白と黒の宴(番外編) 1 - 3
(1)
薄暗い照明の下、バーのカウンターで水割りを飲む。
軽く喉を焼く感覚に酔っても頭の芯は冴えざえとしている。
灰皿に置いた煙草の煙りと店内に耳障りにならない程度にボリュームを抑えたジャズの
調べのみが緒方寄り添うように囲う。
他には甘い声でヒソヒソ声何かを囁き合っている男女のカップルと、緒方の反対側の端に座る
女性が一人。その女性は緒方に興味があるらしく何かを小声でカウンターの中のマスターに
話したあと、コツコツとヒールの音を響かせて緒方に近付いていった。
「隣で飲んでもよろしいかしら。」
女性にしてはハスキーなその声に緒方はちらりとそちらを見遣る。
今はそういう気分ではない。
だが、すでに隣の椅子に腰掛けたその相手は細身の身体をブルーのチャイナドレスに近い
デザインの服に身を包み、今どき珍しくストレートの黒髪をしていた。
眉より少し長めに真直ぐに切りそろえた前髪の間から覗く少しきつめの目を柔らかい印象の上品なメイクで仕立て上げている。
髪の長さこそ違うが、まるで成人したアキラが、そこに居るような錯角を覚える。
「…ダメだな、オレは…」
酔ったつもりはなかったが、やはり酔っているのかもしれない。
「あら、あたし、誰かに似ているのかしら。」
相手のその言葉に緒方は「クッ」と唇を歪める。
「ああ、そっくりだな。顔も声も体つきも…」
「…あなたにとって大切な人?」
(2)
「まあな。」
その相手は敢えて自分を値踏みさせるかのように緒方に向き直り、多少小ぶりだが形の良い
胸を突き出す。
「いつも一人でそこで飲んでいるでしょ、あたし、ずっと見ていたわ。
何だかとても淋しそうだった。」
煙草をふかしながら緒方は肩を揺らし、笑い続けた。
神様にはどうやらオレが相当哀れに思えたらしい。
店内以上に店のトイレは薄暗かった。
その中に悲鳴とも歓喜のものとも区別がつかない声が壁を這う。
「あああ、すごい、すご…い…」
チャイナドレスばりにスリットが深く入ったスカートの下にその相手は何もつけていなかった。
緒方の腕に抱えられた片足は陶器のように白く滑らかな皮膚をしていたが、ほっそりした
足首は若干骨張っている。
その脚の付け根と緒方がファスナーを下ろした部分が深く重なりあっている。
相手は壁に両手を突き、背後から激しく突き上げられる衝撃に耐えていた。
緒方のモノを銜え込んだ近くで固く張り上がった男根が揺れている。
それは緒方のモノと負けず劣らず堂々たる質量であった。
細くくびれたウェストから下は大きくスカートがはだけられてムダな脂肪のない
引き締まった双丘がライトに白く浮かび上がり、何かを吸い込み切ろうとするかのように
両脇が凹んでいる。
その中央で潤んだ肉門が押し開かれて猛々しく出入りする鈍色がかった赤い肉柱に
翻弄されている。
(3)
「こ、こんなの初めて…ああっ、あたし、壊れちゃうっっ」
彼がそういう類の者であることは緒方は一目見て直ぐに分ったが、妙に興味を惹かれた。
「ハアハア、あ、あ…スゴクイイイイン(*´Д`*)ゼンリツたんにひびくって
感じぃぃぃ(●^o^●)」
「お前の締まり具合もなかなかいいぞ…。名前はなんて言うんだ。」
「(*´Д`*)ハァハァ、茂人…茂人よオオオっ、ああ、い、イク…ッ!!」
「茂人か。…覚えておこう。」
「ああああ〜〜〜〜〜、で、でちゃうウウウウウ━━━(*´Д`*)━(*´Д`*)━(*´Д`*)━━━━!!」
その瞬間茂人が激しく仰け反り、黒髪が緒方の視界を覆った。
ベッドの上で緒方は激しくうなされ飛び起きた。
「…ゆ、夢か…。」
全身が冷たい汗でぐっしょり濡れていた。思わず自分のシルクのパジャマの股間の辺りを
見る。
あまりにも生々しい感触が張り付いていた。
「…疲れているようだ…。」
頭を軽く振って緒方は眉間の間を指で揉む。寝付かれなくて囲碁関係で覗いたネットで妙な
書き込みを見てしまったせいかもしれない。大抵は囲碁ファンによる研究会の延長程度の
ものだったがその複数の掲示板に“茂人”というHNで一目もはばからず熱烈に自分にラブ
コールを送る者がいたのだ。
「ネットには魔物が棲んでいる…。」
冷凍庫からズブロッカを取り出してグラスに注ぎ軽く呷ると緒方はベッドに潜り込んだ。
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