映画日和 1 - 2
(1)
兄貴からテクを学んだアキラは速攻ヒカルを映画に誘った。もちろんよこしまな事をするためだ。
「進藤、映画を観に行かないか。」
「えー、やだよ。長時間座ってるのかったりー。」
有無を言わさず進藤を睨み付けるアキラ。固まる進藤。
「…分かったよ。行くよ。」
映画は今人気の“スパイダーマン”。進藤のためにロビーでコカ・コーラとポップコーンを、自分には
ウーロン茶の缶を買って中に入る。思った以上に人が居てアキラは内心しまったと思った。
緒方にいけない事をされた時、もっとガラガラだったからだ。映画はたしか“WASA(規制)”
二つ列んで座れる席は前から3列目。近すぎる。しかもかなり左寄り。
それでも映画が始まってすぐ進藤の目はスクリーンに釘付けになった。
アキラは進藤の手を握るチャンスを伺っていた。派手なアクションシーンの度に「うっ」とか「うわっ」と
声をあげる進藤の横顔をついチラチラ観てしまう。そして勘違いした進藤からポップコーンの
入れ物の口を向けられ一つ二つ手に取ってもそもそ食べる。だめだ。そういうムードじゃない。
アキラはため息をついた。だが地味な映画では進藤は観たがらないだろう。
そして主人公が高いビルから一気に一本の糸で飛び下りる瞬間、ふいに進藤がアキラの手を掴んだ。
アキラはハッとなった。進藤は夢中で意識していない様子。映画のセリフも音楽も、
観客の声も全て消えた。
アキラに届くのはヒカルの歓声と手の温かさだけだった。
「あ、悪イ!」
(2)
ヒカルがアキラの手を離した。アキラはすぐヒカルの手を掴んだ。ヒカルは少し驚いたようだったが
直に互の指の間に指を絡ませ合い、再びしっかりと握りあった。
その後ずっと二人の手は離れる事はなかった。派手なアクションの度に強く握られ、
お互いの指先で指先を撫で合わせる。爪を掻く。直接体に触れるより、アキラは妙に興奮した。
ヒカルの手を握った右手とは別に左手を自分の股間に運んだ。
膝に置いた上着の下で、ヒカルが強く手を握る度に自分のモノを強く握った。
クライマックスでヒカルが何度も唸り手を強く握って来る中でアキラは到達して終幕と同時に
トイレに急いだ。
「けっこー面白かったよ塔矢。また誘ってくれよな。」
「…うん。」
ヒカルと別れた後チケットの半券を大事に手帳に挟み、アキラは家路についた。
緒方のようにはなれなかったけど、満足だった。
次の日進藤が和谷達に映画の話をしているところに出くわした。
「で、その次に…塔矢、、ここで何てセリフだったっけ。」
「あ、えーと…」
「何だよ、誘ったのはそっちだろ。まあいいや。で、どうだった?」
「…すごくヨかったよ。」
うっとりとため息を着いて立ち去るアキラを進藤達は不思議そうに見送った。
「お前が塔矢と観た映画って、あの“スパイだーマン”だよな?」
「…そうだと思うんだけど…。??やっぱり塔矢って変な奴…。」
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