粒くらべ 1 - 18


(1)
「どちらがいい?」
アキラにそう問われてヒカルは弱々しく首を捻って後ろを見た。
最初アキラが手にしているものが何なのかよく分からなかった。
自室のベッドの上で、ヒカルは全裸で四つん這いのポーズをとらされすでにもう
アキラの舌や指によってかなりの時間をかけて体の奥の部分を
探られ弄ばれていた。
「塔…矢ア…」
限界が近づき、アキラ自身を早くそこに深々と埋めてくれるのを乞うように呼んだ時
アキラにそのニ者選択を迫られた。


(2)
「このままじゃわからないかな」
アキラはそう言うと、指人形を扱うように両手に持っていた
それぞれのモノを左右親指を除いた4本の指に被せて見せた。
一つは、真珠のような球状のものがランダムに生えたような、
もう一つは野菜のゴーヤのように無数の小さな粒ツブが全面に
生えた両方とも半透明のゴム製品のようだった。
「な、何…?」
「面白いだろう、コンドームでこういうのがあるなんて。一度進藤に
試してあげてみたかったんだ。…さあ、どちらがいい?」
ヒカルは涙目になってふるふると首を横に振った。
「ヤ、ヤだよ…」
そして赤くなりながら小さい声で呟くように言った。
「…生の塔矢がいい…」


(3)
当然それは予測していた答えだったらしく、アキラは満足そうににっこり
優しく微笑んだ。
「それはちゃんと後であげるよ。ただし、これのどちらかの後で…ね」
ヒカルは再度イヤイヤと首を横に振った。だが同じようにアキラも
首を横に振り、指に装着した真珠の粒状コンドームの先端をぺろりと舐め、それで
目の前に突き出されているヒカルの白い双丘の奥の紅色の谷間を
軽く掠めるように擦り上げた。
「ふっ…ん!」
そしてアキラは次にゴーヤ状のコンドームでヒカルの内腿の付け根を軽く撫でた。
その時一瞬秘門の入口をつんと突いた。
「ふあっ…!」
ただでさえ十分に熱を含まされ、焦らしに焦らされたヒカルのその箇所は
僅かな刺激にも耐えられないように蠢きヒカルは甘く声を吐いた。
「ボクが君のここに入るのには違いないよ…ただ、そこにちょっとした
オプションが加わるだけだ。…だから、さあ、選んで、進藤」


(4)
そんなオプションいらねえと思いながらもアキラの性格から決して
妥協は許されないと観念したヒカルは、怯えた目で交互にアキラの
両手の指人形を見つめる。
「…ゴーヤみたいなの、それだけは絶対ヤだ…」
ご丁寧に淡く緑色に着色されたそれはとてつもなくグロテスクなモノに見えた。
なにより全体にびっしり生える細やかな粒ツブさが恐かった。
あんなものを自分のお尻の中に入れられるなんて想像するだけでもゾッとした。
「わかった」
意外にあっさりとアキラはヒカルの希望を聞き入れ、ゴーヤ状のものは手から外して
脇にやり、真珠状の方を雄々しい自分の分身に丁寧に装着した。
そしてその先端をヒカルの後ろの中心に当てがった。


(5)
「待たせたね進藤…、行くよ」
ヒカルの腰に軽く手を添えるようにして、アキラがゆっくりと自分の分身を
ヒカルの中に押し入らせていく。
「ん…っ」
まず先端の滑らかな丸い部分が吸い込まれるようにしてヒカルの中に潜った。
なおもアキラは慎重に腰を進めた。最初の突起が鮮紅色の門に差しかかろうとしていた。
「あっ…んんっーーっ」
だだでさえ張り詰めたアキラのモノを飲み込むのにヒカルはかなり無理をしているだけに
その周囲の腸壁をさらに局所的に押し広げていく存在にヒカルはうめいた。
「あ…ひっ…あ…あ」
一つ一つ新たにその異物が狭門をくぐる度にヒカルは切なく声を漏らした。
まるでいくつもの爪に内壁を軽く掻かれながら奥に進まれていくような、
奇妙な痛みを伴う恐怖感があった。


