バレンタイン 1
(1)
店の中にたくさん残ってしまったチョコレートをどうやって片付けようか迷いながら、
俺はおでんの具を保温機の中に突っ込んでいった。
本来なら俺の当番の日ではなかったが、俺は敢えてこの日にバイトを入れた。
――アキラたん、金曜日は…
――あ、手合いと取材が入ってます。
あっさりとした、火曜日の会話が思い出される。
男同士でバレンタインなんておかしいのかもしれないが、俺はアキラのために
ちゃんとチョコレートを用意していた。
そして、1980円のと散々迷って買った2980円の手袋も。
それら全てを否定されたような気がして、俺は内心で拗ねた。
――そう。奇遇だね。俺もバイト入れたんだ。
強がりを言った俺を不審がりもせず、アキラはそうですか、とまたまたあっさりと
頷いたのだった。
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