「おーい、プラチナいるかーっ?」
その声と同時にドアが勢いよく開かれた。
声の主…珍しく髪を下ろしているロードが躊躇することなく入ってくる。
「お前は…ノックをしろとー」
プラチナの台詞を聞いて、入った状態のまま、左手にあるドアを慌ててノックをする。
「入ってからでは意味がないだろう」
「しょーがねーじゃん、もう入っちまったし」
ロードも開き直ったのか、明るくそう言うとにっこりと笑った。
毎度毎度のことだが、少しは学習と言うものをして欲しい。
口を煩くして言っているのに、今度からやるって!、とこれまた聞き飽きた台詞とともに軽く受け流されている。
最近ではロードのこの行為はわざとではないかとさえ、思うようになってきていた。
「まだ着替え中?」
プラチナの髪がまだ下ろしたままだ。着替え中だったら出直す、と付け加えてロードが問い掛けた。
「…後は髪を結わえるだけだ」
「それじゃあ、ちょうどいいや。俺にリボン分けてくれねーか?」
そうロードは用件を切り出すと、ソファに腰をかけた。
「…女官に申請すればいいだろう」
「えーっ、いいじゃんかよー、別に! プラチナ様のリボンを借りたいのっ!」
「…勝手にしろ」
「ええーーっ、マジ?」
「そのつもりで来たんだろう」
このままロードとやり取りを続けていては、ただ時間を浪費するだけだ。
そう判断して答えたプラチナだったのだが、このロードの驚きようは想像していなかった。
自然と険しい表情になる。
何か企んでいるのだろうか?
プラチナの思考を読み取ったようにロードが慌てて否定をする。
「違う、違う! ほんとーに借りるだけだって! いやっ、なんか、あまりにもあっさりOK出すからさー」
そう言うとロードは軽く笑った。
「借りるのか借りないのか、はっきりしろ」
それとは反対に憮然とした表情でプラチナが冷たく言い放つ。
「あわわっ、借ります、借りまーすっ!」
機嫌を損ねては大変と、慌ててロードが答えた。
その答えを聞き、プラチナは仏頂面のままおもむろに立ち上がった。
衣装ダンスの中から綺麗に並べられたリボンを数本取り出すと、無造作にロードの前の机に置いた。
プラチナに良く合いそうなリボンが机の上に並べられている。
ロードはその中の一本を取り上げると、そのまま頭上に掲げた。
「なぁ、これってお前が選んだの? なかなかセンスいいじゃん」
「いや、大抵ジェイドだな。この服もそうだが」
「げっ」
「…何だ」
「い、いやー、遠まわしにあいつのこと誉めちまったなーって思ってさ」
それに大元はジェイド、と考えると、プラチナのものを身につけたいという思いも意気消沈してくる。
そう、このリボンを借りたいという行動にはプラチナのものを身につけていたい、と言う意味が隠されていたのだ。
こうも簡単にリボンを貸し出すと言うことは、プラチナは服装には無頓着なのだろう。
「それに服もあいつの趣味か…やっぱ気にくわねー」
まるでプラチナの全身が、ジェイドのものだと強調されているようで。
胸糞悪ィ、と心の中で悪態をつく。
「なぁ、今度俺と買い物に行こうぜ」
「…話の脈絡がよくわからないな。お前はリボンを借り来たんだろう。何でそうなるんだ」
「いいじゃんか。細かいことはいいっこなし!」
「お前…」
「さてっと、プラチナ様のご機嫌を損ねると大変だから、この辺で退散しよっ」
プラチナの言葉に覆い被さるようにロードは言うと、素早く机の上のリボンを手に取った。
どれにするか悩んでいたらしいが、プラチナが身につけることが特に多い蒼色にしたようだ。
「リボン借りてくな! じゃ、また今度予定立てて来るから!」
「そんな暇があるなら仕事をしろ、仕事を」
了解ー、と真剣みのない言葉を残すと疾風のようにロードは去っていた。
「あいつは朝から元気だな…」
何とも言えない疲労感だけが後に残った。


