枕 1 - 3
(1)
北斗杯のときは碁に集中したいから逢えないって俺に言ってたアキラたんだったんだけど、
携帯にメールが入っててさ、俺いそいそと出かけたんだよ。
「あいたい」とかいうメールじゃなくて「尚志さんのごはんが食べたい」なんて書いてあったから
俺はバイト先で仕入れたカップお茶漬けとかイカの塩辛とか持ってさ。
2時間休みを取って8時過ぎくらいにホテルの玄関でメール打ったら
アキラたんはすぐに降りてきて俺を部屋に連れていったんだ。
普通、宿泊者以外は部屋に入っちゃいけないはずだと思うけど、さすがアキラたん、
フロントの前を通るときも平然としてたよ。
(2)
備え付けの電磁サーバーで湯を沸かして、お茶漬けを作ってあげて、塩辛とおにぎりと
梅干とかを食べさせてあげた。俺がこんなものしか作れないのを知っててアキラたんは
俺のメシを食べたいなんて甘えてくるんだから照れるよ。
で、だ。
枕が替わったら寝づらいだろうって聞いたんだよ。マットレスって硬いし、俺もちょっと
苦手だから。
アキラたんちは布団だっていうし、余計苦手だろうなあって思ったんだけど、
アキラたんは素直に頷いたね。碁で勝って気分が良かったせいもあるんだろうけど。
鮭茶漬けのお湯を全部飲み干して、それをテーブルの上に置いて、
俺と向かい合うようにアキラたんは俺の太ももを股いで座ってきたんだ。
「だからアナタを呼んだんですよ」
(3)
俺は耳を疑ったね。
みんなには申し訳ないけど、アキラたんは俺の身体にしがみついてきたよ。
「ベッドで寝るときはいつもアナタが隣にいて、だからボクは熟睡できたんです。
でも、昨日はアナタがいなかった。ボクはしばらく眠れずに苦しんだんだ」
だから俺を呼んだんだ、とね。
どうだよおまいら。
もう俺はずっと一緒に寝るしかないだろう?
だから俺はアキラたんが恥ずかしそうにトイレに篭る音とか、うがいをする音とか、
全部聞いてました。
当たり前ですが、その後の匂いも全部嗅ぎました!
ごめんなさい。ごちそうさまでした。
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