初めての体験 Aside 番外 1
(1)
進藤が再びボクの碁会所に来るようになった。宣言通り北斗杯の代表選手の座を手に
入れての見事なカムバック。ま、予想通り。分かり切っていたことだけどね。コレで、
進藤との甘い碁会所デートを誰憚ることもなく、堂々と出来るわけだ。間近に進藤の
小さくて愛らしい顔がある。普段の無邪気さとは対照的に、碁盤を見つめる真剣な眼差しが、
セクシーだ。ああ、幸せだ。時間を止めることが出来たらいいのに……。
ところがボクの至福の時を邪魔する声がした。
「ヤレヤレ、また顔を出し始めたな…」
ボクの耳がピクリと反応した。また、あの人だよ……北島さん…。
北島さんはボクに過剰なほどの肩入れしている。ありがたいけど、彼のボクびいきは
少々度を過ぎていると思う。つーか、ウザイ。何でも程々がいいんだよ!お風呂だって
熱けりゃいいってもんじゃないだろう?熱湯風呂に唸りながら、入れるか!?アンタ、
江戸っ子か?(……江戸っ子だな…たぶん…)
とにかくボクは、ジジイに応援されるより、進藤に好かれたいんだ!
進藤は気付いていないのか、ボクをこき下ろすようなことを平気で言う。憎まれ口を
叩く進藤……超可愛い〜〜〜。その時、北島さんの目(あるのかないのかわからないくらいだが…
彼が進藤を嫌うのは、あの大きな目に対するコンプレックスでもあるんじゃないのか?)が、
キラリと光った。
「おい、進藤!おまえなんか本因坊戦は二次予選で負けたくせに!」
黙れ!!!北島!!!それ以上一言も喋るな〜〜〜〜〜〜〜!!!!!また、進藤が
来なくなってしまったら、あんた責任とれるのか!?ボクは、激しい動悸、目眩、息切れで
気が遠くなった。
|