ポカポカと、暖かな陽射しが降ってくる。
森の奥、いつもの俺たちの場所。
俺の横には金色の髪した奴がいて。
膝に赤丸をのっけて、穏かな笑顔を浮かべている。
こんな笑顔は、アカデミーじゃこいつは絶対に見せない。
「…なぁ…キバ」
赤丸の首の付け根を撫ぜながら、ナルトが声を出す。
空気に自然と溶けこんでしまいそうな、透明な雰囲気を持つ声。俺はこの声を聞くのがすげぇ好きだった。
「ん?…なんだよ」
目の前を、蝶が飛んでいる。遠くで聞こえる小鳥のさえずり。
静かな空間…俺たちが本当にここにいるのかさえも危うく感じてしまうような…そんな錯覚。
「もしさ…俺が、里から狙われるようになったら…お前、どうする?」
……はい?
とんでもない言葉を聞いた気がして、ナルトの顔を見る。
ナルトは、そんな俺に気をやる風も無く、赤丸を撫ぜている…いつも通りの顔で。
……聞き間違いか?
そんな風に俺が思うのと、ナルトが同じ言葉をもう一度反復させるのがほぼ同じ。
「俺が…里から狙われるように…いや、里に排除されるって事があったら…お前、どうする?」
今度はちゃんと聞いてたかってばよ?…俺の顔を見、アカデミーでの顔をみせる。
…一体何を言い出すんだ?
こいつが何かを抱えてるのは、こいつを包む空気でわかる。
俺やシノ…それにヒナタだって背中にしょいこんでるもんはある…でも、それはこいつに比べたら微々たるもんじゃないかって時々感じる事はある。
…でも、マジいきなりなセリフ、吐くのな。
それでも少し考えこみ、そして答えてやった。
「里の奴より先に、俺がお前を狩るぜ?」
里の命じゃ無く、俺の意志で。
悲観して言ってるつもりも無いが、冗談のつもりでも無い言葉。
ヒナタは…そんな事があったらきっと自分の命に変えてもナルトを護るだろう。
シノは…きっとなにもせず、最後まで見届ける役を取るだろう。
だったら…俺はこいつを狩る。
死に場所ってのがあるってのは、ある意味強いって事を俺は知ってるから。
ここを死ぬ場所って決めてたら…どんな事があってもそこにいくまでは生きるだろう?
だから…こいつの死に場所を決めるのは俺だ。
こいつは俺の腕の中で死ぬ…だから俺が狩る。
ナルトは俺の顔を見…そして笑った。
「俺は火影になる男だぜ?…俺より強くなるつもり?」
嘲笑でも、呆れるでもない、柔かな笑み。
俺も同じ笑みを浮かべ、ナルトの顔をみ返す。
「そ、……俺はお前より強くなんの。だから、お前は俺以外の奴に狩られんなよ?」
火影になる男だ、それぐらいできるだろ?
少々挑戦的な口調で言いはなつ。…ナルトは俺の目を見、にっと笑んだ。
「当たり前だろ?…俺は誰にも狩られねえよ…だから…」
頑張って、俺より強くなれってば
笑いながらの言葉、極自然な会話。
当たり前。俺は強くなる。
誰よりも強くなって…大事な人を護り…そして狩れる強さをみにつける。
だから…当たり前の言葉でとんでもない事言い出すなっての…心臓に悪い。
「約束…な?…キバ」
初めて聞く、誓いを求める言葉。
…いつもの声、いつもの顔、いつもの雰囲気。
……何を不安になってんだか……。
俺はナルトを安心させる様。
誓いの変わりに唇を重ねた。
穏かな陽射しの中で、ひっそりと交わした約束と誓い。
俺は…きっとこいつの言うもしも…があったとしたら。
この約束を…守るんだろう。
だから……安心しろッての…な?……ナルト。