…強くなりたい誰よりも…強くありたい誰よりも…
 頑張りたいと願ったあの日…それは貴方に見られた日。



 ふわりと吹く風が好き。
 柔らかい光が好き。
 遠くで聞こえるコトリの声が好き。



 ……それだけじゃ、駄目なんですか?



 力の無い子はいらないですか?
 それなら何で、捨てないの?
 御家の名誉のためですか?



 ふわりと吹く風を諦めて。
 柔らかい光を諦めて。
 自分で作った心の殻を破ってくれた。男の子。


 目に飛び込んできた金色は。
 いつもにこにこ悪戯ばかり。ついでにとっても無神経。
 最初は凄く、凄く嫌。


 耳に届く、あの子の悪口。
 頷く事が出来ないのは…きっとあの日に見た風景。


 心の殻の、その中で。
 覗いてしまった…あのココロ。


 真っ暗闇のその中で。
 静かに立ってた。冷たい目。
 周りに沢山、アカイ骨。
 その中心に立ってた子。

 金色空気の、孤独なあの子。
 冷たい目をして一人で立って。
 独りで泣いてたあの子のココロ。



 それでもあの子はいつもの通り
 にこにこ笑顔で悪戯ばかり。
 誰も見ないとわかってるのに。
 皆、あきれるだけなのに…。
 どうしていつも…笑えるの?



 ココロの殻の、その中で、
 私はコタエが知りたくて…今日も貴方を見ています。


 見えないはずの、私の視線。
 あの日、貴方は気付いたね。
 
 悲しいココロの奥底で、私の視線に気付いた貴方。
 その瞬間に、見たものは、私に向けた、いつもの笑顔。
 悪戯ばかりする貴方の…いつも通りのにっこり笑顔。









 なにも、無いはずの深淵の夢。
 その時感じた視線の主は…
 同じクラスの女の子…いつも、下を見ている子。


 俺の、ココロを見に来たの?
 駄目だよ?見せてあげられない。
 俺が、きっと辛くなる。
 いつもの俺を作れなくなる。





「忘れて欲しいんだってばよ…な?…えっと…」
 名前を言えぬ、そのわけは?


 きっと私はいないから。
 御家にいても、独りな私を。
 きっと、誰も見ないでしょう。…きっと、誰もいらないの…。








 心の中の、その中で、俺が名前を言えぬのは
 心の中のその中に…誰かを入れるの怖いから。
 期待を持ってしまうのが…それを無駄だと思い知る…その瞬間が…怖いから。



 なにも言わずに頷いて…それから気づいたこの心。
 覚えてないの…わかってたのに…なのにどうして悲しいの?


 偶然見てしまったその夢に…知ってしまったココロの闇に。
 それでもいつも笑ってる…貴方に覚えて欲しかった…。





 忘れて欲しいという言葉、なにも言わずに頷く姿に
 胸が痛んだのはなんでだろう。



 あの子はいつから見ていたの?
 俺の心のその中の…生き汚いキツネの俺を
 あのこの名前はなんだっけ?
 あの子のあの目が…離れない。
 あの子はどうしてあんな目で…俺をじっと見ていたの。
 哀しいあの目のその中に…俺に対する同情が
 どうして一つもなかったの。






 心の殻のその中でいつも見ていた貴方のココロ。
 いつしか見てた…貴方だけ。


 深い闇を取りこんで…冷たい目をして涙を流していた。
 貴方のココロを照らしたいの。
 独りじゃないよと教えたいの。
 心の中の、その中で…殻を作ってほしくないの。


 だから私は頑張るの。ココロのからを少しずつ崩して。
 そうしていつか出て来た時に、今度は貴方のココロの殻を。
 破れる強さが欲しいから。

 真っ暗闇の、その中で。
 真っ暗心のその中で…冷たい目をして立っていて。
 それでも輝く金色は…私の心を照らしてた。

 あの子に覚えて欲しいから。
 

…強くなりたい誰よりも…強くありたい誰よりも…
 頑張りたいと願ったあの日…それは貴方に見られた日。


 ……誰にも言わない私のヒミツ。



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