至上の贈り物
作: 藤原臣人さま
「う〜ん・・・・」
 表から声が聞こえる。それがいつもの声とはちょっと違っていて。
 だから興味に引かれて表に出た。
「・・・うー・・・・」
 ベッドの上で、頭をしきりにひねっている相棒が目に入る。
 何やら考えこんでいるらしい。
『どうしたんだ?』
 声をかけるとス・・ッと目をこちらに向けて。
 じー・・っとオレを見つめている。なんとなくその目が座ってるようで。
 ちょっと引いてしまった俺の耳にはいってきたのは
「やっぱ、これだよねえ・・・」
だった。   

          これが、今回の発端。一ヶ月前の出来事だった。


「ねね。もう一人のボク」
 甘えたような声で相棒がオレを呼ぶ。なにやら楽しそうだ。
『どうした?』
「明後日、城之内くんの誕生日なの知ってる?」
『そうなのか?・・聞いてなかったな・・』
「あ、やっぱり?そうだと思ったんだ。城之内くんて自分からそういう事いわないじゃない?だから、いつも通り過ごすつもりだと思うんだよね。だからさ。」
 一呼吸置いて。
「城之内くんとデートしておいでよ」
 そこでオレは思わず傾いてしまった。
『・・デ・・? デートって・・。』
「だってさ、最近キミ達2人で会えなくて淋しがってるのボク知ってるよ。丁度土曜日だし。ね。たまにはゆっくり2人っきりで過ごしなよ。ボク、もうママにもそういう事言ってあるから大丈夫だよ。」
『・・・けど・・。オレは・・』
「プレゼントの事?気にしなくたって、城之内くんにはキミがいるってだけで十分だと思うよ。ね? キミがボクの分までお祝いしてあげて。」
 にっこりとそう言われて。オレが嬉しいのを置いておいたとしても、オレはこいつには敵わない。
『・・・わかった・・。じゃあ。』
「うん!! 城之内くんにもゆっとくね!!」
 ものすっごく嬉しそうに笑う遊戯に《遊戯》も自然と顔をほころばせた。

 そして、その日がやってきた。
 どういうわけか、いつもと違って動悸が激しいような気がする。
 相棒に言われてパズルを置いてきたので、なんとなく心細いやら、ホッとするような。
「よ、わりィ。遅くなって」
 気が付くと城之内くんがもう目の前にいて。
 こういう風に会うのは初めてなせいかなんだか落ち着かない。
「遊戯がなんだかお膳立てしてくれたってな。あいつもよくオレの誕生日なんか知ってたよな。しかも、オレの好みも良く知ってる」
 スッ・・と手をだして。
「んじゃ、行くか。」
 オレの手を引いて歩き出した。
「じょ・・城之内くん!! なにも手を繋がなくたって・・。」
「今日はオレの誕生日を祝ってくれるんだろ? オレが好きなことを好きなようにすればいいんだってもう一人の遊戯が言ってくれたぜ? 嫌か?」
「・・そ・・そういう意味じゃなく・・」
「照れちまうか?」
「あ、まあ・・」
「オレは嬉しいから。だから照れないぜ?」
 ぎゅうっとさらに強く手を握って。
「まずは腹ごしらえだな!!」
 そう言って、どんどん歩いていく。その横顔は本当に嬉しそうだった。

 ひととおりあちこち覗いて、ゲーセンで対戦して、もう夜中を過ぎた頃。
「はー・・もうオレの誕生日は終わっちまったんだなあ」
 と、城之内が溜息混じりにそう言った。
 楽しい時はすぐに終わってしまうものだと、お互いにそう実感する別れの時。
 そこでオレはふと。
 出かける前に相棒に渡されたものの存在に気付いた。

――― これ、ボクからのプレゼントって渡して。
――― キミ達がおひらきだなって思ったら彼に渡して、すぐに読んでもらってね。

「城之内くん。これ・・」
「ん?」
「相棒から・・キミに。すぐに開けて読んでくれと。手紙が入ってるそうだから。」
「・・ああ、サンキュ」
 ちいさな封筒を受け取って、城之内は手紙に目を走らせる。
 《遊戯》は時間も時間なのでそのまま帰ろうとした。
「じゃあ。またな。気をつけて」
 そう言った遊戯の腕を掴み、城之内はそのまま《遊戯》を思いっきり抱き締めた。
「ちょ・・城・・なに・・?」
「なあ・・もう一人の遊戯って、ホントにいい奴だよな。」
 何をいきなり言い出すのやら。
 何が何だかわからないまま、城之内は《遊戯》の腕を引っ張って歩き出す。
 電車でふた駅の所で降り、なにかに引かれてるかのように歩き続ける城之内。
「どこへ行くんだ? もう帰らないと・・」
「今日は帰らなくていいとさ」
「え?」
「ほら、着いたぜ」

