光の闇 作: 藤原臣人様
光の闇 作: 藤原臣人様 |
「・・く・・っ・・!!」 照明の落とされた部屋。 そこには吐息とぬめるような卑猥な音と、軋むような音だけが響いていた。 「・・もう・・やめ・・るんだ・・ッ 相棒・・」 熱い息と共に悲痛な声が紡がれる。 自由にならない身体。 どうにも出来ないほどに熱を持ったそれは、まるで自分のものでは無いような感覚に陥って。 その身体にまたがった小さな身体が同じように汗にまみれた身体を揺すらせていた。 「う・・っく!! は・・あぐ・・!!」 目尻に涙を浮かべて苦痛にあえぎながら、それでも動きを止めようとはしない。 「これ・・以上・・は・・・お前が・無理・・だ!!」 「いや・・だ・・。」 どんなに抗議されてもやめるつもりはなかった。 どんなことをしても・・繋ぎとめておきたかったから。 「・・やめた・・ら・・はっ・・キミは・・ボクを捨てて行って・・しまう!!」 身体をより一層揺らめかせてさらに奥深くへと《遊戯》をくわえ込む。 「ひいっ!! ぐ・・あ・・い・た・・」 「相棒・・!! お前・・が・・も・・やめっ――!!」 言葉と同時に。 《遊戯》が包まれていた熱さに耐えかねて達した。 遊戯の中に何度目かの精が放たれた。 ぶるりと身体を震わせた《遊戯》に対して、遊戯は達する事が出来ないまま。 この行為を始めてから一度も、遊戯は精を放てないでいた。 それどころか、《遊戯》をくわえ込んでいるソコは、《遊戯》の放った精とおびただしい血にまみれて真っ赤に染まっていた。 《遊戯》は 遊戯の部屋に閉じ込められてから身体をベッドに固定されていた。 遊戯が狂ってしまった原因を何度も考えた。 一つの原因が浮かんだ。 抱かれるようなものとは違い、自分の意志に反して強制的に精を放たれる。 屈辱的とも言えるであろうその行為。 だが、遊戯自身が一度も精を放つ事がないのに気付いた。 心が無いからだ。 自分の心が。 遊戯の心に。 部屋に招かれ、意識を失った。 お互いの部屋での支配権は当然、部屋の持ち主の方が勝っている。 遊戯は《遊戯》を部屋に招き入れ、意識を奪った。 目が覚めるとベッドの両端に腕を括り付けられてキリストの貼り付けの様に寝かされていた。 身体にまとうものは何もなく。 代わりにあったものは、慣れない仕草で自分を賢明に高ぶらせようとしている遊戯の姿だった。 その日から。 もうどのくらいの時間が経ったのか。 遊戯がいなくなる頃、それが学校に出向いている時間であるとは予想がついた。 一人になると遊戯は心の部屋にやってきて、強制的なセックスを《遊戯》に強いた。 ただそれは、あくまでも《遊戯》を高ぶらせているだけの、自虐的なものだったけれど・・。 苦痛に顔を歪めて、《遊戯》だけを熱くさせて。けれど、遊戯の身体に流れる汗は苦痛と恐怖と悲しみでいつも冷たいものだった。 「う・・・く・・もう・・やめ・ろ・・」 思考が快楽へと戻される。 こんな快楽は拷問だ。 くわえこんだまま、遊戯は身体をゆらめかせていった。 結合部分からは再び血が流れる。 《遊戯》は、自分の放つ精の匂いと遊戯の血の匂いに雄の本能が揺さぶられていった。 身体が快楽へと摩り替えていくのを止められない。 「は・・ぐう・・っ・・」 痛みに堪える遊戯の顔に興奮するのがわかった。 視線に気付いた遊戯が痛みを忘れるためにか何度目かの口付けを《遊戯》におとす。 幼稚な動きで舌を賢明に絡め、腰をさらに激しく動かす。 「・・っあ!! いやあ・・っ・・いた・・!!」 「・・ゆ・・うぎぃ・・もう・・これ以上・・は・・お前が・・死・・ん・・!!」 そのセリフを言わせ無いようにする為か唇を重ねて。 行為に再び没頭していく。 ・・・遊戯がこんな暴挙に出たのは、あの日から・・。 俺が・・・城之内くんと愛を確かめ合った日から・・。 あの日の夜。 遊戯は狂ったんだ・・。 『・・キミは城之内くんが好きだったの?』 『・・相棒・・』 『・・・ボクだって、キミが好きだよ・・。何度も言ったよね。』 『・・ああ・・・』 『何度も抱いてくれたよね? ・・あれは・・ウソだったの・・?』 『・・ウソじゃ無い・・。けれど、お前への”好き”と城之内くんへの”好き”は同じじゃない。』 『・・・』 『愛してると・・そう感じたんだ・・。』 『・・なら・・どうしてボクを抱いたりしたの・・? 都合のいい、ダッチワイフみたいなものだったの?』 『違う!!』 『・・・もう・・いいよ。ボクの独り善がりだったんだ・・。考えてみたらそうだよね。ボクが・・誰かに愛されるなんてそんな事・・。あるわけ無いんだ。』 『相・・!!』 『・・でも・・キミには思い知ってもらうよ。キミには迷惑な想いだろうけれど・・ボクには大切な気持ちだったんだから・・。』 