月明星稀 1


(1)
(月明らかに星稀なり)

月の美しい夜だった。
明るく輝く月を見上げて、ヒカルは感嘆した。
「ああ、今日の月は本当に綺麗だ。あんまり明るく輝くから、周りの星が見えないくらいだ。」
「月明らかにして星稀なりと?」
「…何?」
「昔の、言葉だよ。だがあまり良い例えではないな。」
小さく苦笑しながらヒカルを振り返り、アキラは続けた。
「月があんまり明るいから、星の光が消されてしまうということ。
ただ一人の為政者の力があまりにも強いので、民草の小さな一つ一つの輝きが押し消えてしまうと、
そういう意味だよ。」
それからまたゆっくりと、天を見上げる。
「けれどどれほど月が明るくとも、消されずに残る星もある。
そしてどんなに月が明るく見えようとも、日の光には敵いはしない。」
輝く満月を見上げて、自分に言い聞かせるように言うアキラを見て、ああ、まただ、とヒカルは思った。
時折、ふいに見かけるこの表情。
見ている方が胸が切なくなる。
誰の事を考えているんだ?アキラ。
誰の事を思って、そんな顔をするんだ?
おまえ、自分がどんな顔してるのかわかってるのか?
俺に…俺の前で、無防備にそんな顔を見せないでくれよ。
おまえのそんな顔を見ると俺は…俺の方が胸が痛んで、泣きたくなってしまう。



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