 その言葉に見上げると。
 超高層仕立てのホテルが目の前だった。
 困惑する《遊戯》に、城之内がさっき受け取った封筒を渡す。
 読めというのだ。
「オレとお前がめいっぱい過ごせます様にってさ。」

――― 城之内くんへ。
誕生日おめでとう!! 今夜は思いっきりもう一人のボクと過ごしてください。キミへの誕生日プレゼント、何にしようかいろいろ考えたけれど、これが一番喜んでもらえそうなので。もう一人のボクはプレゼントが無いって落ち込んでたけれど、キミには彼がいるだけで充分だよね?だから。ボクからのプレゼントは、今夜めいっぱいもう一人のボクと過ごすこと。です。ホテルも予約済みです。両親にはちゃんと友達の所に泊まりに行くと言ってあります。この日の為にバイトしてなんとか思っていたホテルの予約が取れました。キミ達にとって、いい日でありますように。
遊戯 ―――

「な・・なっ・・」
 困惑してる間にも城之内は《遊戯》の手を引いてどんどん中に入っていく。
 チェックインを済ませ、渡されたキーを持って部屋に向うと其処は、街の夜景が素晴らしく堪能できる部屋だった。
「すっげえ・・。なあ。遊戯って大丈夫なのか?こんな高そうなホテルで・・しかも、最上階で。いくらバイトしたからって、こんな豪華なの・・大丈夫かよ。」
「・・・あいつ・・・。」
「あん?」
「オレをはめたなあッ!!」
「・・まーまー。遊戯の好意には思いっきり甘えようぜ。」
 怒りモードに入っている《遊戯》をなだめるように肩にポンポンと手を置く。
「せっかくあいつが俺達の為に用意してくれたんだ。」
「しかし、あいつは・・ん・・ッ」
 憤慨しながら文句をいう《遊戯》の唇をふさぐ。
「今夜は・・オレの好きにしていいとさ。これが遊戯のオレへのプレゼント・・だと。」
「オレは物じゃ・・」
「最高のプレゼントだぜ・・」
「ちょ・・やめ・・」
「お前からは・・最高の愛を貰うからな」
 ニッ・・と笑って。
 夜景を大きく見せる為のガラス窓に《遊戯》の身体を押しつけて。
 奪う様にキスをした。
「んん・・はぅ・・」
 部屋の明かりは落とされた。
 夜景の明るさだけが部屋を照らす。
 いつしか揺れるように上に重なった身体が撓った。



「は・・もう・・城・・ち・・く」
「いいぜ・・イっても」
 くい・・っと《遊戯》のモノをこすってやる。ヌチャリという音がやたらと大きく響いたきがして。
 興奮しきった身体はあっけなくはじけた。
「は・・はあ・・ッ」
「まだ・・イけるだろ・・?」
 倒れこんだ身体を抱き締めて未だに結合した部分に指を這わせた。
 ヌルついた感覚に再び《遊戯》が反応する。
「・・冗・・談・・もう何回・・目だと・・」
「んじゃ。その気にさせてやる・・」

