君への想い 作:妃凪 亨 |
『ねぇ、もうひとりのボク?』 「なんだ?」 不思議そうな響きで問いかける遊戯に、裏遊戯は無表情なままに答えを返した。 目の前には城之内がなんとも言い様のない顔のままに固まっている。 『どうしてパズルを外すの? ボクこれじゃ何も見えないよ……』 パズルを外そうと鎖に手をかけていた裏遊戯は顔を僅かに引きつらせた。 「み…見なくていいから外すんだ……。相棒はおとなしく寝ててくれよな……」 少し喉に声を絡ませながらも答えている。 その頬は赤かった。 「? ………っ!」 遊戯と会話しているのに気付いた城之内が体をもがかせて裏遊戯の体の下から這い出ようとした。 そう、今城之内は裏遊戯に押し倒されているという、言わば、真最中なのだ。 そんな時にすら裏遊戯は遊戯と会話を始めたのだ。 城之内に逃げるなというのが無理ではないだろうか? 「……も、ヤメっ、やめだっ!」 恥ずかしさからか真っ赤に染まった顔で怒鳴る。 「………キミはやめたくないだろ? こっちはそう言ってる…」 「…ぅっ!」 服の中に入り込んでいた右手は突起を無遠慮に掴んだままだった。 さらに移動し中心まで握り込まれ城之内は息を詰まらせた。 左手は未だ胸のパズルを握りしめているというのに、もうひとりの遊戯が見ている というのに……。 「ゃっ……、イヤだっ! んな、恥ずかしー真似、死んでもできるかぁ……っ!」 絡みつこうとしている裏遊戯の手を必死で掴んで涙ぐんだ瞳で裏遊戯に訴える。 「………な、城之内くんもこう言ってるし、諦めて相棒はしばらく部屋にいてくれ」 裏遊戯にも切なそうに訴えられては、遊戯とて断ることはできない。 『ちぇ………仕方ないね……。』 どこか残念そうにして、遊戯の気配は消えた。 裏遊戯かほっとしたように息を継ぐ。 「さぁ、城之内くんこれでいいだろ? 相棒には部屋で寝てもらうように言ってあるし、 パズルもこの通りに外したよ」 逃げをうつ城之内の身体に両手を絡ませて捕まえながら、耳元に囁きを吹き込む。 城之内は首を竦ませたが、それ以上逃げようとはしなかった。 「………あっ…は…っ」 微かな声を漏らし、思ったよりも甘い自分の声に城之内は赤い顔をさらに朱に染め、 口元を手で塞ぐ。 「駄目だよ城之内くん。もっと声出して。今日はオレたち以外誰もいないんだから……。 相棒だって、気を利かせてくれたんだから…、キミも我慢しなくていいんだ……」 「……はっ…、気を……っ!」 「……ん?」 大切な部分を絶えず煽られ、城之内が何か言おうとするのだが声にできない。 その耳元に裏遊戯が口付けた。 甘く啄み息を吹きかけながら問いかける。 「………っ!」 城之内は痺れる感覚に小さく退け反った。 「……なに?」 ぬる…っと耳朶に舌を這わせながら囁く。 「……っ、ふぁっ。ゆう…ぎに…気をつかっせ……のは、おまっ…の方じゃ……あぁ!」 「………ああ、そうしないとキミが嫌がるからな?」 頬を染めて身動きする身体を押さえ込みながらも、途切れ途切れに訴える城之内の 言いたいことを読み取り、裏遊戯は顔に深い笑みを刻む。 恥ずかしがるのは自分も同じという処は完全に思考からは外している。 「……んっ…あっ、ゆ…遊戯…っ!」 深くへと潜り込んでくる指に城之内が引きつった声を漏らせる。 圧迫感と痛みに身体を強張らせる城之内を、ゆっくりと慰めながら解き緩めていく。 「……ん…、オレももう……城之内くん……イイ…か?」 催促する裏遊戯の声が、直接頭の中にまで侵入してくるようだ。 熱を持った裏遊戯の声が城之内の頭の中で幾重にも反射して回る。 「いっ、いちいち……聞くなぁ!」 首を振るのが城之内には精一杯の答え。 一声叫ぶと、俯せになり掴まっている枕に顔を埋めた。 顔中を朱に染めて震えながら、しかしその全身で裏遊戯を待っている。 でもそんな心の声を口に出すことは、城之内には恥ずかし過ぎてとてもできない。 「…………フ」 城之内の反応に、裏遊戯の笑みがますます深くなる。 よくよく考えれば、この方がもっと恥ずかしい行為の筈なのに城之内は気付かない。 ただ、身体中を駆け巡るこの堪まらない熱を何とかして欲しかった。 向けられた背筋に唇を落とす。 綺麗に反り返ったラインを辿る。 「……んっ……、焦らすんじゃ……ねっ」 掠れる声で微かに呟かれた言葉。 しかし裏遊戯の耳には聞こえた。 自分を求める城之内の声……。 「………うぁぁ…っ!!」 自分よりも広い肩を引き寄せながら、裏遊戯は城之内をゆっくりと貫いた。 気遣いながらも奥へと進んでいく。 「……ふぁ……く…ぁぁ…っっ!」 自分を満たす熱に城之内は濡れた声を上げた。煽られて瞳が焦点を結ばなくなる。 「………あぁっ!」 甲高い悲鳴を放つ城之内を強く抱き締める。 「……克也……克也……っ!」 何度も揺さぶりながら囁く。 城之内が正気の時には絶対に呼ばない名前。 こうして自分のモノだと確信できる時にだけ口にする名前。 自分の事も未だ分からない裏遊戯には、思いを籠められる時は……今しかなかった。 城之内の鼓動を一番強く感じられる、一つになれるこの瞬間しか。 理性をなくし絡み合う二人を、月の光に反射されたパズルの光が照らし出していた。< ベッドに突っ伏したまま起き上がれない人影が一つ。 「いっ……てぇ…」 上半身を起き上がらそうとして、走り抜けた痛みに城之内は零れる悲鳴を押さえた。 心配そうに裏遊戯が見守っている。 「………大丈夫か、城之内くん…?」 「………ノド、いてぇ……」 「ああ、水だな…?」 身動きできない城之内に水を差し出す。 甲斐甲斐しく世話をする裏遊戯を、少し恨めしげに城之内が見上げた。 「……誰のせいでこんな目に遭ってると…」 空になったコップを渡しつつぼやくように口にすると、途端に裏遊戯の表情は哀し気 に歪んだ。 「……すまない、夕べはすこし手加減できなかった……」 「お前でも、嫉妬したりするんだなー」 「………嫉妬…? 分からない…」 呟いた城之内に、裏遊戯は俯く。 そんな感情は知らない…。 「でも、オレ言ったよな…スキ……なのは、その…お前なんだって……」 「……ああ」 遊戯を…パズルを外してまでも城之内を求めたのは、裏遊戯の中に強い不安が渦 巻いていたからだ。 「……信じろよ?」 「もちろんキミのこと信じてる……。」 答えながらも裏遊戯の態度は変わらない。 城之内が自分を好きだと言っている心を疑う訳ではない。 ただ、昼間学校で見た光景が頭から消えなかっただけだ。 理由は他愛ない事。 城之内がクラスの女子と話していた。 ………ただそれだけの事。 そして、それがひどく似合いだと思ってしまったということだけ。 城之内は自分を好きと言ってくれる。 ………でも。 姿を見た時の不快感と、それ以上の不安は消えない……。 深く項垂れる裏遊戯に、城之内は困ったように首筋を掻いていたが、ゆっくりと立ち 上がった。 まだ痛みが退かないのか、時折辛そうに顔を歪める。 裏遊戯の前まで移動すると、細い肩に両手を置いた。 ビクリと震えたのを気が付かない振りをして、顔を覗き込んだ。 真っ赤な顔で裏遊戯の瞳を見遣る。 「……あのよ、いいか? 遊戯…男が男に抱かれんだぜ? それなりの覚悟がないと >許せネーヨ……オレはもうひとりの、遊戯だから……その……許したんだし……あ…」 語尾は恥ずかしげに細って消えた。 だが、裏遊戯はようやく浮かべた笑顔で城之内に口付けた。 「………そんなこと、とっくに分かってたさ。それに…オレの方が、きっと君より……」 囁かれた言葉に城之内は全身朱に染まった。 城之内が濁してはっきり口にできなかった言葉……。 辛うじて微かに裏遊戯に届いた告白。 返した裏遊戯も同じ言葉を城之内に送ったのだった。 …………愛してる。 …………もっと愛してる。 『……やっぱ観てない方がよかったかなぁ? ボクも海馬くんの所遊びに行こうっと ………あてられるってこの事かな? 何だかほんとに暑いや…』 机の上のパズルの中の、小さな小さな呟き声。 聞き取るものは誰もいなかった。 * 了 * |
☆あとがき☆
ハ…ハズカシイ……vvv
またしても裏……いや、今度は狙って
書いたんだけどね……(←おいっ!)
…この前送った裏くんラスト発言にヒナトちゃんより
「見られたくなけりゃ外しゃ(パズルを)いいじゃん!」
という突っ込みを受け、んじゃいっちょ外してみよっかーと……。
表君っ、何故にパズル外れてんのに外見えてんのよぅっ!?(愕然)
という突っ込みをいれつつ出来ました。
一応、今度はラヴラヴな二人を書いてみようかナと
……思ったんですが……恥じかしいですねー。
しかし結果は、ウチの表君(!)は強かった……(←なんでやねん!/涙)
ヒナトちゃん結局パズル外しても表クンデバガメでしたよ…。
(デバカメって死語?)
ますます強くなる表クンをなんとかして……(汗汗)
どうして裏行きはこんなに早いんだろう…?
二時間あまりしか時間かかってません…(死)
ども皆様御目汚しでした……。
後書きまたしても長っ!
☆謝辞☆
ありがとう♪
いやーん、ラブラブじゃん!
裏くん、カッコ良い!! これは、裏さまか?
でもでも、ヤキモチ妬くなんて、可愛いとこもあるし。
克っちゃんも、好きって言ってくれたし。
言うことなしねー♪
でも、ホント、まさか、こんなに早く第二弾を頂けるとは!!
表の方も、頑張ってくれたまえ!