初摘み 1
(1)
北斗杯の代表選手になった。ヒカルは、様子を見に来ていたアキラの元に駆け寄った。
今日の対局は、自分でも満足のいく一局だったのだろう。興奮さめやらぬといった様子で
アキラに話しかけた。
「塔矢!どうだった、オレ?…結構良かっただろ?」
少し得意げな屈託のない笑顔。誉めて欲しくてしっぽを振っている子犬のようだ。
そんなヒカルの腕を掴み、アキラは物も言わずに歩き出す。
「な…何だよ…どこに行くんだよ…」
連れて行かれた場所は、屋上だった。ヒカルの目には、アキラは怒っているように映った。
『何かしたっけ?』不安そうなヒカルをドアに押しつけると、アキラはいきなり唇を塞いだ。
突然のアキラの行動に、ヒカルは驚いて硬直してしまった。キスをするのは初めてではない。
だが、こんな激しいキスを受けたことはなかった。いつもは、触れるだけの軽いキスで
それ以外にキスの種類があることを、ヒカルは今初めて知ったのだ。強引に侵入してきた
舌がヒカルの口内を嬲った。
「あぁ…!やだ…」
顔を背けようとするヒカルの項に手を添えて、腰をしっかり抱えると身体全体で
のし掛かってくる。いつもと違うアキラの様子に、ヒカルは完全にパニックに陥った。
スッと身体を締め付けていた腕の力が弛んだ。
「ゴメン…でも…ずっと会いたかった…」
ヒカルの耳に唇を押しつけるようにして、アキラが囁きかけた。ヒカルは、ずいぶん長い間
アキラに触れていなかったことに改めて気がついた。アキラの背中に手を回して、「オレも…」
と小さな声で言った。
暫く、二人で抱き合ったまま動かなかった。
「進藤…ボク、誕生日のプレゼントまだもらっていないよ…」
アキラがヒカルの頬にキスをした。それがどういう意味なのか、ヒカルにはすぐにわかった。
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