平安幻想異聞録-異聞- 1
(1)
「恨むなら、佐為の君を恨むがよろしい」
男達に押さえつけられ、狩衣をやぶられて、ヒカルは歯噛みした。
事の起こりは、日も落ちて、あたりも暗くなりはじめる頃。
一日の仕事を終えたその帰り道。
近衛ヒカルが竹林の前を通りすがった時だった。
突然、道の脇から飛びだした男達に囲まれた。
しかし、これが普通の野党であったなら、話は簡単だったのだ。
ヒカルとて年若いとはいえ、都を守る検非違使の役職を務めあげ、
ましてや、かの佐為の君の護衛にまで抜擢された身――剣の腕には覚えがある。
一太刀に切って捨てていたはずだ。
実際、ヒカルは複数の影が周りを取り囲んだ瞬間に太刀を抜き放ち、
流れるような一動作で、すぐ左側に立つ男をけさ懸けに切ろうとしていた。
その腕が止まったのは、その男達の後ろから現れた2人の人物に気をとられたからだ。
「座間様…、菅原様…」
そして、その一瞬の躊躇が命取りになった。
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