独白 1 - 2
(1)
何となく、だけど。塔矢は本当は、あんまりあーゆーことが好きじゃないんじゃないかって思う。
だって、気づいちゃったんだ。塔矢が喘ぐ声の中に、イイ、じゃなくて、痛い、とか、つらい、とか、
そういう響きがある時があるって。
初めの頃はオレも余裕なかったし、塔矢の中にいるって事に舞い上がってて気づかなかったけど、
もしかしたらずっと塔矢は我慢してたのかもしれない。そう思うとすげぇ怖い。
今までホント何やってたんだろ?オレってサイテーだよな。
でも塔矢だって、辛いなら辛いって言えって言ってるのに、なんで我慢なんかすんだろ?
塔矢は頑固だし負けず嫌いだから、もしかしたら辛くても言わないつもりなのかもしれないけど、
オレだけイイ思いするってどうなのよ?塔矢がそれでよくても、そんなの、オレ、絶対にヤだよ。
だから勇気を出して言ってみた。オマエが痛いの、オレ分かってるよって。
塔矢が痛そうな声上げるごとに止めて、痛い?って聞いて。オレの所為で辛い目に遭わせて、
オレだけいい思いしてるんだったら、それはすごくイヤだし、どうにかしてやりたいけど、
オマエ、痛くないよ?ってとぼけるから、どうにもできないし、もっと、して…、なんて言われちゃうと
つい、理性飛んじゃってセーブ効かなくなって、またオマエに痛い思いさせちゃって、
痛そうな声で我に返って。もうそんなのイヤだよ。そんなこと、したくない。
だから、こないだん時は思い切って、今日はしたくない、って言ったら塔矢に襲われてヤられちゃったし、
でも、そん時だって辛そうだった。そこまでして、しなきゃいけない理由が分かんない。
そーゆーの見たくないから、ここんとこ塔矢に会わないよう気を付けてきたけど、
明日の取材は二人一緒でって言われたから、明日は逃げらんない。どうしよう?
もうオレ、オマエと一緒にいるのが怖い。
何考えてんだか、何したいんだかどーして欲しいのか、全然分かんない。
碁会所で時々打つくらいなら別に構わないけど、オマエに我慢させてまで、それ以上の事はしたくない。
────オレ一体、どーすりゃいいの?
(2)
いつからだろう?進藤を受け入れるのが辛くなったのは───。
初めの頃は、ただ幸せだった。進藤と二人だけの時間、二人だけの秘め事。抱き合うだけでも幸せだった。
いや、それは今も変わらない。キミに触れていられるだけで心が落ち着くし、本当に幸せだと思う。
キミと繋がりたいとも思う。でも、実際にキミが入ってくると、本当に痛くて耐えられないことがある。
キミが欲しくて欲しくてたまらなくて、少しでも早く欲しくて、でも、実際にキミが入ってくると、
その瞬間まではすごく気持ちいいし幸せだけど、直後にはもう後悔している。キツいのは別に構わないけど、
動くと時々走る、あの深い痛みは何だろう?おかげで、キミと繋がっている間のボクはひどく冷静だ。
自分では結構上手くやってると思ってたのに、この間は完全に、気づかれてしまっていた。
痛みが走るごとにキミは動くのを止めて、痛い?大丈夫?って。どうして分かったんだろう?
何かそういう素振りをしてしまっているんだろうか。これでも、キミの劣情を煽るために、
色々研究したんだけど…まだ何か足りないのかな。
ボクは、キミと囲碁さえ手の中にあれば、他には何もなくても構わない。キミを繋ぎ止めておくためなら、
どんなことだってボクは厭わない。だって、キミを手に入れるために、もうボクは人ならぬ道に
進んでしまっている。ボクは、キミの好奇心を利用して、キミをボクのもとに繋いだ。
あの痛みはそんなボクへの罰かもしれない。それならそれで構わない。キミの心さえボクにあるなら、それでいい。
最近のキミは忙しくしてて、顔を見るのがせいぜいだったから、二人で一緒にっていう明日の取材が楽しみだ。
終わったら、家に来てくれるだろうし。そうだ、帰りにこの間の公園に寄ったら、喜んでくれるかな。
食事は二人だけで摂りたいから、カレーでも作っておこうか。
それより、キミが今ボクをどう見ているかが少し気掛かりだ。あの時、キミは信じられないと言いたげに
ボクを見ていた。何につけても、ギブアンドテイクじゃないけど、ボクがボクの望みのために
少しの痛みを犠牲にする事の何がおかしい?
あぁ、明日もまたそのこと気にされたら、面倒だなぁ。少し気を付けなくちゃ。
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