兄貴vsマツゲ? 1 - 2


(1)
フゴー、フゴー。
自宅マンションの椅子からずり落ちそうになりながら仮眠を取っていた緒方の耳に突然、
携帯の着信音が飛び込んできた。
はっとしてヨダレを拭い、携帯画面に表示された名前を確かめる。
慌てて咳払いをして喉の調子を整え、いつも通りのニヒルな声が出るのを確認してから
通話ボタンを押した。
「・・・もしもし」
「もしもし・・・もしもしっ?あ、緒方さん!良かった・・・!アキラです。あの、今大丈夫ですか?」
「キミが自分から掛けてくるなんて珍しいな。何か用でも?」
「ええとその、進藤に掛けようかとも思ったんですけど緒方さんのほうがこういうことは
慣れていそうだから・・・ボク一人じゃどうしたらいいかわからなくて、・・・あっ来た、
・・・違う、この電話は・・・落ち着いて、話せばわかる。話をしよう・・・離してくれ。離せ。
・・・だから離せと言っているのがわからないのかっ!ふざけるなぁぁっ!」
「アキラくん、どうした!誰か一緒なのか?今どこにいる!」
「ここはっ・・・」
パキッという音と共に電話の向こうの声が急に遠くなったのは、アキラが揉み合っている
相手に携帯を奪い取られたらしかった。
それでも辛うじて名前を聞き取れた有名ホテル目指して、緒方はヨダレ跡を消すのも
そこそこに愛車RX-7を飛ばした。


(2)
「アキラくん、無事か!?」
教えられたルームナンバーのドアをバァン!と開けて映画のように中に飛び込むと、
豪華な内装にひとけのない静かな部屋が緒方を迎えた。
(ア、アキラくんは・・・!?ん、そう言えば何故ドアに鍵が掛かっていなかったんだ!?)
動揺してキョロキョロ目を走らせていると右手からフンッと鼻を鳴らすような音が聞こえた。
振り向くとそこには、一瞬人形と見紛うほど整った美貌の長身の人物が、長い茶色の髪を
掻きあげながら壁に凭れてこの闖入者に冷めた視線を向けていた。
そのあまりに素人離れしたキラキラしい存在感に緒方はしばし圧倒されて立ち尽くしたが、
すぐここへ来た目的を思い出すと、対抗するようにぐっと胸を張りドスの効いた声で詰問した。
「オマエは誰だ。塔矢アキラがここに来ているはずだ。彼をどこへやった」
凄んでみせる闖入者の口元に昼寝の名残りの白い跡が残っているのを見て長身の人物は
軽蔑するように形の良い唇の端を上げ、壁に凭れたまま端麗な顔を斜め後ろに向けて、
何事か呼びかけながら傍らにあるバスルームの扉をコンコンと叩いた。
(なんだ?今の言葉・・・外国人か?)
バスルームの扉の向こうからカチャリと鍵の外れる音がして、見慣れた艶やかな黒髪の少年が
顔を覗かせた。
「アキラくん!無事だったか」
「緒方さん。来てくださったんですね・・・!」
安堵の笑みを浮かべかけたアキラだったが緒方の顔を見るとふと真顔になり、扉をパタンと
閉めてもう一度バスルームに引っ込んでしまった。
「ア、アキラくん?・・・アキラくん!?」



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