- 石像とツバメ - |
ブリタニアのある町に、大きな石像がありました。その大きな石像は、大きな金の剣とたくさんの宝石がちりばめられた大きな盾を持っていました。そしてその瞳はきれいなダイヤでできていました。その石像は町の名物としてとても大切に扱われていました。
ある日のこと、どしゃ降り雨の中一羽のツバメがその石像の足元で雨宿りしていました。
そのとき石像がツバメに話し掛けました。
「つばめさん、僕の声が聞こえますか?」
ツバメはとても驚いていましたが、石像と話すことにしました。
「こんにちは石像さん。少しの間雨宿りさせてくださいね。」
「ええ、いつまでもどうぞ。つばめさん、実はお願いがあるのです。」
「はい、何でも言って下さい。あなたが雨宿りさせてくれたお礼に私も何でもしましょう。」
そして雨が止みはじめて町もにぎわってきた。
「ありがとうつばめさん。それでは早速やってほしいことがあるのだよ。」
「はいはい、なんなりと。」
「実はね、最近ここらへんで悪いことをする人たちが居るんだよ。その人たちをやっつけてきてほしいんだ。」
「えっ? 石像さんそれは無理だよ。だって僕はツバメだよ。人間に勝てるはずがないじゃないか。」
「わかっているよ。しかし僕は、君のことを5分間だけ人間に変える事ができるのだよ。そして君は僕の金の剣を取りその悪い人たちを倒してほしいんだ。」
「へー、あなたはそんなことができるんだ。わかった、やってみるよ。」
そこに例の人たちが通りかかった。
「頼みますよ。つばめさん」
ツバメは人間に変身して、その石像から大きな金の剣を抜きあっという間にその人たちを倒してしまいました。
「ありがとうつばめさん。つばめさんその剣を売ってお金にしてくれないかな。そしてその剣を売ったお金を、貧しい人達に、配ってくれないかな。」
「えっ?良いんですか?ほんとうに・・・わかりました。」
そしてツバメは石像の言う通りにして戻ってきた。
「ありがとう。」
戻ってきたツバメは、この石像に興味を持ってしまっていたのでしばらくいっしょにいることにした。
「石像さん、僕はしばらくあなたのとこに居ます。だから何でも僕に頼んでください。」
「ありがとうつばめさん」
そして石像は、毎日のようにツバメ頼んで貧しい子に自分の持っている物をあげていきました。そして盾の宝石も無くなってきた頃、ツバメが言いました。
「石像さん、もう盾についてる宝石も、もう無くなっちゃったよ。」
「そうか、・・・」
「でも・・石像さんのおかげで町もだいぶ貧しい人が減って幸せな人が多くなったよ。」
「・・・ぼくは、この町に作られて何故か知らないけど意志をもってしまった。そしてこの町をこの目で見ていてこんな貧しい人がいっぱい居た。そして僕はこんな格好をしている。そして何もできない、そんな自分が嫌で仕方がなかった。だけどぼくは、人の役に立ちたかった。願いが通じたのか、僕には、すばらしい能力が身についていた。そして君が来た。そして僕からこの宝石がなくなった。これでようやく役に立てた気がするよ。さああとは、この瞳をあげたらおしまいだ。」
「まって石像さんその瞳をあげてしまったら、もう周りが見えなくなってしまうよ。」
「いいのだよ、さあ早くこれをあげてきて。」
そしてツバメは、石像の言う通りに石像の目を取って、お金にかえて病気の子供たちに分け与えた。ツバメは、町をしばらく歩いていると、ある大人たちの会話を聞いてしまった。
「この町にある石像なんだがね、宝石は盗まれてもうぼろぼろになってしまったから、撤去しましょう。」
ツバメは急いで石像のもとへと戻りその話をした。
そうすると石像は、言った。
「知っているよ、こんなぼろい石像町においといてもしかたがないからね。つばめさん今までありがとう。」
「やだよ・・・石像さん。なんでいいことをしたのにこんな目にあわなきゃいけないの?あんまりだ」
「つばめさん。ぼくは、はじめからこうなることを知っていたのだよ。もう覚悟はできているよ。」
ツバメは、泣きました。石像の足元で・・・
「つばめさん、君にはずいぶんお世話になったから一つだけできる範囲で願い事をかなえてあげるよ。」
「じゃあ、石像さんがこの町にずっといられるように、・・・」
「それは無理だよ。僕も悲しいけど、ごめんね」
「じゃあ、僕を人間にして5分間だけでもいいから」
「わかった。今日は最後の力を振り絞って1時間にしてあげる。いくよー」
ツバメは、人間になった。そしてツバメは、慌しく走っていった。
「さよならつばめさん・・・」
そして50分程が過ぎた頃、石像の撤去作業が始まろうとしていた。
「これでほんとうにお別れだね。つばめさん・・・」
そして工事の手が入ろうとしたところに、人間の姿のつばめが、工事を止めにはいった。
その後ろには大勢の町の人たちもいた。
石像は目が見えないが耳は聞こえたのですぐにわかった。ツバメが工事を中断するために人を集めてきたことを。
石像は泣けないが、心の中では涙があふれていた。
そして町の人たちによる必死の抵抗により石像は残されることになった。
数日が経ち、石像はきれいになり目も取り付けられた。その石像の肩には、新しい石像が置かれた。それは、つばめの石像だった。
そして今もその石像はブリタニアのどこかの町に置いてありツバメといっしょに町を見回しているんだとさ
おわり