失着点 1 - 2


(1)
男でも唇は柔らかいんだなと思った。
アキラと初めてキスをしてヒカルはそう感じた。
あかりの唇も柔らかかった。でも少しヌルッとしていて、柑橘系の人工的な
匂いがした。リップクリームのせいだった。
アキラの唇は何の匂いもしない、肌の味。でもなぜかとても甘かった。
触れた時の感触を楽しむようにヒカルは何度もアキラの唇に自分の唇を重ね、
離してはまた重ねた。
キスってこんなに何回もするもんじゃないと思っていた。
あかりとの時も、一回きりですぐにあかりが部屋から出ていってしまったし、
何だか照れくさくて自分も追わなかった。
でも今は、他に誰もいない碁会所の中で、ヒカルは行為を繰り返した。
アキラの両肩を掴む手に次第に力が入っていく。
「ん…。」
「ご、ごめん…、」
アキラが痛がったと思い、ヒカルは手の力を緩めアキラから顔を離した。
すると今度はアキラがヒカルの頭に手をまわして来て
もう一度自分とヒカルの唇を重ねてきた。
ヒカルよりも強く。


(2)
アキラのやり方はヒカルとは違っていた。
唇を重ねたまま離れず、わずかに口を動かし愛撫する。
ヒカルの両手はしばらく宙に浮いたままだった。
アキラはなおも強く口を押し当て激しくヒカルを求める。
やがて最初閉じたままだったヒカルの口がこじ開けられ舌が入って来た。
ヒカルは一瞬ビクリとする。
そのヒカルの動揺をアキラは敏感に感じ取り顔を離した。
熱を持ったアキラの目はヒカルに問う。止めるなら、今だと。
そして、もう二度とこんなマネはしないと。
ヒカルは今止めたら今度こそ二度とアキラが手の届かないところに
行ってしまうと思った。手放したくない。オレのものだ。
迷うより先にヒカルはもう一度アキラの頭を手で引き寄せ唇を重ねた。
初めて出会った時から印象的だった黒髪に指を差し入れ、乱す。
アキラがやってみせたようなキスを今度はヒカルが与え、舌を差し入れる。
アキラの口の中で互いの舌先が触れあった時、
ヒカルは頭の奥の芯が溶けるように感じた。
唇以上にアキラの舌は柔らかくて熱くて甘かった。



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