Linkage 1 - 2
(1)
ブラインドの僅かな隙間から差し込んでくる光を虚ろな表情で
見つめながら、アキラはベッドの上で膝を抱えて座っていた。
裸体を包み込む真っ白な麻のシーツの端を力無く握るその姿には、
おおよそ生気というものが欠落しており、彼が呼吸しているのか
すらも定かではない。
家具と呼べるようなものはベッドとサイドテーブルだけという
殺風景な部屋は、部屋の主の趣味なのか、全体がモノトーンで
統一されており、置物のように微動だにしないアキラの透ける
ように白い肌と漆黒の髪も、さながら部屋のインテリアの一部
のようであった。
完璧とでも言いたくなるほどの静寂に支配されたその部屋で、
かろうじて異議を申し立てるのは、サイドテーブルに置かれた
飲みかけのペリエから炭酸が抜けていく微かな音だけだった。
(2)
過ぎていく時間が、アキラの視線の先にある光の色を鮮やかな
朱に染め上げ始める。
その様子を先程と何ら変わることのない虚ろな表情で見つめていた
アキラは、突然、何を思ったのか、シーツを握っていた手を離した。
全身を包み込んでいたシーツを腰まで落とすと、のろのろと立ち
上がり、窓際へと歩み寄った。
そして、ブラインドの紐をこれまでにない力強さで握りしめると、
激しい勢いで引き下ろした。
ブラインドが上がり、一瞬のうちに強烈な夕日がガラス越しに
部屋中を照らし出す。
アキラは全ての力を使い果たしてしまったかのように、その場に
しゃがみ込むと、肩を壁にもたれかけさせた。
露わになったアキラの上半身には至る所に赤く情交の証が刻み
込まれており、差すような朱の光がそれらを更に淫らな色に染め
上げた。
アキラは夕日に照らされ、毒々しいまでに赤くその存在を主張する
幾つもの刻印をやりきれない思いで見つめ、指先でゆっくりとなぞり
ながら、声を絞り出すようにつぶやいた。
「進藤…、どうして………」
その瞬間、隣室からこの家の主の帰宅を告げる物音が聞こえ、
アキラの視線は否応なしに隣室に通じるドアに固定される。
気持ちを切り替えるため、アキラはひとつ深呼吸をすると、下半身を
覆っていたシーツを荒々しく胸元まで手繰り寄せ、冷め切った表情で
ドアを凝視した。
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