DART
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あんたいいかげんにしてよ。
3000円でキスをする。
あたしは30000円がよかった。
結局どうしようもなかった。
本当はタダでよかった。
ただのあたしの既視感だった。
そんなのは知ってた。
そんなのは解かってた。
ただ胸が痛かっただけ。
知ってる、この気持ちに身を任したら、
どうなるか。知ってる。
いつもどおり。
ただ今回は、相反するもう一つの気持ちがあったから。
何もならなかったけど。
久しぶりの恋に、あせった。
恋をすると、バカになる。
ちょっとした恋愛運ニュース、雑誌についてる恋愛の記事、
バカみたいに気にする。
それはとてもかわいいことだけれど。
あいつのためにバカになんかなりたくなかった。
あたしには他にいるのに。
もっといい男が他にいるのに。
なんでただの既視感なんかにあたしは振り回されるの。
別にあんたがあたしになにかしたんじゃない。
あたしの中の種が、暴走しだしただけ。
気持ち悪い。
吐き気がする。
あたしはあんたなんか好きじゃない。
気持ち悪い。
鳥肌が立つ。
前の恋は、すぐに去った。
時間が、私の恋の種をもっていった。
ただ時間が過ぎただけ。
恋焦がれても、会えないと、種が発芽しないと。
腐る。
そういう風に私の心は出来てる。
だから、今日あいつに会いたくなかった。
会わなかったら、こんな気持ちすぐに消えると知ってたから。
今日一日、あいつの顔を見るたびに自己嫌悪。
嗚呼、なぜこんな試練が。
嗚呼、なぜこんな事に。
嗚呼、あたしの頭はおかしいのではないだろうか。
あたしの胸にDARTがささる。
痛い。
甘い痛み。
相反して、
激痛。
吐き気。
自我が崩壊しそう。
遊んでるんじゃないの、気持ち悪いの。
楽しくていってるんじゃないの。
イヤなの。イヤなの。
あたしが好きなのはあんたじゃない。
だけど、
それも、もう、去った。
あたしの一日の恋は終わった。
既視感。
怖い錯覚。
私の話を聞く人は、
「・・・ふーん・・・。」
ただそれだけ。
でも私は思う。
もし私の立場に、あなたがたったなら、
あせるから。
絶対あせるから。
絶対に好きじゃない人間を、
好きになってしまったら。
今までの自分が何だったのか、
解らない。
しかも、錯覚。
恋の錯覚。
錯覚とわかっていても。
錯覚から始まる恋があることを知っているから。
その錯覚を、笑い飛ばすことは出来なかった。
気持ちが悪かった。
ふと、一日で去る恋とわかっていたら、
その感じる情熱のままに、
身をまかせれてみればよかったと、思ったけれど。
もし笑い飛ばしたら。
真剣に受け止めなかったら。
うっかり、愛してしまいそうだった。
そう、恋じゃなくて。
愛してしまいそうだった。
好きじゃなくて。
愛してた。
でもやっぱりあたしは、あんたにじゃなく。
他の男にDARTを刺すよ。
一日だけ。
あせったけど。
あたしにDARTは刺さっていた。
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