「サフィ、俺から貰うとしたらどんなものがいい?」
事の発端はアレクのその一言から始まった。
「そのお気持ちだけで充分ですよ」
「うーっ、そーじゃなくて。なんか物で言ってよ」
「うーん。そういわれましても…本当に王子のお気持ちだけで嬉しいんですよ。王子が心をこめて選んでくださったのなら、どんなものでも嬉しいです」
「……」
サフィルスの言葉を聞き、考え込むアレクに続けざまに言葉を継いだ。
「…王子? どうかしたんですか」
「え!? なんでもないない!!」
「思いっきり動揺してますよ。隠し事は…」
「あ、俺、用事思い出したっ! じゃあね、サフィ!!」
アレクは椅子から思い切り立ち上がると、そのままそそくさとテントから出て行った。
テントの中にはただ一人、サフィルスだけが取り残された。


「……」
「おう、どーしたんだ? そんな怖い形相して」
サフィルスがテントを出たところで、鼻歌交じりにやってきたロードが声をかけた。
この間一時休戦を結んだことにより、サフィルスとの中は比較的平穏状態を保っている。
「ロードさん…なんかご機嫌ですね」
すこぶる機嫌の悪いサフィルスに比べ、正反対にロードの表情は明るい。
「まーなっ! 俺のほうが一歩リードって言うかさ」
「…王子にどんなものが欲しいかって聞かれました?」
「え!? 何で知ってんだぁ? お前超能力者かよ!?」
「聞かれましたから、私も」
「…お前も? 何だよ、てっきり俺だけだと思ったのに…」
「…ロードさんは何て答えたんですか」
「欲しいものか? 勿論金めのモンに決まってんだろ!」
当然といわんばかりに胸を張って答えるロードに、サフィルスはため息をついた。
「何だよ」
「いえ…別に。あまりにロードさんらしくて」
「お前に言われると、なんか馬鹿にされてるよーな気がするんだけど」
「おやぁ、参謀殿にロードじゃないか。どうしたんだい、こんなところで。軍法会議ならテントの中でやるべきだよ。壁に耳あり障子に目ありってね」
軽口を交え、楽しげな口調でベリルが話し掛けてくる。
「なんだよ、ベリル。お前がうろついてるなんてめずらしーじゃねーか。なんか探してんのかよ」
神出鬼没ではないが、あまりベリルは一箇所に滞在していない。
「僕かい? 君たちが酒の制限をしてしまったものだからね〜。こーして歩いていればどこかにあるんじゃないかと思ってね」
前回の一件でサフィルスの不興を買ってしまったベリルは、キャンプ内での酒の制限をされていた。
制限とは建前の単なる嫌がらせではあるが。
「つまりは物色中ですか? ロードさんじゃあるまいし、あまり感心しませんね」
「おい、そりゃどー言う意味だ」
自分が引き合いに出され、思わず抗議する。
「そのままの意味ですよ」
「うわ、機嫌激悪〜」
触らぬ神にたたり無し。
今のサフィルスには近づかないほうが得策だろう。
そう思いロードは、一歩サフィルスから離れた。
「いたいた、おーいっ!!」
刹那、そんな重たい空気を打ち破るような明るいアレクの声が響く。
暫くして息せき切らせたアレクが3人の目の前にやってくる。
どうやら自分たちを探していたらしい。
「アレク様…その手に抱えているものは…」
アレクの胸にはやっと抱えている、といった大きさの袋がある。
「へへ、これはね。差し入れ!」
「差し入れ〜?」
ロードが聞き返す。
「このごろ戦いばっかりで皆気が滅入ってたろ? そーしたら街で会ったおばさんがこういうときはみんなの喜ぶことをしてあげなさい、って言ってたからさー。で、皆に聞きに回ったんだ。そうしたらサフィは気持ちがこもってるもので、ロードは金目のものだろ。で、ベリルがお酒。ってことで総合的にお酒!」
そう言って抱えていた袋を地面に下ろす。中にはいくつかの酒瓶が見える。
「ベリルにはこれっ!、で、これがロードだろ…」
アレクはその中から順に取り出していく。
「ああ〜、この瓶の感触。なんだか久しぶりだよ〜…地酒だね? これは美味しいんだよ、とっても。有難う、アレク」
この上なく上機嫌でベリルが礼を述べた。
「お、いい酒じゃーかっ! ありがとな、アレクっ!」
ロードもそれに続く。
「王子…これを皆に? そのために聞いたのですか」
「うん! サフィにバレそーになって焦ったんだぞー!」
「そ、そうでしたか…」
少なくてもベリルのために買ってきたわけではないのだと知り、サフィルスは安堵のため息を漏らす。
「はい、サフィっ!」
サフィルスの目の前には綺麗なガラス瓶に入ったお酒がある。
「…有難う御座います、王子」
アレクから受け取ると、主人にこれ以上ない笑顔を向けた。
「へへっ、喜んでもらえたらよかった! じゃ、俺ルビイに渡してくるから!」
嬉しそうなアレクの後姿を見送りながら、サフィルスは口を開いた。
「そうです、ベリルさん」
「何かなぁ、参謀殿?」
「…今度呑み比べしませんか?」
「それは面白そうなお誘いだね。参謀殿はイケる口かい?」
「…ほどほどには」
早いうちに芽は潰そう。
大切な王子に悪い虫がついてはいけないのだ。
そう心に誓ってサフィルスは前を見据えた。


