重い瞼を開くとそこにはジェイドの顔があった。
それだけはわかる。
覚醒しきっていない頭を無理矢理働かそうと、プラチナは現状把握に努める。
膝枕されている自分。
それを認識するまでにそう時間はかからなかった。
「…っ!?」
慌てて身を起こそうとすると、頭の芯に重い鈍痛が走る。
「あ、まだ起き上がらないでください。魔法を施したばかりですからね。少し安静にしていただかないと」
ジェイドが頭上からそう言った。
起き上がろうにも体に力が入らない。
体が全身でその行動を拒絶していた。
「ここは…どこだ?」
やっとの思いでそれだけを吐き出す。
「森の近くにある民家ですよ。テントまで帰るには距離がありましたからね」
プラチナの疑問にジェイドが答える。
「現状は致し方ないものだと認識していただけると、助かるんですけどねー」
膝枕をしている現状を理解してもらえるように、ゆっくりとジェイドは話し始めた。
「倒れられたんですよ、突然。覚えていませんか?」
そう言われてプラチナは記憶を手繰る。
そうだ。
いつもの発作が起きたのだ。
ジェイドに知らせる前に思考が途絶えた。
「それに頭痛と眩暈が主みたいですから、私としてはこうしていていただけると術が施しやすいんですが」
顔にかかる髪をそっと取り除くと、ジェイドは呪文をゆっくりと紡いだ。
それに伴い、何とも言えない心地よさが全身を伝わる。
膝枕の姿勢は、確かに呪文が該当部である頭にかけやすい。
「ベッドがあるだろうに…」
ポツリと呟いたプラチナの言葉に、ジェイドは苦笑した。
「ダニと蚤がいる不衛生な環境元でいいのならありますけど?」
確かに酷くこの建物は粗野な造りをしている。
「この辺りの環境衛生は最低レベルですね」
「そうみたいだな…」
視線が届く範囲から察しても、劣悪な環境といえる。
まだ一部の地域では、このようなところもあるのだ。
「プラチナ様が王になられて、改善を図ればよろしいのですよ」
プラチナの考えを推し量ったように、言葉を付け加える。
「…そうだな…」
それにプラチナはしっかりと頷いた。
「そういえばロードが、お前は治癒魔法をかけてくれないと嘆いていたぞ」
術が施され、体調も安定したのかプラチナが口を開いた。
「そりゃあ、あの人たちに治癒魔法を施していては、こっちの体が持ちませんから」
至極当然というようにあっさりと答える。
「魔法は精神力と体力と集中力を要しますし。普通の治療で事がすむならそのほうがいいんですよ。生まれつきの治癒能力というものが、個々には備わっていますしね」
「治癒能力か…」
自分の体の弱さは生まれつきのものだ。
自己の治癒能力は他人のそれに比べると格段と落ちるのだろう。
「あ、もしかして自分だけ特別扱いは気に入らないとか思ってます?」
無言を肯定と取ったのか、ジェイドは言葉を続ける。
「実際、プラチナ様は特別ですから仕方ありません」
その言葉とは裏腹にジェイドは不敵な笑みを浮かべた。
「お体が特別弱い」
「……」
「ああ、動かないでくださいね、安静第一ですよ! …全く怖いですねえ。勿論いろんな意味を含めての特別ですよ。なんと言ってもプラチナ様と私は運命共同体ですし」
参謀でもありますしね、と付け加えた。
「大体プラチナ様は我慢しすぎです。具合が悪いのなら、正直に言っていただかないと」
「すまない」
「素直な返事、大変結構です。御判りになられたのならよろしいんですけどね。次からはちゃんと言ってくださいよ」
そう苦笑され言われては、返す言葉もない。
魔法の心地よい感覚に浸りながらプラチナはそっと目を瞑った。
「プラチナ様?」
話し掛けても反応がないプラチナに問い掛ける。
規則正しい寝息が耳に届いた。どうやら、再び眠りについてしまったようだ。
「束の間の休息ですが、ないよりマシですかね」
これからのことを考えると、体力はあるにこしたことはない。
それと…何より強大な精神力。
まだ若きこの王子にそれを身につけてもらわないといけない。
一人で何でもこなせるように。
けれど。
「暫くはこのまま…」
誰にも聞き取れないほどの小さな声で。
自分に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
鳥篭に囚われて羽ばたけない小鳥のように。
今はこの腕に彼を捕らえる。
このときだけは、一人でなく二人でいるという、確かなことを噛締めながら。
桜華様への1000HITお礼キリリク小説です。
…暗いですよ…(汗)
ジェイプラで、ジェイドの膝枕で寝ているプラチナというシチュエーション…だったんですが…こ、こんな形になってしまいました(吐血)
私という一人称でもわかりますが、王になる前ですね。
王になる前なのでそんなにラブラブしている姿は書いていない…というか書けないと言うか(汗)
このころのジェイドって気持ち抑えていると思うんですよ、私的に。
そしてプラチナもそう易々とは膝枕はさせないだろうな…と思いまして、思い切って気絶という暴挙に出してみました(滅)
ちなみにもうひとつシチュエーションのリクをいただいているのですが、それは裏が出来てから、ということで(笑)←作る気かい(笑)
裏としてしか話が思いつかない私をお許しください(汗)
全然ラブラブに出来なかったんで、裏でラブラブにさせてやりますとも!!(笑)
そちらを真のキリ番御礼ということにしたいと思います〜。
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