「え・・?」
 城之内は起き上がると、胸に抱えていた《遊戯》を押し倒す形を取った。
 挿入したまま体制を入れ替え、その身体を引き寄せ、胡座をかく自分の身体の上に座らせる格好になった。
 いれかえられた体制に《遊戯》がまた起ち上がって来るのを城之内はニヤリと笑ってみていた。
「ん・・ッ・・ほ・・ホントに・・もう・・やめ・・」
 何度も貫かれた身体は、些細な事でも身体が反応する。
 入れられたままの体制の入れ替えに、城之内を受け入れているソコが、ピクリピクリと締めつける。
「そんなに・・締めつけんなよ・・」
「あ・・誰の・・せいだ・・とッ!! んう・・」
 城之内は、不意に部屋の明かりをベッド脇の照明だけ点けた。
 そして《遊戯》の足を大きく開かせたまま、《遊戯》のモノをこすり上げる。
「あ・・あッ・・あう・・ん・・」
「《遊戯》・・ほら。」
「ひ・・あん・・もお・・や・・」
「お前とオレの・・繋がってるトコが良く見えるぜ?」
 軽く腰も揺すられて。
 卑猥な音が部屋に響く。
 耳元に囁かれた言葉に《遊戯》がうっすらと目を開ける。
 それに気付いた城之内が、《遊戯》の顎に手を掛け、真正面にむけさせる。
ドクン・・・。
 《遊戯》の心臓が大きく鼓動を打った。
 外は闇。
 夜ももう一層深くなって夜景であったはずの光もそう見えなくなった空。
 ぼんやりと移る部屋の光は、大きな窓であったハズのガラスを鏡へと変化させていて。《遊戯》は目の前に移る、城之内を銜え込んだまま揺さぶられる自分自身と目が合った。
「な・・や・・!! 城・・こんな・・の!!」
「うっく・・!! そんなに・・興奮したか?」
「ば・・バカッ!! 電気・・消せ・・!!」
「やだね。」
「おねが・・こんなの・・ダメ・・あ・・う・・」
「だって、お前がまだ足りないって・・」
「ちが・・は・・ああッ!! 」
「愛してる・・・」

 あますことなく愛されて。
 それからも何度となく求められて。
 どんなに求めても足りなくて。
 けれど、とても幸せで。
 夜があけた頃、ようやく開放されて―――



「そう。よかった。喜んでもらえて。」
 後日。
 学校であの日の事に礼を言われた遊戯がにっこりと笑顔を向けた。
「あのあと、もう一人のボクにさんざんくすぐられて大変だったけれど。でも、彼も嬉しかったみたい。」
「そっか。・・あ、ところでよ。」
「ん?」
「あんな高いホテル・・。ホントに大丈夫なのか?無理してたんじゃないいだろうな?」
「ああ、大丈夫だよ。海馬クンがね、一日何でもゆう事を聞くなら、一泊10万の所を5000円にしてくれるって。ボク、どうしてもキミたちに楽しんでもらいたかったから・・。」
「な・・なんだってえ?!」
『そ・・その条件を飲んだのか!!』
「・・だからキミたちが楽しんで来れたんでしょ? 大丈夫だよ。海馬クンのことだからきっと、荷物持ちとか、部屋の掃除とか、そういう雑用をさせるつもりなんでしょ。」

「だ・・ダメだ!!」
『そうだぞ!! やめろ相棒!! 何されるかわかってるのか?!』
「だからあ・・」

「遊戯、今日は例の約束を守ってもらうぞ」
「海馬クン。うん。じゃあ、今日はお邪魔するね。」
 つい、と遊戯の顎をすくって、海馬は品のよろしくない笑みを浮かべて
「ああ・・。ゆっくり・・な」
 などと言って去って行く。
 凍りついている《遊戯》と城之内が、思考を元に戻した頃。
 二人揃って




――― 遊戯をどこかに隠さねば!! ―――


と、思ったのは言うまでもない。





☆あとがき☆
おつかれさまでした。
以前のは暗かったので、今回は前よりは明るくしてみました。
この中の遊戯と《遊戯》はラブラブな双子の兄弟って感じですか。(恋愛じゃないです)
遊戯は自分のことには疎いです。ので、最後はこんな感じでしめくくりました。
ガラス窓って、外が暗いと電気の点いてる部屋の中が丸見えだな―・・と思いついてまたもや勢いに押されてかいちゃいました。文章がへろへろですみません。


☆謝辞☆
藤原さん!!! 本当に本当にありがとうございます!! 読んでる間中顔が、にやけっぱなしでした!!(←阿呆や)
遊戯くんの粋なプレゼントも、本当に互いを堪能し合えた二人も、無茶苦茶幸せです〜〜〜vvv
ラストのさり気に――海表モードも、ちょっと嬉しかったり♪ 必死に止めようとする裏くんと城之内に、何も気付いてない
能天気な遊戯がツボでした。後、文の行間とか色々いじってしまったんですが、それからタイトルも勝手につけてしまって……。タイトル、こっちが正式だと言うのがありましたら、是非仰って下さいませ。速攻で直します〜(汗)
本当にありがとうございました!!

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