最高の幸せ



 自分よりも小さな身体に組み敷かれる。




 二つ年下の。
 後輩に。







 そう言うこととは、全く無縁そうな……小柄で華奢な少年の。
 熱い激情を、その身に受けて。







 抵抗しようと思えば、抵抗出来る。



 自分の方が、力も強いし、本気で抵抗すれば……呆気なく形勢だって逆転出来ると思う。








 でも。

 嫌じゃないから。









 情けないような気も凄くするけど。
 でも、あの子が必死に自分を求める姿を見るのが、嫌じゃない。









 あの子の手で、唇で……全てで、自分が自分じゃなくなる瞬間。

 何もかもが、曖昧になって、あの子のことしか考えられなくなる、この瞬間を。












 俺は嫌いじゃない。









 むしろ……







 俺自身が望んでいることなのかも知れない。








「……先輩?」
「……何?」
「……先輩は……暖かいっすね」
「リョーマも……暖かいよ?」






 俺だけが見れる。
 あの子の……この表情。








 俺の……身体で、唇で……あの子が……感じてる瞬間。

 俺も……あの子を……全身に感じている……。











 その刹那が……泣きたいくらい……幸せなんだと……。




 最近、気付いた。










「……おチビの……そう言う表情……俺だけが見える特権だよね?」
「……当然…でしょ?」
「ん……。それが……一番……嬉し……かも」
「俺も……一緒……すよ? 先輩」






 耳元で囁かれた。

 
先輩の……そう言う表情、見られるのは、俺だけっすよね?











 泣きたい気持ちになったのは……。









 きっときっと。





 ものすごく嬉しくて、幸せだったから……。













「先輩……」
「んぁ……な、に?」
「……一緒に……イこ?」
「ん……だね。リョー…マっ……っ」











 二つの意識が交わり混濁して、破裂するような感覚。









 もう、何も考える余裕なんか、なかった。















 でも、一番……幸せを感じるのは……。
 目が覚めたときに、隣に眠るあの子が、俺を抱き締めていること。








 だから、俺も抱き締め返して、もう一度目を閉じて、眠りに落ちる。










 その瞬間が、最高の幸せ。




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