(6)
一方で、奥に行くほどその淡い痛みと押し広げられる圧迫感が溶け合って、
今まで感じたことのない奇妙な感覚も生まれて来ていた。
やがて自分自身の全てをヒカルに飲み込ませると、アキラは静止した。
「すごい…、進藤の中、いつもより熱い…ドクドクいっている」
確かに緊張感でいつもよりさらに感度が増しているようなところはあった。
「…もういいだろオ…、早く抜いてよ…っ」
ヒカルにしてみれば何かゴリゴリして小石を詰められているようで
落ち着かなかった。やはり、もっと滑らかで優しい感触が欲しかった。
そうでないとイけない気がしたのだ。
「ダメ?あまり気持ち良くない?」
「いいわけないだろっ、こんな…」
ヒカルが怒ってアキラに言い返そうと身をよじった時だった。
「…んっ…」
内部で密接した粘膜と数多くの突起らが一斉擦れ合う刺激が走ったのだ。


(7)
「どうしたの?進藤…こうしたほうがいいのか?」
嬉しそうに笑みを浮かべながらアキラはゆっくりと腰を揺らし始めた。
「あっ…ひっ」
びくんとヒカルが背を反らした。カタカタと小さく肩が震えた。
再び何本もの爪に内部を一斉に掻かれるような感覚が走った。
すると次にアキラは腰を引いてそれを抜きにかかった。
「あーーっ…!」
奥から出口にかけて何本もの爪が同時に腸壁をなぞり、抜けかかったところから
再度アキラが侵入を始めると今度はそれらが内部に向かって走り出す。
次第にアキラがその動きを速めていく。
「とっ、塔矢…っ、ダメ…っ」
ベッドに顔を突っ伏してヒカルが首を必死に左右に振るが、ヒカルの腰を抱えた
アキラの動きは更に激しくなっていくばかりだった。
「ヤだっ…あっ…、熱い…っ…熱っ」
爪で掻かれている一つ一つの箇所が火を放ってヒカルの内部を焼いた。
「うあーーっ…」
その炎が一つの塊になって火柱のように膨らみヒカルの内部を炙った。


(8)
「はふっ…ふうっ…ん、んっ…」
もうアキラに揺さぶられる毎に鼻に掛かる吐息しかヒカルは出せなくなっていた。
最後に数回アキラが音が出る程強く腰を打ち付けヒカルの中を抉ると
「うううーーーーっ…」
一瞬更に大きくヒカルの背が仰け反り、次に全身が震えて前方に崩れ落ちた。
下腹部の奥が溶けるように熱かった。荒く呼吸をするヒカルの背中一面が汗ばみ濡れていた。
「凄いね、進藤…。全然前に触っていなかったのにイケたんだ…」
感心するようなアキラの言葉にヒカルの全身がカアッと赤く染まった。
今まではいつも自分の中にある特殊な場所があって、それとアキラのモノの
一部分が触れあうのが気持ち良く、他の大部分はあまり感覚がないと思っていたのだが、
今回のように内部のいろんな箇所を同時に強く刺激された事で一気に何かが
爆発するような強い衝撃があった。
まだ興奮が冷めずに激しく脈動しているヒカルの体内から、アキラは自分を一気に引き抜いた。
「う、あっ…」
最後の爪の一掻きにヒカルはびくりと腰を震わせた。
その時、正直、もう一回くらいいいのに――という物足りなさがあった。


(9)
それでもアキラがコンドームを外すのを見て、そうだ、今度はアキラのが直に来るんだと
思い直し、ヒカルは頬を上気させて体を仰向けにし自分で膝を抱えてアキラを待った。
さっきの激しい熱が自分の中で蠢いている。それを鎮めて欲しかった。
次の瞬間ヒカルは小さく悲鳴をあげた。
アキラがゴーヤ状のコンドームを装着しているのを見たからだ。
「やっ、ヤダよっ…!」
ヒカルはアキラに向けて開いていた脚を閉じ、両手で膝を抱え込んだ。
「せっかくだから、こっちも試してみようよ。さ、進藤、いい子だから」
「…ダメ…絶対ヤだ…っ」
ヒカルは首を左右に振り身を縮こませた。
「でも、君のここは…試してみたいって言っているよ。ほら」
仰向けに膝を抱えている進藤の閉じ合わせた腿の谷間を指でそっと撫でながらその
熱を持った中心に押し込むと、そこは一気にアキラの指を吸い込もうとして
直ぐにアキラは指を引き抜く。
次にアキラが無数の粒で被われた自分のモノで同じ場所を突いた。
「…ヤ…だ…っ」
ざわざわとブラシのようなもので撫でられている感じにヒカルは腰を引いた。


(10)
ヒカルは抗議の眼差しでアキラを睨むが、アキラはそれでも優しい笑顔を浮かべ、
膝を抱えるヒカルの両手をそっとそこから外させ、両足首を掴んで左右に開かせた。
その中央にあるヒカルの分身にうす緑のグロテスクな物体がぴたりと押し当てられた。
「ヤだってば…塔矢ア…」
ほとんど涙声でヒカルはアキラに訴えたが、さわさわとアキラにまだ今熱を吐いたばかりで
熱っぽく喘いでいるヒカル自身をうす緑の物体でざわりと触れられる度に、ヒカルの体の
奥深くが疼いた。
ヒカルの肉体自身がそれを拒否し切れず、アキラにその事を見抜かれていた。
「大丈夫…少し入れてみて、本当に進藤が嫌だと思ったら直ぐに止めるから」
「…絶対に…?」
アキラはこくりと頷いた。今までの経験で下手に突っぱねると彼を怒らせてしまい
かえって酷い事をされるハメになるのをヒカルは怖れた。
「じゃ、じゃあ…先っぽだけ…それ以上は絶対ダメだからな」
「わかったよ。もっとここ…開いて…」
アキラは更にヒカルの両膝を開かせて胸に突かせる程体を折ると、粒ツブに被われた先端を
ヒカルの中央に宛てがった。
「見た目よりも、この粒ツブは柔らかいんだよ。傷はつかないから、進藤、力を抜いて…」


(11)
自分で試したのかよ、と心の中でアキラに突っ込みながらもヒカルは全身を緊張させてそれを
受け入れた。
ゆっくりと慎重にアキラがそこに体重をかけてきて、ざわざわとした異物がヒカルの粘膜を
押し広げる感覚が増した。
「う…あ…」
神経が集まった入り口付近の粘膜一つ一つに小さな突起が食い込んでくるような
大きな触感にヒカルはビクビクと身を震わせた。
思わず侵入を拒もうとその部分を閉じようとすると繊細な粘膜に粒ツブが一斉に食い込み、
それから逃れようと力を抜くと容赦なく侵入が続行される。
「あ…ひっ、…あ…んっ…」
「凄いよ、進藤のここがボクを食べているみたいだ…」
感心するようにその様子を観察しながらアキラもかなり興奮の度合いを強めているようだった。
アキラが言っていた通り、トゲトゲしいものというよりは、見た目よりイソギンチャクのような
ソフトな触手が潜り込んでくるような奇妙な感じだった。
それでも例えようもない異物感にヒカルは自分の体が変になりそうだった。
「と、塔…矢…、まだ…っ?」
「まだ全然入っていないよ、進藤」


(12)
そう言いながらアキラの動きはそこで止まってしまった。
進みもせず、戻りもしないで敏感な箇所で留まられて、ヒカルは半分怒るようにアキラを
睨んだ。それでも呼吸するだけでも嫌でも粘膜に食い込んだ小さな突起がヒカルに淡い
電流を与えて来る。
ふいにアキラがその場所で自分の腰を揺らした。
「くあっ…」
中で無数の触手がざわめいてヒカルは脚を閉じようとしたが、すぐにアキラに元通りに
大きく開かされた。触手が触れているところよりもう少し奥のところがジンジンと疼いていた。
もう少し、あと少し、欲しい――とヒカルの内部が要求する。
「ここで止めて欲しいの?本当に…?」
意地の悪いアキラの問いかけにヒカルは更に怒ったような目付きで睨み返した。
それでも徹底的に不利な立場には違いなかった。
「どうして欲しい?」
再度の問いかけにヒカルは唇を噛んだ。こいつはこうやっていつもオレの反応を楽しんでいる。
この妙なコンドームだって、そういう執念で探してきたんだろう――いつだってこいつは――
「…い…で」
「よく聞こえない。もう一度はっきり教えてくれ」


(13)
ヒカルは目を閉じて息を吐きながら答えた。
「やめないで…もっと…奥まで…来て…」
「このくらい?」
そう言ってアキラが腰を押し込むが、それは本当に僅かに動いただけだった。
「ちが…もっと…」
「もっとって、…どのくらい?」
そうやって焦らされている間にもどんどん中途半端な刺激にヒカルの中で苛立った熱が
高まり暴れ回っている。耐え切れなくなってヒカルは叫んだ。
「もっと…ずうっと奥までっ…!さっきみたいに…強くして…っ」
「わかった…」
アキラはヒカルの両足首を掴んだまま、ヒカルの体に覆いかぶさるようにして体勢を整えると
「いくよ…」
とヒカルの中に腰を沈めた。
何か未知のものに体内を犯されるような刺激にアキラの体の下でヒカルは悲鳴をあげた。
「ひっ…い…あっ」
重心を定めるように最初ゆっくり進めると、その後はアキラは一息に深部にそれを押し込んだ。
小さな生き物の集合体が腸の中で膨れ上がってくるような嫌悪感と、それ以上に
腸壁に柔らかく細やかな突起が食い込み掻きむしられながら一気に突き上げられ、
次の瞬間、ヒカルの中で渦巻いていた熱が鮮烈に弾けた。


(14)
「…っ!…っ!!」
もはや声もあげられない状態でアキラの下でヒカルの体が二度三度強く震えた。
「入っただっけでイッちゃったんだね…」
感心したようにアキラにそう言われて更にヒカルの体が羞恥に紅く染まった。
押し入った状態でそのままアキラは動かなかったが、一向にヒカルの呼吸が激しく
全身の痙攣も収まらないのを見て、アキラが尋ねる。
「もしかして進藤、イッたまま?」
ヒカルは紅潮した頬で首を横に振るが、実際先刻の激しいうねりが下腹部の奥で
ヒカルを翻弄していた。こんな経験は初めてだった。
そのうねりから逃げようと身を締めると例の触手のような異物が粘膜に食い込む。
それでなくても呼吸や激しい鼓動一つ一つ毎にジンジンと異物が存在感を主張するのだ。
「…もオ…抜いて…ヤだ…ア」
ようやく収まりかかった吐息でヒカルは懇願した。
そんなヒカルの表情を間近で眺めようとするように、アキラが身を屈めて顔を寄せて来た。
当然その分ヒカルの下腹部に圧迫感がかかって、「うーっ」とヒカルは低く呻いた。


(15)
「…進藤がこんなに乱れるの、初めて見た」
心の底から愛おしいものを愛でるようにアキラは優しいキスをヒカルの目蓋や鼻筋、額に
這わせ、半開きのままの唾液に濡れた小さな唇を捕らえた。
「んん…っ」
アキラが絡ませて来た舌にヒカルも従順に応え、アキラが早く納得してこの行為を済ませるのを
願った。だが長い濃厚なキスの次にアキラが発した言葉はそんなヒカルの希望とは
違うものだった。
「もっと乱したい…君を狂わせたい…」
ほとんど抵抗する気力もなくぐったり両手を左右に投げ出してぼんやりアキラの顔を見つめていた
ヒカルの瞳がその言葉にハッと見開かれた。
「なっ…」
上半身を起こそうとしたヒカルをアキラがなだめるようにベッドの上に押さえ込み、
しっとり汗が滲んだ首筋にキスを這わす。
「ダメだってば…もう…塔矢ア…っああ!」
抵抗しようと体に力を入れると体内で触手が膨れ上がるような刺激を送り込まれ、ヒカルは
もうどうにも出来ない状態だった。
それを見越しているようにゆっくりヒカルの胸元周辺を唇でなぞった後、アキラは
その胸の片方の突起を口に含んだ。泣き声に近い悲鳴があがった。
「ひ…ああっ…!!」


(16)
「進藤のここがこんなにコリコリ固くなっているのも初めてだね…」
一瞬だけ口を離してそう言うと、再びアキラはヒカルの胸の突起をその周囲部分から
甘噛みし、吸い、舌で突起の奥の内臓を探るように強く嬲った。
「くっ…ふんんっ!うあっ…」
いつもより何倍も感度が強まったその部分を激しく愛撫されてヒカルは悶絶する。
アキラは腰を動かしているわけではないが、胸の先端部分がそのまま体の奥に繋がって、
刺激に連動するように異物による刺激も強められてしまう。
体内で何十も何百ものミミズやムカデが這い回っているような嫌悪感だった。それでいて
粘膜の細胞一つ一つを嬲られるようなどうしようもない感覚にヒカルは狂ったように
身悶え、悲鳴をあげ、涙を流した。
「進藤の乳首って、不思議だ。こんなに小さいのに、ちゃんと固くなって敏感で…」
片方の乳首を口で愛撫しながらアキラはもう片方のも指で弄り始めた。
「これはボクだけの大切なヒカルの粒ツブ…」
何かを通り越してしまったようなアキラの呟きはもはやヒカルの耳には届いていなかった。
「くう…っ、…ぐふっ、んん…っ」
ヒカルの胸の両の突起を刺激しながらアキラが腰の動きを始められ、もう言葉にならない
喉から押し出るようなものだけがヒカルの口から漏れるだけだった。
「…死んじゃう…」
もうほとんど残っていないはずの甘い熱が掻き集められてヒカルの内部を煮溶かし
膨らみ上がって吹き出していった。


(17)
ほとんど失神状態でフイニッシュを迎え、その一歩手前で踏み止まったアキラはヒカルの
それを満足げに見届けるとゆっくりとヒカルから自分の体を離した。
ぞろりと抜け出た瞬間ビクビクとヒカルの体が痙攣したが、仰向けになったまま
ぐったりと四肢を投げ出したヒカルはほとんど反応しなかった。
全身を汗で濡らし、下腹部で同様に萎れたヒカルの分身も己が吐き出した体液にまみれて
ぐったりと紅く濡れ光り、時々怯えるようにビクリと震えた。
「ごめん、進藤…、ちょっと疲れさせ過ぎちゃったね…」
アキラはゴーヤ状のコンドームを外すと、度重なった限界を超えた刺激に喘いでいる
ヒカルの秘門にようやく剥き身の自分自身を宛てがった。
そのまま力を入れなくともアキラ自身は紅く膨れ上がった粘膜の隙間に吸い込まれ
埋められていった。
「ちょっと腫れちゃったかな…」
慰撫するようにアキラは静かに腰を動かし、今まで無理を重ねられたヒカルの内部を
擦った。それでもさすがにまるでヒカルが反応しない事に、アキラは不安を感じた。
「どうしたの?進藤…怒っているの?」
今度はアキラが心細げな声で言いながら自分なりに知っているヒカルのいい部分を狙って
必死で腰を動かした。それでもヒカルはピクリとも動かなかった。
そして置き物のように動かなかったヒカルがようやく口を開いた。


(18)

「…なんか、生の塔矢って、ツルツル過ぎてつまんねえ…」
ピシッと、ヒカルの体の上でアキラの体が固まった。

数日後、何か重大な決意をした面持ちで整形外科病院の門をくぐるおかっぱ頭の少年の
姿があった。


ちなみにそのおかっぱ頭が整形外科の医師に見せた「整形計画図」はモノの先端から
半ばまでがゴーヤ上の突起に覆われ、半ばから根元が真珠の粒をランダムに埋め込むと
いうものだった。
少年は母親のものと思われる真珠のネックレスを持参していた。
白いスーツの男を始め数人の男生とハンカチで目頭を押さえる婦人とともに病院の裏口から
説得されながら引きずられるように連れ出されるおかっぱ頭の少年の姿が
近所の人々に目撃されている。
少年は最後にこう叫んでいたという。
「ひと粒だけでもいいんだアアアアアッ…!!」                  〔おわり〕



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