誕生歌はジャイアン・リサイタルで(仮題) 1
(1)
突然祖父から呼び出しの電話があった。用件は言わずただ「いいから来い」と言うだけである。
だが、ヒカルには用件の見当がついていた。今日はヒカルの誕生日なのだった。
(どうせ、じーちゃんとばーちゃんでいきなりプレゼントを渡して、驚かそうって魂胆なんだろ)
その時は素直に驚いたフリをしてやろう、と決める。嬉しさとくすぐったさで、笑いがこみ上げてきた。
到着した祖父の家では、祖父母の他に幼馴染みの藤崎あかりが待っていた。
「ヒカル、誕生日おめでとう!」
そう言って差し出されたのは、手作りのケーキだ。小さな砂糖菓子の碁石まで乗っている。
「今日はあかりちゃんに頼んで来てもらって、一緒にケーキを作ったんじゃ、どうだ?驚いただろ」
「そんなこと言って。本当はほとんどあかりちゃんだけで作ったのよ」
胸を張って言う祖父に、祖母が笑ってからかう。あかりははにかんだ笑顔を見せた。
「そんな・・・あ、でもヒカルのおじいちゃんが碁石を作ってくれたの、すごいでしょ?」
「ハハハ。しかしヒカル、あかりちゃんは料理上手だし、良いお嫁さんになるな。わしゃ嬉しいわい」
「も、もう!何言ってるんですかあ!そんな…ねえ?ヒカルも何か言ってよー」
祖父の冗談とも本気ともつかない言葉に、あかりは真っ赤になってしまう。
それまで黙っていたヒカルは、3人とケーキを交互に見比べると、照れたように俯きながら口を開いた。
「じーちゃん、ばーちゃん、あかり…どうもありがと、オレ…マジで嬉しいよ」
心から感謝して笑うヒカルに、3人とも安堵して嬉しそうに微笑んだ。
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