アキラとヒカル−湯煙旅情編− 1
(1)
「いい部屋だね」
窓から外の渓流を眺めていたアキラが振り返る。
「気に入ったか?高かったんだからな〜!」
「だからボクも払うって言ってるのに。」
「いいよ、オレが全部払うの。」
「なんで、君が払うのさ。」
「るせーな。」
大人の男だったら部屋の料金の高い低いなどと口にしないものだが、ヒカルはアキラとの初めての旅行にどれだけ自分が奮発したかを言いたくてたまらない。
それだけこの旅行に気合を入れているということなのだが・・・。
塔矢からの告白を切っ掛けに付き合い始めて早3ヶ月が立とうとしているが、二人の恋人関係はまだぎこちなく、デートらしいデートをした事もない。
いつもの碁会所で打った後、別れ際にするキスがイベントに追加されたぐらいだった。
それも自分よりもちょっと背の高い塔矢がリードしている・・・ヒカルにはそれが不満だった。
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