『相棒・・う・・っ?!』 『絶対に許さない』 ――― 忘れさせてなんか・・やらないから・・ ――― 「うっ・・!!」 「ひ・・いっ!!」 荒い息の下。 遊戯が《遊戯》の上に覆い被さった。 ガクガクと振るえる腕には力が入らない。もう・・潮時だろうか。 「ゆ・・うぎ・・。聞いて・・くれ・・」 「・・・」 「お前を・・抱いた時の気持ちにだってウソは無い。愛しいと思ったのだって・・本当だ・・。」 「・・それで・・?」 「ただ・・自分でも気付かなかったんだ・・。彼に告白されて、身体を・・重ねて。こんなに熱くなったのは初めてだった・・。」 「・・・・・・」 「心は・・もうとめられないんだ・・。今の・・お前のように・・。お前の暴走も理解できる。俺でもきっとそうするだろうから・・。」 「許してくれなくても・・いい・・。俺は裏切った。お前を踏みにじった・・。だから・・この行為にも甘んじて受ける・・。だがもう・・やめてくれ・・。お前がこれ以上血を流し続けるのは・・城之内くんに会えないよりもずっとつらいんだ・・。」 「・・・・・」 「お前が・・望むなら・・。城之内くんとはもう会わない。だが・・心は・・あげられない・・んだ・・」 「心・・は・・・城之内くんのものだから?」 どこか狂気を含んだ言葉に《遊戯》が遊戯を見つめる。 「ダメだよ。」 頬を両手で挟んで。そっとキスをして。 「キミはボクのもの。誰にもあげない。」 ゆらりと起き上がった身体をスローモーションのように見ていた《遊戯》。 遊戯の手に閃く光に全てを察して。 覚悟を決めたように目を閉じる。 ―― 誰かにあげるくらいなら・・心を壊す!! ―― そう聞こえた気がした。 眼を閉じて、全てを受け入れようとする彼に涙を流して。 彼にも、誰にも聞こえない様に唇だけが”ごめんね ” と形作って。 その光は振り落とされた。 身体が一度。 跳ねた。 ビクリ、ともう一度。 血が流れる。 鈍い色を放つナイフを身体から引きぬいて。 それから。 驚きに眼を見張る愛しい人を優しい微笑みで包んだ。 「ボク・・だ・・て・・・キミを・・愛してる・・のに・・」 「あ・・いぼ・・・う・・?」 「どうして・・・ボクを・・抱いたりした・・の・・?」 「ウソ・・だ・・相棒・・」 「・・・そんなに・・城之内くんが・・好きなら・・」 ―― この身体をあげるよ・・ ―― 「遊戯!! ダメだ!! 遊戯!!」 いつのまにか外されていた手の拘束。 憔悴しきった体のことなど忘れて《遊戯》は遊戯にすがりついた。 血にまみれた身体を抱きよせて、ベッドのシーツで傷口を押さえる。血は止まらない。 血は止まらない。 血が・・とまらない!! 「身体・・はあげる・・けど・・」 掠れるような声で遊戯が《遊戯》の耳元で囁く。 「心・・は・・貰って・・く・・から・・・」 「いや・・だ・・逝くな・・傍に・・いるから!! お前が望むなら・・ずっと・・傍に!!」 「・・愛し・・る・・」 「・・ゆうぎ・・・?」 動かなくなった身体。 冷たくなってゆく身体を抱き締めて。 《遊戯》の心は静かに壊れていく。 ―― もう。誰にも渡さない。―― |
☆ あとがき (掲示板に書かれた物を引用しました)☆ かなりダークです。 でも、よく裏遊戯が表遊戯に執着する話しを読むので。 たまには逆があってもいいんじゃないかと。 子供の独占欲。でも、この話しだと浮気した裏遊戯に非があるような。(^^; 表遊戯が裏遊戯を殺さなかったのは、忘れられたくなかったからです。 心を壊す方を選んでも、身体が遊戯自身のものである限り、彼はその身体を愛し、自ら死を選ぶ事は無いと信じているから。 例え、心は壊れていても遊戯の事を忘れる事はないから。 でも、裏遊戯を殺してしまったらそれで終わり。 心は自分のものにはならないし。 「あげられない」とはっきり言われてしまっているのなら、裏遊戯を殺しても心は城之内の元へと言ってしまう。 そうなるくらいなら、彼の心を壊して自分のために死んでいく表遊戯を生きて覚えていく事。忘れる事を許さない、一番残酷な方法を選ばせてみました。 今日、仕事場で考えついてもう、えらい勢いで書き上げてしまいました。 城×裏でなくて申し訳無いです。 |
☆謝辞☆
これが、二作目です。
厳密に言えば、城裏ではないのですが。
ベースに、城裏と裏表が入ってるというのは、私もそうだったので。
書きたくても書けなかったテーマだったのです。
なので、こちらもUPさせて頂きました。
自分が書けないんで、人様ので、堪能させて頂いてたり。
裏くんの気持ちが、城之内にあることが明確なので、これは平気だったんです。
でも、それとは別の次元で遊戯のことも大切で大好きだと。
遊戯は、それじゃ満足出来なかったんですね。
藤原さん、ありがとうございました。