マックでGO! 1
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低段者の対局日。お昼の休憩時間、ヒカルはマックにいた。
今日は愛するアキラも一緒だ。
「なぁ、お前ホントに何にも食わねーの?」
ヒカルの問いに、こくり、と頷くアキラの手には、F永武彦の文庫本。
どうやらそれを読みながら時間をつぶすつもりらしい。
「…進藤、それは一体…」
アキラの顔色が変わる。
「フランクバーガー。このフランクフルト好きなんだよなー。
塔矢も一口食う?」
「ふざけるなッ!」
──ガタッ。
アキラは勢いよく立ち上がった。
「フランクフルトよりポークビッツだろう!」
全身から青白いオーラを湯気のように立ち昇らせ、
アキラは拳を震わせた。
「…チーズ入りミニウィンナーも捨てがたいが、加熱すると先から
チーズがにじみ出てリアルすぎるのが難点…ゆえにポークビッツ…
…ポークビッツは成長過程のボク達に一番相応しいウィンナーなんだぞ!
それを差し置いてキミはッ!」
「わ、悪かったよ!」
「わかればいいんだ…取り乱したりしてすまなかった」
何事もなかったかのように平然と本を読み出すアキラを横目に、
生涯の相手を選び直したい衝動に駆られたヒカル、
15歳の春の出来事だった。
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