「入りますよ」
ロードが部屋から去って1分もしないうちに、聞きなれた声がプラチナの耳に入る。
見ると部屋の入り口にジェイドが立っている。
開け放たれたままのドアのところで、一応の確認を取っているようだった。
「入れ。…全くあいつ開けっ放しで行ったな…」
「誰か来てたんで…すね、この様子じゃ」
部屋のドアを開けっ放しにしているような王ではない。
「ロードがな」
「また来てたんですか、ロードは」
また、というようにロードの来訪は頻繁だ。それも私用、ほとんど遊びに来ているだけだ。
「ああ。リボンを借りに来た」
「リボンを? それで? 貸したんですか」
「ああ。あのまま居座られても困るからな」
一瞬ジェイドの表情に鋭いものが走る。
「どうかしたのか?」
「いえ、別に」
あれはプラチナへ買い与えたものだ。ロードに貸すためではない。
しかしこのお優しいプラチナ様は、そんなジェイドの意図などわかるはずもないだろう。
結局、優しすぎるのだ。
こっちの気持ちも考えないで。
本当にお優しい。
ふぅ、と軽く息を吐き出し、話題の転化を図る。
「体調はどうですか」
「今日は調子がいいな」
その言葉を裏付けるようにプラチナの表情は明るい。
このところずっと体調を崩していたのだが、やっと最近になって安定してきている。
「髪がまだですね…。俺が髪結わえるんで、そこに座っていてください」
髪を下ろしたままのプラチナを見て、ジェイドは嘆息した。
プラチナを椅子に座らせると、ジェイドは慣れた手つきで髪を梳き始めた。
銀髪はプラチナの魂を表すように気高く美しい。
首筋が露になる。
少し逡巡した後、素早くと首筋に印を刻む。
「っ…おい…!」
刹那。
プラチナの全身から殺気が迸るのを感じ、ジェイドは数歩後ろに下がった。
この反応はすでに見通している。
「おっと! そんなに怒らないで下さいよっ」
「………」
「お召物でちゃんと隠れますよ。それにプラチナ様が、こんな無防備な姿を俺以外にさらけ出さなければいいんですから」
悪戯っぽい目と、飄々とした口調で言ってのけるジェイドをプラチナは軽く睨んだ。
「…そういう問題ではないだろう」
「そうですか。でも目に見える形で確認したいですから」
指先に、体に。
こうしてどんなに刻み込んでも、体に刻んだ印は時が経てば消えてしまう。

きっとその証が消えないのは…心、魂のみなのだろう。
おそらくその印を刻み付けられたのは自分のほうだろう。
見えない仕掛けは、確実にその効力を発揮させている。
いつのまにこんなに囚われてしまったのだろう。

「…本当にお前は、あほうだ」
囁くようにプラチナが呟いた。
「…そうですね、すいません」
囁くようにジェイドが呟いた。

「さぁ、今日も職務を頑張りましょうか」
プラチナの髪を結い終え、ジェイドがいつになく真面目に言う。
「やる気なのか? 珍しいな」
「何を言っているんですか、仕事をこなすのはプラチナ様ですよ?」
「…お前…。…出来るだけお前にも仕事を回すことにしよう。…行くぞ」
端然とした態度で、椅子から立ち上がるとジェイドに告げた。
「はい」
笑みを含んで、ジェイドがそれに答えた。




桜華様への2000HITお礼キリリク小説です。

すみません、ごめんなさい、申し訳ありません(汗)
ジェイプラ推奨とか公言しつつ、私のジェイプラ話はこんなのです。
…はぁ……。こ、これはへこみますね…(汗)
ジェイプラファンの皆様すみません…そして桜華様、ごめんなさい…(痛)
うちのロードさんは王子至上なので、どうしてもこんな感じとなってしまいます…。バトルにならなくてよかったです(笑)。でもその代わりかなり出張ってしまいました…。そしてノックをしないで中に入るロードさんが好きみたいです、私(笑)
あああ(汗)、でも久々のジェイプラなのに
のにのに…。こんなのですみません…。
ちなみにここでいう印とはキスマークです♪(爆)←誰か止めてやってください…。
それと見えない仕掛け、と言うのは一回書いてみたかったのでここでかけて大満足です(笑)。このサイト名なので(待て)
裏切った後と言うことでタイトルは烙印にしました。
スティグマではないのだと思いますし。ジェイドの中では烙印ということで(無理矢理)。



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