りぼん 1
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オレ、12月14日が塔矢の誕生日だなんて知らなかったんだ。
だから塔矢の碁会所に入ったとたん、パンパンッ! てクラッカーの音がしたときは驚いた。
「アキラくん! 16歳、おめでとう!!」
市河さんが呆然としているオレを無視して、横に立ってる塔矢の手をつかむと中に引っ張り
込んだ。碁会所のおじさんたちがみんな塔矢のまわりに集まってくる。
「若先生、これプレゼントです」
「わたしもあります。どうぞ受け取ってください」
きれいにラッピングされた箱や包み、袋がつぎつぎに塔矢に渡されていく。
塔矢は照れくさそうにお礼を言ってる。
「ふうん、おまえ、今日が誕生日だったんだ」
「知らなかったのか」
北島さんが信じられないって顔して聞いてきた。オレは正直にうなずいた。そしたらすごい
目つきでにらまれた。
ちぇっ! こんなことくらいでそんな怖い顔しなくたっていいじゃん! 北島さんの誕生日
じゃないんだからさ。あ、塔矢のだから怒ってるのか。
「若先生の誕生日くらいチェックしといたらどうだ」
「いちいちそんなの気にしてられっかよ」
「そんなのとは何だ!!」
ひえ〜! こめかみの血管が浮き出てる。顔も真っ赤。なんか殺されそうな勢いだ。
「まあまあ、北島さん。せっかくのアキラくんの誕生日なんだから、そうカッカしないで。
ねえアキラくん、パイを焼いたのよ。食べてくれる?」
「はい、いただきます」
「あ、市河さん、オレも食べていい?」
なんて図々しいやつだ、って北島さんがぶつぶつ言ってる。
「進藤、おもしろい棋譜を手に入れたんだ。一緒に検討しないか」
「え? ああ、うん……」
塔矢の顔を見て、オレはちょっと不安になった。いつもと変わんないように見えるけど、
やっぱりオレがコイツの誕生日を知らなかったこと、怒ってるのかな。
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