初めての体験 Aside 番外・ホワイトデー 1


(1)
 ホワイトデーの今日、ボクは朝から台所で奮闘中だ。すべては、愛する進藤のためだ。
バレンタインデーに渡したボクの手作りチョコが、思いの外ウケたのだ。
「すごーくウマイよ。また、作ってくれよな?」
進藤は頬にチョコをつけて、とろけそうな甘い笑顔をボクに向けた。ボクはその笑顔に、
チョコフォンデュみたいにとろとろに溶かされてしまった。
 そして、現在、進藤のリクエストに応えるべくボクはがんばっているのだ。幸い本も
道具もすべてそろっている。全部お母さんがそろえたものだ。お母さん、どうもありがとう。
懺悔します。お母さんの作ってくれた夜食……………いつもこっそり処分していました。
ゴメンナサイ。
 だけど、お母さんのケーキ……歯が軋むほど甘いです。お父さんは、無表情ですが絶対、
嫌がっています。糖尿の心配をしているのがボクにはよくわかります。糖分の取りすぎは
体によくないです。動脈硬化になるし、そうなると心臓にもますます負担がかかります。
―――――ハッ………お母さん………もしかして狙っている?

 冗談はさておき、今は、お母さんのケーキよりも甘い進藤に夢中です。お母さんのコレクションは
最大限活用させて貰います。
 自分の食事はおざなりにしても、進藤のためにはどんな努力も厭わない。本当にボクの
生活は進藤を中心に回っているとしみじみ感じてしまう。



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