ヒカルの日記 1 - 3


(1)
今日、オレが風呂から上がってくると、
塔矢が地味なガッツポーズを何度も繰り返し練習していた。
オレが「何やってるの?ライブにでも行くの?」と聞くと、アイツは「違う」と
首を振った。
何でもアイツが言うには
「コレは不胃過吐不悪苦という技で、古来中国に伝わる神の一手を打つために
必要不可欠なポーズであり、このポーズを会得せねば神の一手を目指すことさえも
叶わぬと言う云々」
と、民明書房とかいう怪しげな本を片手に説明し始めた。
オレは怖くなって寝た。


(2)
夜中、なんだか布団の中でもぞもぞする気配がしていたので、目が覚めた。
オレが布団をめくると塔矢が髪を振り乱して、オレのズボンを脱がそうとしていた。
「何やってるんだ!」
オレが悲鳴を上げると、アイツは真剣な顔をして
「進藤、コレを中に入れさせてくれ」とゲンコツを見せた。
オレは「バカ!そんなモンはいるか!」と怒鳴った。
「頼む。この技を極めるには愛する人の中にコレを納めなければ完成とは言えないんだ!
文字通り、“胃を通り過ぎて苦しくて吐くほど深く突き刺さねば”(←デタラメ)意味がないんだ!」
オレは下半身にしがみつく、塔矢を蹴り倒して社に助けを求めたが、アイツはいびきをかいて
寝ていた。
アレは絶対寝たふりだ!逃げやがったな!


(3)
今日、対局が終わった後塔矢が嬉しそうにオレのところに来た。
「進藤、不胃過吐不悪苦がうまく決まったよ!」
オレはケツが痛くてそれどころじゃなかった。



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