大人遊戯 1


(1)
立春を過ぎても相変わらずの厳しい寒空、北風に背中を押されながらアキラは道を急ぐ。
アキラは昨日中学受験は終えたばかりで後は合格発表を待つだけなのだが、それは心配していない。
今彼の胸の中を占めているのは、最近知り合った進藤ヒカルの事ばかり。
先日見たヒカルと海王中三将の対局…あの美しい棋譜を目の当たりにした感動だけじゃない。
そのずっと以前から、そう、出会った瞬間からアキラにとってヒカルは特別だった。
彼の囲碁に、そして彼の眼差しに、惹かれていく自分をアキラは止める事が出来なかった。
(ボクは、進藤くんが好きなんだ)
そう気付くのにさして時間はかからなかった。彼の姿をみとめただけでときめく心を自覚していた。
受験が終わったらヒカルと会う約束を取り付けた。それが今日。彼の家に初めて訪問する。
今日こそ彼の特別になる、そう決意していた。寒さと緊張と興奮でアキラの頬は真っ赤に染まった。



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