残像 1
(1)
「いつかおまえには話すかもしれない」
そう言ってくれた彼の言葉を、もう一度頭の中で繰り返す。
「いつか」「かもしれない」なんて、中途半端で確かさの欠片もないそんな言葉を。
そんな日がくるんだろうか。
そしていつしか、気付いたらボクは、saiについての謎を知りたいという事よりも、彼がボクに
秘密を打ち明けてくれる、その事を待つようになった。
「ん…」
ヒカルの漏らす小さな声を察知して、アキラが目を覚ました。
「…さい……」
その名に、アキラは小さく息をついて、複雑な微笑を頬にのせて、ヒカルの寝顔を眺めた。
今日は、悲しい夢みたいだね、と、泣き出しそうな顔のヒカルに、心の中で呼びかけた。
ボクの隣で眠るキミの口からその名前を聞くのはもう何度目かな。
最初は…すごく驚いて、眠っているキミを揺り起こしてしまおうかと思ったよ。
今日みたいに泣きそうな時もあれば、本当に幸せそうに微笑ってる時もある。
キミにそんな顔をさせるなんて。ボクの隣で眠っているキミに。
― sai 。
彼(?)はキミにとって、いったいどういう存在だったんだ?
いつか、ボクに話してくれる日は、来るんだろうか。
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