ランたんの宴 1 - 2


(1)
「キモいんだよ!ここの連中は!」
ランたんは必死になって叫ぶ。その声はおよそ世界中の騒音を掻き集めたように
大きくその空間に響いたが、辺りにいる連中はまるでそれが聞こえないようだった。
何故なら、誰もその声に反応を示さず、静かに彼を見つめていた。
「オガタクン!?ハッハァ?キモいったらないなあお前ら!ゲロ吐きそうだぜ!」
ランたんの声は虚しく空中で霧散する。周りの男達は黙っているだけだ。
「…何だよその目は!何なんだよお!?」
ランたんは怒り狂って怒鳴り散らす。誰彼構わず叫びつづけた。
「21禁鯖逝けって言ってんだろ!エロバッかの小説はつまんねーしよお!
 なりきりもキモいし、こんなスレッド趣味板にふさわしくねーよ!
 なんだよ…オレ何か間違った事言ってるか!?どーなんだよお!?」
ランたんは必死に吼えるも、誰一人彼の言葉に賛同も反論もしない。
そこへ、一人の男が前へ進み出る。パパだった。
「…ここで話しを聞いてもらうには、こうするしかない。さあ、これを被るんだ」
パパが差し出したのは、一つのマスク。サラサラの髪の毛と美しい造形は、
まるで神業のようだった。ランたんは訝りながらもそれを受け取る。
「なんだよ…これは」
そして、パパの言われた通りすっぽりとそれを頭に被った。
途端、周りの男達の目の色が変わる。さっきまでと違い、ニヤニヤと笑いながら
彼に近付いてきた。ランたんは背中から這い上がってくる寒気と恐怖に身体を竦ませる。
「なっ…なんなんだよコレは!?」
「アキラたんマスクだよ、ランたん」
パパはにっこりと微笑んで、ランたんに教えたのだった。


(2)
「キッ、キモイんだよ、近寄るんじゃねー!」
さっきまでとは違った必死さで、ランたんは叫んだ。
だが男達は薄ら笑いを浮かべながら、その言葉に喜ぶのだった。
「アキラたん…そんな悪い言葉でオレ達をいじめてくれるんだね…ハァハァ」
「そんなイケナイ言葉を言う子には、お仕置きしないとイケないなあ、ハァハァハァ」
「そんな小悪魔みたいな言葉遣いのアキラたんも魅力的だなあハァハァハァハァ」
「なっ…なっ…、オレはっオレはアキラじゃない!オレはランだぞ!?
 キモイっ!吐き気がする!!近寄るんじゃねークサイんだよ!」
恐怖に引き攣った表情で訴えかけるランたんだが、男どもの異常な様子に腰が抜けて
動けないらしい。足もガクガク震えている。追い詰められた小動物を思わせるその姿に、
男達は更に嗜虐的な感覚を刺激したのだった。
「アキラたん…怖がる事はないよ?お仕置きと言っても、お兄さん達が優しくしてあげるよ」
「そうそう、すぐに気持ち良くなるよ?ハァハァハァ」
「おや?もしかしてその様子だとアキラたん初めて…?嬉しいなアキラたんの初めてを
 オレ達が頂けるなんて!感激だあハァハァハァハァ」
「や…やめろ…近付くな…やめろ!」
言い終わらぬうちに、ランたんの身体は数人の男に拘束され、地面に押し倒された。
「パッ、パパ!てめー!騙したなあ!」
ランたんは助けを求めるようにパパに向かって懸命に吼えたが、パパはニコニコと答えた。
「ちゃんと皆がランたんのことを見てくれたじゃないか?そうだろう?」



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