歪んだ渇望
作:藤原臣人様

「ゆ・・遊戯っ!!」
 城之内くんの声が聞こえる。けれど、ボクはなんだかひどく頭がいたくて・・・。
 痛く・・て・・・。

 彼の悲痛な声に安心させたくてボクは笑う。頭は最後の記憶に残るほど痛かったけれど、これでもう、君たちは離れ離れになることはない。

 ボクは。




 もう一人のボクに身体をあけ渡すんだ・・・。

 今、ボクは消えて。
 本当のこの身体の持ち主に帰依される。
 大丈夫だよ。
 これは本当に愛し合っている君たちのために。
 ボクが決めたこと。
 ボクが望んだ事。 
 そして。
 もう一人のボクが・・・望んだ・・事・・。





「ふた・・りとも・・・・大ス・・キ・・・」






 傾いでいくボクの身体を、もう一人のボクが受け止める。
 もう一人のボクがやさしく髪を撫でてくれて。
 耳元に「オレもだ・・相棒・・」と囁いてくれたのを最後に。
 ボクの意識は途絶え・・・た・・・・。


「《ゆ・・遊・戯・・・》」


 涙を流しながら《遊戯》は城之内を見つめ返す。
 どこまでも優しい色をした《遊戯》のその瞳には”狂喜 ”見え隠れしていた。

「城之内くん・・・。相棒はオレたちの為に身体を明け渡してくれた。これからはもう、誰に遠慮する事も無い。君を愛している。」


 ぞくりとするような声。

「だが・・それじゃ・・遊戯は―――!!!」
 その言葉にまた一つ。
 《遊戯》は涙をこぼして。

 慈しむような表情で目を閉じた。

「相棒が・・・オレの望みをかなえるためにしてくれた事だ。オレが幸せになること。未来を君と歩んでいく事を望んだから。だから。相棒もこれを望んだ。」
「遊戯・・が・・?」
「相棒が・・・身体を明け渡す事を強く望んだ。君よりもオレを愛してくれているから。だから。オレの為に君との未来を・・・くれたんだ。」
「君は・・・最後に残ったオレの望みだ。オレの欲しかった、もの。君自身。君は・・・・。オレの為に何を望んでくれる・・?」

 壮絶な笑みを浮かべて。



 《遊戯》は城之内に唇付ける。

 城之内は抗えずに。

 意識が考える事を拒否していく。

「俺の・・・望み・・は・・・。」






 《遊戯》を押し倒し、荒々しく唇を重ねて。









 深く求めて。
 誰よりも欲しかったものが、今ここにある実感に酔いしれる。

「望み・・は・・・・」






「『君の望み』・・は・・・?」
 熱い息を吐き出して、《遊戯》は呪文のように繰り返す。







「お前と共にあること・・・!!」










 言葉と同時に。
 城之内はまるで犯す様に《遊戯》を抱いた。
 最後の壁が崩れ落ちた。
 愛するものの命を二つ。
 望む形で手に入れた《遊戯》は、満足げに微笑んだ。

 3度目に流れた涙の意味を、もう《遊戯》さえも知る事が出来なかった。
 ここには望むものがある。
 もう、冷たい闇の中で一人でいることも無いのだから・・。




☆謝辞☆

藤原さんが随分昔、まだ【闇のエンジェリアス時代】に、
掲示板に書いて下さった城裏SSです。
UPしても良いですか?と言う、私の願いを快く承諾して
下さったにも拘わらず、随分、遅くなってしまいました(汗)
申し訳ありません!
すっごく、ドキドキしてしまう内容なのですが!
こんな素敵なのを、掲示板だけにしとくのは勿体無いので。
藤原さん、ありがとうございました♪
でも、もう一つあるんですよ♪♪

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