HATIMITU116

「ねぇぼくー。ちょっとお金貸してほしいんだけどぉ。」

塾帰り、二.三人の不良に絡まれる。
一人に制服のネクタイを引っぱられて、他の二人に鞄をひったくられた。
「なにすんだよっ」って手を伸ばしたら「ハイハイいい子にしててね。」って
首を掴まれる。

「うぉー。すげーじゃん。リッチだねー。」

「いくらある?2、3…うわー、お友達になりたーい。
 ママからおこづかいいくら貰ってんの?」

財布の中から万札を抜き取って、盛り上がってる。
俺は顎を引っぱられてニヤリと笑われた。
思いっきり睨み付けたら「コワーイ」って可愛い声出すそいつらの顔は
俺から見ればどうしようもなく歪んで見える。
絡まれるのなんて初めてじゃないけど、やっぱり最悪だ。

「可愛い顔してんね。どぉ?俺と楽しまねぇ?金ならあるよ。」

そう言って俺から取った金をちらつかせながら、耳を舐めてくる。
抵抗しようにも手は押さえ付けられてて…。
他の二人は「男はやめとけよー。」なんて笑ってる。


誰も助けてくれない。


自分でどうにかしなきゃ、このまま言い様にされるだけだと覚悟を決めた時だった。



「そいつに手ぇ出すんじゃねぇよ。」



長髪の漆黒から覗く黄金の髪に学ラン。確か白金の制服だと思う。
胸元に光る銀色のペンダントに間抜けな俺の顔が映った。

「はぁ?んだよお前っ。」

「その馬鹿のダチ。」

それだけ言うと、突然現れたそいつは俺にのしかかって来てた奴の肩を掴んで顔面を殴った。
更に蹴りが飛ぶ。血飛沫が頬を掠めて、一瞬鼓動が止まった。

「てめぇなんなんだよっ。」

笑って見てた他の二人が殴り掛かる。
黒髪は靡いて、飛びかかって来た奴の足を掬って地面に倒すと上から蹴り飛ばす。
本当に映画みたいに、一人で三人を相手にするそいつを見てて悔しくなった。


「………っ。」


さっき俺を襲おうとしてた奴はまだ顔を押さえてたけど、
そんなの気にせず一発御見舞いしてやった。

それを見た黒髪がちょっと嬉しそうな顔で笑ったから、何だか俺も嬉しくなった。
笑顔を返すと同時にボコボコになった三人は捨て台詞も言わずに逃げてった。




「…あ、ありがとうな。」

誰もいない路地に入ると、御礼を言った。
「別に」なんて素っ気なく言って、黒髪は切れた口の端をすっと細い指で拭った。
自棄に美人だと見入っていたら、ふいって顔をそらされてしまった。

「あのさっお前、俺のダチって言ってたけど…。
 どっかで会ったことあるっけ?」

そう聞くと、「会ったことは、ねぇよ」って曖昧な返事を返された。
俺はわけがわかんなくって、必死で考えた後「俺のこと知ってんの?」って質問をした。


「知ってる。」


はっきりと言われて、やっぱりどこかで会ってるんじゃないのかと思ったけど、
どうしても記憶がない。
頭の隅を辿って行ったら、記憶がだんだん蘇ってくる。
そう言えば同じ学年にこんな奴がいた気がする。
クラス数が多いから、よく覚えてないけど…
確か先生を殴ったとかで、他の学校に行っちゃって……名前は…。


「沢田……」


「慎」


俺が唸ってるのを見兼ねて、黒髪はぼそっと呟いた。
そうだ、思い出した。沢田慎だ。
先生に殴り掛かって、白金に行っちゃった子だ。

「思い出した。沢田でしょ?同じ学年だよな。」

にっこり笑いかけたら、「慎でいい…。」って無愛想に言われた。

「えっとじゃぁ慎。本当にありがとうな。
 偶然会えたおかげで、俺すげぇ助かったよ。」

そろそろ帰らないとって腰をあげようとした瞬間。



「偶然じゃねぇよ。」



思いっきり腕を引っぱられて、口付けされる。
俺は本当に吃驚して、固まってたら今度は舌が入ってきて慌てて慎を突き飛ばした。

「なにすんだよ……。」

唇を手で覆って、放心状態で慎を見つめた。
慎は分が悪そうに下を向いたまま静かに話した。

「雅紀が通んの待ってたんだよ。」

少し恥ずかしがってるみたいだったから、何だか急に警戒心が解けた。
だけど、俺の名前を知ってることにまた吃驚した。

「ねぇ、もしかしていつも待ってたのかよ?」

呆れ顔で聞いたら、「悪ぃかよ」って睨まれた。

「悪いなんて言ってないだろ。声かけてくれればよかったのに。」

慎の隣に座り直して言ってみる。
夜も深くなってきて、頭上には白い月が綺麗に出てる。

「知らねぇ奴に声かけられたら困んだろ」

息を漏らして切なそうに言うから、「優しいな」って頭を撫でてあげたら
「うるせぇよ」ってその手を掴まれた。


またキスされるのかと思って、少し戸惑った。


「じゃあな。」


俺の目を見て、立ち去ろうとする慎の手を引っぱった。
よくわかんないけど、こいつ…たぶん俺のこと好きなんだと思う。


「俺のこと好きなの?」


単刀直入で聞いたらまた「悪ぃかよ」の一言返事で返された。


「悪いなんて言ってないだろっ。」


今度はこっちからぎこちなく口付けたら、上手に舌を入れられて
弾む吐息と一緒に倒れこんだ。
コンクリートの硬い感触を背中いっぱいに感じると、慎の唇の柔らかさが夢みたいだった。


「この傷さっき喧嘩する前からあったよなー。」

そう言って手の傷に触れたら「なんでもねぇよ」ってしらばっくれられた。
俺が心配だってこぼしたら、少し吃驚した顔をしてる。
そんでその後「こっちのが大切だろ」って殴った時擦りむいた俺の手に口付けしてくれた。


「また今度の金曜日にここで。約束っ。」


笑顔で握手を求めたら、恥ずかしそうにそっぽ向いたまま荒っぽくパチンて手を叩かれた。
でも、なんだか愛を感じた。


金曜日の夜が、待ち遠しくなった。


END

ついに書いた沢相。本当に楽しいったらない。
喧嘩大好き。男なら、正々堂々拳で闘ってみろ。
あっ、でも逃げる人も好きです。逃げる強さも私はあると思う。
えっと一応ドラマ第二話とコラボってます。ボコボコにされた日の夜の話です。(笑)
えっとなにはともあれ楽しかったんで、良いかなと。そんなもんだって。(笑)
私と同じ様に楽しんで読んでくださる方がいらっしゃれば、嬉しいです。
相松好きな方、是非一緒に沢相に萌えましょう。(誘)


PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル