通過儀礼 覚醒 1
(1)
「アーキーラーくん、あーそーびーましょ」
玄関から幼稚園の友達の声がして、アキラは顔を上げた。
「あ、たかしくんが来た。お父さん、ボク遊びに行くね」
アキラはそう言うと、対局後の検討もそこそこに出かけようとした。
「待ちなさい、アキラ。まだ途中だぞ。遊ぶならこれが終わってからにしなさい」
「でも…」
アキラは俯く。
「あなた、囲碁が大切なのはわかりますが、お友達とのお付き合いも大切なのですよ。そ
れにもうずっと対局していたのだから、そろそろ開放してあげてもいいじゃないですか」
困り果てているアキラの頭をなでながら、明子はそう言った。
「いかん。どんな理由であれ、小さい頃からそう甘やかすのはよくない」
行洋はそう言ってアキラに座るよう指示する。アキラは仕方なく元の場所に戻った。
「まったく困ったわね。本当にアキラに甘いのはどちらかしら」
明子はため息をつくと、たかしにまたあとで来きてもらおうと頼みに玄関へ行こうとした。
だがまだ幼い遊び盛りのわが子がかわいそうになって、明子はちょっとした嫌味を言った。
「アキラと離れたくないのはわかりますが、そのようなことをしていたら、いつかアキラ
に嫌われてしまいますからね」
それに行洋の眉はピクリと上がった。
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