Shangri-La第2章 1


(1)
「なにこれ…」
ヒカルは手を止めて呟くと、アキラから身体を離した。
あるはずだったヒカルの身体が離れ、代わりに空気がさらりと尻を撫でる。
熱を持った身体ではそれは殊更に冷たくて、身震いしながら
アキラはうつ伏せでシーツに埋めていた顔をずらし、ほんの少し振り返った。
「え……、進藤?」
ヒカルは無言で、もう下着を着けていた。アキラは慌てて身体を起こした。
「進藤、なに?どうしたんだ?」
ヒカルはむっとした表情でアキラを避けるように顔を背け、服を着終えた。
「ちょっ…、何で途中で止める?進藤?」
答えようともせず玄関へと向かったヒカルを、アキラは何も着けないまま
慌てて追いかけ、玄関で靴を履くところで捕まえた。
「進藤?何も言わなきゃ分からないじゃないか?どうしたんだ?」
ヒカルはやっと振り返った。
「じゃぁその背中は何なんだよ!信じらんねぇ。もう二度と来ねェよ!」
――え?背中…???
アキラが逡巡している間に、ヒカルは塔矢邸を飛び出していた。
訳も分からぬまま、アキラはヒカルの言葉の真意を確かめようと、母の鏡台へ向かった。
三面鏡を開いて、見たものは――――新雪に滴り落ちた血の雫。
あるいは、白い薄絹の上にむしり散らされた寒椿の花弁――



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