Birtday Night 1
(1)
窓の外では雪が降っていた。
ボクは一人、自分の部屋で、棋譜並べをしている。
両親は海外へ出かけていて不在。
「一緒に誕生日を祝って上げられなくて、ごめんなさいね」
出かける前の母の言葉。
「いいよ。もうボクはそんなに子供じゃないんだし」
笑った僕に、
「あら、誕生日に大人も子供も関係ないでしょ。
自分が生まれた日を祝ってもらえるのはいくつになっても嬉しいものよ」
そういうものだろうか。
生んでくれた母には確かに感謝はしているけれど、
誕生日がそんなに特別なものだとはボクには思えなかった。
お昼過ぎ、碁会所に行くと、市河さんを始めとする碁会所のお客さん達が、
ボクの誕生日を盛大に祝ってくれた。
「お誕生日おめでとう、アキラくん」
「若先生も立派になられましたなぁ」
「次の誕生日までには、ぜひともタイトルの一つでも…」
わざわざ特注の豪華なケーキまで用意してあって、ボクは素直にお礼を言った。
「ありがとうございます。これからも頑張ります」
芦原さんと緒方さんは今日は地方に遠征に行っているらしく、
「プレゼント、あずかっているわよ」
市河さんに手渡された。
芦原さんからは万年筆、緒方さんからはブランド物のネクタイ。
「何だか、あの人達らしい贈り物ね」
市河さんが笑っていた。
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