通過儀礼 開花 1 - 2
(1)
これは塔矢アキラという少年の珍子をめぐる壮絶なバトルの物語である。
「あなた、すみません。私うっかりアキラのミルク切らしてしまったので、急いで買って
きますね。その間アキラをお願いします」
明子はそう言うと嵐のように家を出て行った。まだ新妻の域であるにもかかわらず、明子
は落ち着いて何事もそつなくこなすできた妻であった。だが時々このようなミスを犯す。
しかし行洋は決して怒ることはなかった。年下のかわいい妻を行洋はとてもかわいがって
いたのだ。だがそれ以上にアキラのこともかわいがっていた。
行洋はベビーベッドで眠るアキラのところへ行くと、そのぷっくりとした頬を人差し指で
つつく。するとアキラは小さな口をムニャムニャと動かした。そのかわいさに行洋は感動
すると、もみじのようなかわいい手をつついた。ほよほよとした手は、刺激に反応して開
いて閉じた。その閉じる瞬間に行洋は人差し指を滑り込ませる。行洋の指をぎゅっと握っ
たまま、赤ん坊のアキラはスヤスヤと眠る。その姿に行洋はデレデレ顔で見つめていた。
しばらくその寝顔を見つめていた行洋は、次第に我慢できなくなった。眠っているアキラ
の布団をとると、起こさないようにゆっくりと抱き上げた。やわらかく程よい重さを感じ
る。それは幸せの重さだった。行洋はアキラの頬にキスをしながらしばらく抱いていた。
「ウ…、ウウ〜アアアー!」
眠っていたところを起こされたアキラは急にぐずつきだした。
行洋は焦ってベビーベッドへ戻す。だがアキラは泣き止まない。それどころか次第に大声
で泣き叫ぶようになってしまった。
(2)
「アキラた〜ん、どうちまちた? お腹ちゅいたのかな〜? それともおしめかな?」
焦った行洋は、アキラのおしめが濡れていないか中を確認した。
「湿っていない。すると原因はミルクの方か…」
行洋はまたおしめをつけ直そうとした。だがその瞬間、アキラはぶるっと震えると勢いよ
く放尿した。そこら一面を濡らす勢いで噴射するそれを止めようと、行洋はアキラの珍子
をつかんだ。方向を変えたことと終わりが近づいていたことで、それは何とかおさまった。
ホッと安心した行洋はアキラを見る。アキラはすっきりした表情で泣き止んでいた。それ
を見て胸をなでおろすと、ふと自分がつかんでいるものに気づき、行洋はそれを凝視した。
アキラの珍子はお風呂に入れたときにさわったことがあるが、こうもがっちりと握ったこ
とは今まで一度もなかった。
まだ赤ん坊であるのだから当然だが、自分と違ってここもこんなに小さいのかと実感する
と、なんだか珍子さえも愛しかった。
行洋はそっとアキラのそれをなでる。するとアキラはくすぐったいのか笑いだした。
「おぅ〜、アキラたん。かわいい〜かわいい〜」
行洋は目を細めてキャッキャと笑うアキラを見つめた。アキラは珍子をさすればさするほ
どよく笑う。行洋は何も考えず、ただアキラの笑顔が見たいばかりにそれを続けた。
「ただいま戻りまし…、あ、あなた、何をしているのですか?」
突然現れた明子に、行洋は慌てて珍子をさわるのをやめた。
「あ、いや。ゴホン。これは、アキラがぐずついていたのでおしめを変えようと思ってな」
行洋はそう言うとなにごともなかったかのように堂々と部屋から出て行った。
不思議に思った明子はアキラの元に近づく。確かにシーツや衣服は湿っており、行洋がお
しめを変えようとした形跡が残されていた。
「私の気のせいかしら…」
明子は首をかしげて、無邪気に笑うアキラを見つめる。
だが、この時行洋が出来心でつい行なった珍子さすりは、アキラの頭に快感としてインプ
ットされた。これによって目覚めてしまったアキラは、その後数々の事件に遭遇すること
となる。
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