断点3.5 1 - 3


(1)
今、ボクの身を震わせているのは屈辱感だ。敗北感だ。
負けるはずのない勝負で完敗した、絶望的な敗北感だ。

なぜだ。
なぜ、彼は―――


あの日と同じように、彼を押さえ込んで犯して、床に這いつくばらせてやればよかったんだ。
どんな屈辱的なことでも、させてやればよかったんだ。
床に四つん這いにさせて、足を舐めさせて、頭を押さえつけてボクを咥えさせて、奉仕させてやればよかったんだ。
そのつもりだった。
考え付く限りの陵辱を、屈辱を味あわせてやろうと思っていた。
それでもまだボクを好きだなどと言うのなら、思いっきりせせら笑ってやろうと思っていた。
思い上がるなと、下らない事を言うのも大概にしろと、言ってやろうと思っていた。
泣いて許しを請われたって、許してなどやらないと、そうするつもりだった。
それなのに。

なぜそれをしなかった。
完璧な布陣を張っていたはずだったのに、負けなどありえない筈だったのに。


(2)
何も持っていないはずの彼に、敗北した。
彼を傷つけてやったなどと思っていたのがとんでもない思い上がりだったと、思い知らされた。
床に打ち付け、飛び散った欠片を踵で踏み砕いて、粉々に踏み躙ったはずだったのに。
それなのに、完膚なく叩き壊した筈のそれは、拾い上げてみれば傷など一つもついていない。
それどころか、それまで以上の輝きを放っている。
その強靭さを見せ付けるように。
ボクの弱さを、ボクの無力さを嘲笑うように。
そうして、醜く引き攣れた傷跡が、傷一つ無い鏡に容赦なく映し出される。
傷つける事で癒せる傷などないのだと、ボクの愚かしさを嘲笑うように。

いつでも、この世でただ一人キミだけが、隠し続けていたボクの弱さを暴き立てる。
だから、だからボクはキミが嫌いなんだ。
キミに関わりたくなんかなかったんだ。

それなのになぜ、キミはいつもそうしてボクの前に在るのか。
なぜそうしていつもいつも、キミはボクの前に立ちはだかるのか。
そしてなぜ、ボクは、キミに振り回されて、
ボクはいつまで、キミに、翻弄され続けなければならないのだろう。

許せない。
キミが、キミの存在が、ボクには許せない。
認めることができない。
受け入れる事ができない。


(3)
違う。
許せないのはボクの弱さだ。
ボクはキミのように強く在る事はできない。
キミのその強さが、輝きが、ボクには眩しすぎて、
ボクにとってキミは忌避すべき存在にしかなり得ない。

だからどうか、もうボクを解放してくれ。
キミの強さを見せ付けるのは、ボクの弱さをつきつけるのは、やめてくれ。
ボクを苦しめるのはやめてくれ。
忘れたいんだ。
忘れてしまいたいんだ。何もかも。
キミさえいなければ、ボクは全てを無かったことに出来る。
だからボクに関わらないでくれ。
ボクを忘れてくれ。
頼むから。
進藤。



TOPページ先頭 表示数を保持:

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル