

そして…今は…レナの修道院で、レナ、ジュリアン、ミネルバ、マリア…そしてパオラと一緒に暮らしていた…
エストは…カチュアの悲劇を見て…いたたまれなくなったのか…アベルに何も言わず、何処かに旅立っていった…

修道院で、皆の精一杯の世話を受けていたが…彼女の顔に笑顔が浮かぶ事はなかったのである…

彼女のペガサスが…いつもの周回を終え、修道院への帰路をとる。
彼女のペガサスは、カチュアの心がなくなってしまっても、主人への思いを断ち切る事はなかった…
そのため…よくカチュアを背中に乗せて、彼女を空の旅へと、よく招待するのだった…


ペガサスは、旧王都の郊外にある修道院の庭先へと着陸した…
「カチュア!」
パオラが…修道院から出てきて、カチュアを迎える…
カチュアは自分から降りようとしないので、誰かが手を貸さねばならないのだ…
カチュアをペガサスから降ろすパオラ…
「どうだった?…今日の空の旅は?」
「……」
カチュアは無表情のまま、何も喋らない…このニ年…あの時からずっと…言葉も…表情も失ったのだから…
パオラが溜息をつく…
(もう…カチュアの心が、戻ることは…ないのかな…)
このニ年…パオラは必死にカチュアの看病をした…
でも…結局…何も変わらなかった…
カチュアの心を取り戻すことはできなかったのだ…
パオラは…自分の無力さに…何度も泣いた…


カチュアの手を取り、彼女を自室へと連れていくパオラ…
そして…彼女をベットに寝かした。
「夕食の時になったら…またくるから…」
そう言うが…カチュアに反応はなかった…
しかし…これが日常なのだ。
パオラは…しばらくカチュアの顔を見つめた後…部屋から出ていった…


「パオラ…カチュアは?」
ミネルバがパオラに尋ねる。
ミネルバは王位を捨て、今は妹マリアと共にこの修道院で働いていた…
「もう…寝ました…」
「そう…」
ミネルバの顔が少し…落胆の表情をする…
ミネルバにとっても…あのニ年前の事はショックだった…
自分をよく慕ってくれたカチュアが…こんな事になってしまったのだ…
やるせない気持ちで一杯なのだろう…
「カチュア…もう…心戻らないのでしょうか…」
パオラが呟く…
「パオラ…きっと大丈夫です…カチュアの心はきっと蘇る…それを信じて、見守っていきましょう…」
ミネルバが…パオラを力づける…
「はい…ミネルバ様…」
(そうだ…姉のあなたが、あきらめてどうするのよ…パオラ…)
諦めずに…頑張ろうと決意するパオラだった…

その時…
「ミネルバ様…パオラ様…」
部屋に入ってきた女性がいた…
レナだった…
「レナ…どうしたのです?」
「実は…今、このような書状が参りまして…」
レナから一通の書状が、ミネルバに渡された…
「誰からなのです?」
「アリティア国王…マルス陛下の…」


今、マルスは、アリティアの国王として…アカネイア連合王国の盟主として…この荒廃した世界の復興にあたっていた

その書状には…公務でマケドニアに赴く事になったので、その時にこの修道院を訪れて、カチュアと面会したいと言うものだった…

「どう致します?パオラ…」
「……」
パオラは悩んでいた…マルス陛下をカチュアに会わせる事に…

あの時…カチュアの部屋から出ていった時以来…マルスはカチュアに会っていなかったのだ…
マルス陛下が、このカチュアの様子を見たら…責任感の強いマルス陛下の事…きっと責任を感じてしまうと思ったからだ。

「パオラ…確かに…マルス陛下に心配をかけたくない気持ちは分かります…でも、カチュアの気持ちはどうなるのですか?」
「カチュアの…気持ち…?」
パオラが、ミネルバを見る…
「カチュアは…心を壊してまで、マルス陛下の為に尽くしたのです…例え、心が消えてしまった今でも…カチュアがマルス陛下を愛した事実には変わらないのです…彼女の…消えてしまった心の想いのためにも…カチュアをマルス陛下に会わせて良いのではないですか?」

そうだった…カチュアはマルス陛下の事を愛していたのだ…
その想いは…今は失われた物だとしても…彼女がマルス陛下を愛した事実には変わらないのだ…
例え…心がなくても…カチュアをマルス陛下に会わせたい…
そう…思った…
「分かりました…ミネルバ様…カチュアをマルス陛下に会わせましょう…」
頷くミネルバ…
(そう…心がなくなったって…カチュアのマルス陛下への想いは事実だったのだから…)
パオラは…昔のカチュアの想いを大切にしたかった…





ニヶ月後…

マルスの一行が修道院に到着した…
パオラ…そして姉に連れられたカチュアが、門の前で待っていた…

「マルス陛下が…いらっしゃったわ…」
道の向こうから…馬に乗った青年国王の姿が映った。
その周りには…数人の騎士が付き添っている。

マルスは…3人の姿を確認すると…馬から飛び降り、走ってきた…

「カチュア!!」
マルスが…カチュアに近づくなり、いきなり強く抱きしめた…
「カチュア…会いたかった…」
抱きしめながら…想いを口にするマルス…
このニ年間…ずっとカチュアの事が気がかりだったから…

でも…カチュアは…マルスに抱かれながらも…反応を示さなかった…
「…カチュア?」

マルスが…カチュアの顔を見つめる…
…しかし、彼女は無表情なままだった…

「…カチュア?…そんな…」
「マルス陛下…お久しぶりです…」
パオラが前に出る…
「パオラ…カチュアは…まだ…」
マルスが…パオラに尋ねる…
「…はい…カチュアの心は…いまだに…」
「……」
マルスは…沈痛な思いで…カチュアの顔を眺める…
「カチュア…君はまだ、心がないままなのか…」
カチュアの顔を眺めながら…喋りかけるマルス…

「……カチュア…僕は…今でも君の事が好きだよ…だから、カチュア…心を取り戻してくれ…あの時に止まった時間を、また…動かそうよ…」
マルスは…カチュアに想いを伝える…


そんなマルスを…パオラは眺めていた…
(マルス陛下…まだ…カチュアの事を愛してくれているんですね…)
マルスの想いが…姉のパオラとしては嬉しかった…

「陛下…少し馬を休ませませんと…」
従卒の騎士が、マルスに具申する…
ここまで、馬を飛ばしてきたのだ。馬もかなり消耗していたのだ…
「うん…分かった…」
そう言って、マルスは馬に飛び乗った…

「カチュア…また…後で…」

そう言うとマルスは…修道院の脇にある馬小屋にむかって馬を走らせていった…

「マルス陛下…ありがとうございます…」
いまだに…カチュアを愛してくれているマルスに向かって、パオラはそのマルスの後姿に礼を述べた…


その時だった…


「……さ…ま…」

パオラの耳に…消え入りそうな声がが入ってくる…

「?」

「…マルス…様…」

パオラは…後に振り向いた。


「!?」

パオラは…愕然とした…

カチュアは…マルスの消えていった先を眺めていた。

そのカチュアの目から…涙が零れていたのだ…

そして、彼女の口からは…

「…マルス…様…マルス…様…」

との言葉を発していた…

「カチュア…あなた…」
パオラは目を疑った…今まで心を失ったと思っていたカチュアが…涙を流し…自分の愛する人の名を呼んでいるのだ

「マルス…様…」

自分自身のもっとも大切な人の名を呼びつづけるカチュア…

パオラは…カチュアの想いの強さを知った…

(カチュア…あなたって子は…なんて…)

パオラは…カチュアを抱きしめた…

「??」

カチュアはきょとんとした表情をした。

「カチュア…良かった…私…とても嬉しい…」

強く…強く…カチュアを抱きしめるパオラ…

「あなたは…心を失ってはいなかったのね…カチュア…あなたは心を…ただ忘れてしまっていただけなんだわ…」

パオラは…カチュアの心が取り戻せる事を確信した…

「私もずっと一緒にいるから…一緒に頑張るから…カチュア…少しずつでいいから…心を思い出していきましょう…」

いつのまにか…パオラも泣いていた…
嬉しくて…とても嬉しくて…

そんな…パオラの涙でくしゃくしゃになっている顔を見て…カチュアの顔に笑みが浮かんだ…


それは…二年ぶりのカチュアの笑顔だった…

 

 

END

 

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