Hope&Wish 1
(1)
北斗杯が終わってしまった。
進藤と社は負け、ボクは…ボク一人だけが勝ってしまった。
進藤の泣き顔を見たのは初めてだった。
下手な慰めは、よけいに彼を苦しめることになるだけだろう。
「これで、終わりじゃない。終わりなどない」
精一杯のボクからの言葉だった。ボクは冷たい人間だろうか。
表彰式が終わり、各自荷物をまとめてホテルを引き払う。
社は新幹線で大阪に帰り、ボクもそのまま自宅に戻るはずだった。
進藤に呼び止められるまでは――。
「塔矢」
まさか彼のほうから声をかけられるとは思わなかったので驚いた。
そして続いた言葉は予想外のものだった。
「このまま、二人でどこかへ行かないか」
現実感のともなわない声。何でもないことのように彼が云った。
「いいよ…」
ボクはそう返事を返していた。
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