「配ってきたか〜?」
「うん、あー重かった…。こんなにお酒買ったの初めてだよー」
アレクはルビイのいるテントに入るとそのまま椅子に座り込んだ。
「ま、5人分やからなぁ。お疲れ様」
「ルビイも仕事終わりそう?」
「まあな。今日はよーやったって思うわ、自分的にも」
ルビイはアレクと一緒に街に出た後、周囲の警護を行っていたのである。
アレクは渡してきた様子など、たわいない雑談を交えながら、ルビイの仕事が終わるのを今や遅しと待っていた。
アレクがルビイに話す話題は一向に尽きる様子がない。
「それにしても、坊主があの店のおばちゃんの言う通りに買うとはなぁ」
前回ルビイと街へ出たときに、店の女性とであったのである。
それからアレクなりに考え、再び今日酒を買いにルビイと共に町へ向かったのである。
「あれは商売の口車に乗せられたっちゅーやつや」
「えっ!?」
思わぬルビイの言葉に慌ててアレクが問い返す。
「そうや、ああいうおばちゃんは商売上手いでー。結局坊主、あの店で酒買うたやろ?」
「うん。…それって最初から計画してたってこと?」
「そうや。坊主が買いにくれば儲けもん。来なくても、話ぐらいは無駄にならへんからな」
「うー…」
「あはは。でも、皆喜んでくれたし、ええやん?」
「そうなんだけどさー」
なんだか納得が行かないといった表情のアレクだが、思い出したように、ずっと手に持っていた袋をルビイに勢いよく手渡す。
「何や?」
元気よく渡され、ルビイが袋の中身に付いて聞き返す。
「お店の人がおまけでくれた。おつまみだって。それと…これも。俺はあんまりお酒好きじゃないし! だからルビイには俺の分も含めて特別二本!」
「お、ええんか? そーやなぁ、子供にはまだ早いからなぁ。殊勝なことやで。エライ、エライー」
よしよし、と頭を軽く撫でられ、アレクは嬉しそうに微笑んだ。


「全く、彼らが真実に気づくのはいつのことだろうね〜」
青の賢者は楽しそうにそう呟くと、貰った酒を抱え自室へと戻っていった。




…ルビイの関西弁思い切り間違ってます。
すみません…。
その理由のせいで今まで小説に出せなかったんですが、今回はちょこっとの出番なので思い切って。
レッツ無節操の極みですね…。カップリングが無節操なのはどのキャラにも魅力がある上のことだと思ってご容赦ください(汗)。
でもこの話、難産でしょうがなかったです…。今までで一番時間がかかっていたり…。
やっぱり関西弁か…(ネック)。
というわけでこのシリーズ(!シリーズなのか!?)はルビイ×アレク…反対?アレクがルビイにラブラブですか?まあ、両思いということで(またいい加減な…)。単にベリルはよき相談相手です。
サフィルスは怖い人だと感じ取ってもらえれば満足です(笑)
優しいサフィよりちょっと黒いサフィのほうが好きですね。プラチナの首をアレクの手でかき切って欲しいというサフィですから。
呑み比べの結果はアレクディスクでのベリルイベントを見てください、ということで(笑)


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