隙間 1 - 2
(1)
「何だ、また来たのか?」
昼間からウィスキーをあおっていた緒方は、突然のインターフォンに少々気分を害されは
したものの、来客…進藤ヒカルの姿に口の端だけ曲げて、揶揄するように言った。
その緒方の態度に、ヒカルは困ったように眉を寄せて黙ったまま、玄関に突っ立っている。
「入れよ。運が良かったな、いつもは忙しい俺も今日はフリーだ…」
促されるままに靴を脱ぎ、勝手知ったるがごとく、遠慮なくヒカルは奥の部屋へと足を向けた。
「思う存分、お前に付き合ってやるよ」
その緒方の言葉に、ヒカルは落ち着かないように部屋を見まわしているだけだった。
「こんな昼間から飲んでたの?」
リビングのテーブルに置かれているウィスキーとグラスを見て、ヒカルが緒方に話し掛けると
緒方は喉の奥で「クックッ」と笑った。そんな事を言いにわざわざ来た訳ではあるまい。
「早く服を脱げ。そのために来たんだろう?」
(2)
緒方のストレートな言葉に、ヒカルは真っ赤になってもじもじと俯くだけだった。
「どうした?そのために来たんじゃないのか?」
緒方にはヒカルの目的が分かっていたが、わざとヒカルを試すような事を言う。
「それじゃあ一緒に酒でも飲むか?ウォッカでもワインでもビールでも、何でも出してやる」
「………オレ、未成年だよ…?緒方さん…」
「未成年ねえ。ふーん、そうか・・・未成年だったな、クックッ、そうだったそうだった・・・」
緒方はまた楽しそうに笑うと、ソファに腰掛けながらグラスを手に取った。
「お前の好きにすれば良い・・・俺はどっちでもいいんだがな?」
突っ立っているヒカルにかまわず、またウィスキーをなみなみとグラスに注ぐ。
ヒカルは俯いてわずかに震えていたが、意を決したようにシャツに手をかけると、
一枚、また一枚と、ゆっくりゆっくり服を脱ぎ始めた。
その様子をみて緒方は、口だけ笑いながらグラスを傾けるのだった。
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