白と黒の宴2 1
(1)
北斗杯の選手が、今日決まる。
洗面台の前に立ち、身支度を整えながらアキラは鏡の中の自分の顔を見つめる。
うっすらと目の下に隈が出来ている。顔色が悪い。ひどい顔だと思った。
緒方とはあの日以来会っていない。電話すらない。
冷たいようだがどこかでホッとしている自分がいる。
いや、そもそも本気で相手にされていたはずがないのだ。彼は自分より遥かに大人なのだ。
あいつが、社が東京に来ている。
フッと笑みがこぼれた。皮肉なもんだと思った。
社から守って欲しくて、庇護を望んで緒方と何度も関係を持ったのに直前にその
肝心のボディーガードに去られてしまったのだから。
ヒカルと二人で会っていた事で、自分が本当に好きな相手は他にいながら目的のために
体を差し出したのだと緒方に知られてしまった。
どんなに軽蔑されても仕方がない。それだけの仕打ちを自分は彼にした。
エサを与えるようにして彼に抱かれたのだ。
そしてそういう意識がありながら彼の体の下で自分自身も何度も喘ぎ、悶え、到達した。
両手を縛られて緒方に支配され責め抜かれた時のあの、自分の体が溶けて無くなるのでは
ないかと思えた程の快感が忘れられない。
恐らくもう緒方以外の者にはあれ以上の感覚を自分に与える事は出来ないだろうと思いつつ、
いつかまた自分の体がそれを強く求め始めるかもしれない。
時と相手を選ばずに。ぞくり、と体が震えた。
そうなった時に自分の意志で自分を抑える自信が、アキラにはなかった。
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