ゲーム・マスター 1 - 2


(1)
小学生の頃、誰しも一度は経験するスカートめくりやカンチョー。それは塔矢アキラも例
外ではなかった。

「なんか最近つまんなくね〜」
「確かに」
「言えてる〜」
屋上で三人の少年が昼休みをまったりと過ごしていた。小学六年生というと色々な面で好
奇心旺盛な年頃だ。だがその好奇心を満足させられるほど、少年らに刺激はなかった。
三人とも浮かない顔をして空を見上げる。
「なんか楽しいことないか?」
「あるかよ」
「っていうか、あったらもうしてるし」
「だよな〜」と言うと少年はグランドを見下ろした。するとグランドに同じクラスの塔矢
アキラの姿を見つける。学級委員であるアキラは、次の授業の体育で使用するボールなど
の準備を体育係と一緒に準備していた。
「塔矢ってさ、スンゲ〜真面目だよな」
「頭良いしな。そういや囲碁やってんだっけ」
「囲碁? なんかジジくさくねぇ?」
少年らはそろってアキラを見下ろす。
「アイツって普段何して遊ぶんだろ」
「だから囲碁だろ」
「そんなのやって楽しいのか?」
囲碁などやったことのない少年らは、まるで宇宙人でも見るようにアキラを見る。
「…なぁ、それって不健康じゃないか? やっぱ子どもは元気に外で遊ばなきゃさぁ」
少年はアキラを見つめ、なにやら楽しそうに笑った。それは悪巧みを思いついた時の顔だ
った。
「なんだよ。面白いことでも思いついたのか?」
少年らは目を輝かせる。
「まあな」と言うと、その少年はニヤニヤとしながらアキラを見つめた。


(2)
体育の授業を終え、教室で着替えを始めた時だった。
アキラは窓際の席で黙々と着替えている。少年らはアキラが体操着を脱いで下着一枚にな
るのを待った。
アキラは自分が見られていることに気付かず体操着の短パンを脱ぐ。
今だとばかりにアキラの尻の穴めがけて少年らのうちの一人がカンチョーをした。少年ら
はアキラの反応を楽しむつもりだった。あの真面目な学級委員がクラスメイトの目の前で
大失態を犯すか何かしら事件を起こせば少年らの企んだ通りだった。だが予想ははずれた。
「ヤンッ!!」
アキラはその年頃の少年には刺激的過ぎる甘い声でないた。クラス中の男子がその声に反
応してアキラの方を見る。
カンチョーをした少年はその声に驚いて更に指をねじ込んでしまった。
「あ…、抜いて」
その声に教室にいるほぼ全員の男子が前かがみになった。
「ふざけるな、田中君。キミはなんてことをするんだよ」
アキラは涙目になってカンチョーをした少年田中の手を振り払うと睨んだ。
「ご…ごめん」
田中は謝った。だがその場から動けないでいる。しかし動けないでいるのは田中だけでは
なかった。じっとクラスメイトが自分を見つめて動かないでいるのに気付き、アキラは注
意した。
「皆早く着替えないと次の授業始まるし、女子も教室に入ってくるよ?」
教室の異様な雰囲気にアキラは不思議そうに小首をかしげると、なにごともなかったかの
ように着替えの続きを始めた。
だがクラスメイトのアキラに対する目つきは確実に変わっていた。



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